24歳の女性。双極性障害で休職中。半年前に会社で興奮状態となったため精神科を受診し、外来で薬物療法が開始となった。3か月前から気分は安定し、生活リズムが改善してきた。1か月前から職場復帰を目指して外来作業療法が行われている。作業療法中に「薬の副作用が心配なので内服をやめたい」と相談があった。作業療法士の声かけで適切なのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3・5番
解説
作業療法士は患者さんの薬に関する具体的な不安を傾聴し、その内容を正確に把握する(選択肢3)とともに、薬の調整や中止といった医学的判断が必要な事項については、必ず医師へつなぐ(選択肢5)ことが適切です。これは作業療法士の職務範囲を遵守し、患者さんの安全と適切な医療提供を保証するための基本姿勢です。
選択肢ごとの解説
- 1. 作業療法士は薬の処方や用量変更について指示する権限がありません。これは医師の専門的な判断が必要です。正しくは:「薬の用量変更については、医師にご相談いただく必要があります」選びやすい理由:患者さんの訴えに直接応えようとする気持ちから、この選択肢を選んでしまうかもしれませんが、職域を超えた行為です。混同注意:患者さんの困りごとを解決したいという善意と、専門職としての職務範囲の区別が混同しやすいです。
- 2. 患者さんの具体的な不安に対して、一般的な事実を述べるだけでは、傾聴や共感を示すことにならず、患者さんの気持ちを深掘りできません。患者さんが求めているのは、具体的な不安への対応です。正しくは:「どのような副作用について不安を感じていらっしゃいますか?」と具体的に尋ねるべきです。選びやすい理由:薬の現実を伝えるという意味では正しいですが、患者さんの個別具体的な不安に寄り添う姿勢が見えないため、不適切です。混同注意:一般論と個別対応の区別、患者さんの感情への寄り添い方が混同されやすいです。
- 3. 正解。患者さんの具体的な心配事を聞き出すことで、不安の内容を明確にし、共感的に理解しようとする姿勢を示すことができます。この情報をもとに、次の適切な対応を検討する基盤となります。
- 4. 双極性障害の患者さんが自己判断で服薬を中止すると、気分変動が再燃するリスクが非常に高く、危険です。作業療法士は服薬中止を指示する権限も専門性もありません。正しくは:「服薬中止については、必ず医師とご相談ください」選びやすい理由:患者さんの「やめたい」という希望に寄り添った発言のように見えるかもしれませんが、医療専門職としては危険な助言です。混同注意:患者さんの訴えを安易に受け入れることと、専門家として患者の安全を最優先することの区別が混同されやすいです。
- 5. 正解。薬に関する専門的な問題は医師が対応すべき範囲であり、適切に専門職を紹介することは作業療法士の重要な役割です。患者さんの不安を医師に伝える機会を設けることで、適切な医学的判断と説明を受けることができます。
国試ポイント
作業療法士の職務範囲と倫理、患者中心のコミュニケーション、多職種連携の重要性が問われています。特に精神科領域では、服薬アドヒアランスの問題が頻繁に生じるため、適切な対応が求められます。
混同注意
患者さんの訴えに直接答えようとするあまり、自身の職務範囲を超えて医学的な助言をしてしまう(選択肢1, 4)、あるいは、漠然とした共感にとどまり具体的な解決に繋がらない(選択肢2)という誤った選択をしてしまいがちです。患者さんの不安を受け止めつつも、専門家として適切な対応を見極める必要があります。
次に同じ論点が出たら
次回同様の論点が問われた際には、患者の疾患(特に服薬中断がリスクの高い疾患か)、相談内容の専門性(医学的判断が必要か)、作業療法士の職務範囲、そして最終的に患者の利益を最大化する選択肢は何か、という点を総合的に判断することが重要です。
関連知識
作業療法士の倫理綱領、医療専門職の職務範囲(スコープ・オブ・プラクティス)、精神科領域における服薬アドヒアランスの重要性、多職種連携(医師、看護師、薬剤師などとの協働)の基礎知識、精神疾患患者へのコミュニケーション技法。