55歳の女性。右利き。脳梗塞による左片麻痺。発症15日目のBrunnstrom法ステージは上肢Ⅲ、手指Ⅲ、下肢Ⅲ。歩行中、左膝折れや反張膝はないが軽度の内反尖足を認める。感覚障害および高次脳機能障害を認めない。早期に移動能力を獲得するために最も適切な装具はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
患者は左片麻痺、BrunnstromステージⅢで共同運動は出現しているものの、「軽度の内反尖足」を認める。膝折れや反張膝はなく、膝関節の安定性は保たれている。感覚障害や高次脳機能障害もないため、足関節の不安定性のみをターゲットとした装具が最も効果的かつ効率的である。短下肢装具は、尖足や内反を制御し、歩行時のつま先クリアランスの確保や安定した立脚を助け、早期の移動能力獲得に寄与する。
選択肢ごとの解説
- 1. 靴型装具は主に足部の変形や疼痛管理に用いられ、麻痺による足関節の機能不全(特に内反尖足)を十分に制御し、歩行能力を大きく向上させるには不十分です。正しくは:足関節の背屈補助や内反尖足の抑制には、より広範囲を支持する装具が必要です。選びやすい理由:足部の問題なので足部の装具を考えるが、尖足の制御には不十分。混同注意:軽度の足部変形や安定化には用いられるが、麻痺による足関節の重度な機能障害には対応しきれない。
- 2. 患者さんの情報には膝折れや反張膝がないと明記されており、膝関節に大きな不安定性が見られないため、膝関節を固定する硬性膝装具は現在の歩行障害の主因に対応しておらず、不必要です。正しくは:膝関節の不安定性(膝折れや反張膝)がある場合に適応されます。選びやすい理由:下肢の装具として考えられるが、膝の状態が安定しているため不要。混同注意:膝関節の機能障害がある場合に必要となるが、本症例では膝関節は安定している。
- 3. 正解。本症例では「軽度の内反尖足」が認められる一方、膝関節の不安定性、感覚障害、高次脳機能障害がないことから、足関節の制御が早期の移動能力獲得に最も重要です。短下肢装具は、足関節の背屈を補助し、内反を抑制することで、遊脚期のつま先クリアランスを確保し、立脚期の安定した足底接地を促し、歩行を効果的にサポートします。
- 4. 長下肢装具は膝関節と足関節の両方を支持・固定するもので、膝折れや反張膝など、膝関節の不安定性が強い場合に用いられます。本症例では膝関節の不安定性がないため、この装具は過剰な支援であり、歩行の自由度を不必要に制限してしまいます。正しくは:膝関節の安定性が著しく低い場合(重度の膝折れや反張膝がある場合)に選択されます。選びやすい理由:麻痺が重度であると誤解した場合に選びやすいが、膝関節の安定性があるので不要。混同注意:長下肢装具は膝関節に重度の不安定性がある場合、短下肢装具は足関節の不安定性がある場合に用いる。
- 5. 骨盤帯付き長下肢装具は、股関節や体幹の著しい不安定性、あるいは両下肢麻痺など、非常に広範囲の支持が必要な場合に適用されます。本症例は片麻痺で、主たる問題は足関節に限定されており、膝関節も安定しているため、この装具は明らかに過剰な介入です。正しくは:股関節や体幹の不安定性が強く、より広範囲の支持が必要な場合に適応されます。選びやすい理由:最も広範囲をサポートする装具であるため、重度の麻痺を想像した場合に選びやすいが、本症例の症状からは適応外。混同注意:片麻痺で足関節が主な問題の場合と、股関節や体幹レベルまで支持が必要な場合との区別。
国試ポイント
脳卒中後の片麻痺患者に対する装具療法の基本適応と選択基準が問われています。特に、下肢の各関節(股関節、膝関節、足関節)の安定性やBrunnstromステージなどの身体所見を総合的に判断し、適切な装具を選択する能力が求められます。各装具(靴型装具、短下肢装具、長下肢装具、骨盤帯付長下肢装具など)の機能と適応範囲を理解しているかを確認する問題です。
混同注意
長下肢装具と短下肢装具の適応範囲。膝関節の不安定性があるかどうかで明確に区別されます。BrunnstromステージⅢであっても、足関節の自動運動が十分でない場合があること。「軽度」という表現に惑わされ、装具が不要と判断したり、逆に過剰な装具を選択したりすること。
次に同じ論点が出たら
下肢装具の選択においては、まず「どの関節にどの程度の不安定性があるか(特に膝と足関節)」を把握する。患者の全体的な運動機能レベル(Brunnstromステージなど)と、ADL能力、治療目標を考慮する。感覚障害や高次脳機能障害の有無も、装具の受容性や適切な使用に影響するため確認する。麻痺の部位と程度、具体的な歩行障害の内容。
関連知識
Brunnstrom法による運動機能回復ステージの評価と理解。脳卒中片麻痺患者によく見られる歩行パターン(尖足、内反尖足、膝折れ、反張膝など)。各種下肢装具(AFO, KAFO, HKAFOなど)の種類、構造、機能、適応疾患、効果。装具選択におけるリスク管理(オーバースペックによる筋力低下や移動の阻害、アンダースペックによる転倒リスクなど)。