「い」で始まる単語をなるべく多く挙げてください、という課題に対して統合失調症患者が「考えられない」、「言葉が出てこない」と訴えた。この状況から考えられる患者の障害で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
提示された課題は、特定の文字から始まる単語をできるだけ多く想起・発話する「語想起課題(言語流暢性課題)」です。この課題に対して「考えられない」「言葉が出てこない」と患者が訴えるのは、語の探索、生成、発話のプロセスにおける困難、すなわち言語流暢性の障害を示しています。統合失調症では、前頭葉機能の障害と関連して言語流暢性が低下することがよく知られています。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者さんの訴えは「言葉が出てこない」という思考や発語に関するものであり、身体の動きや姿勢に関わる運動機能の障害とは直接関係ありません。正しくは:この状況では、課題に対する思考や言語表現の困難が示されており、運動機能の問題ではありません。選びやすい理由:統合失調症では錐体外路症状など運動機能に影響を及ぼす場合がありますが、本設問の状況とは直接結びつきません。混同注意:思考や言語の障害と、身体の動きを制御する機能の障害を混同している可能性があります。
- 2. 注意機能障害も統合失調症でよく見られますが、本課題は特定の情報に注意を向けることよりも、頭の中で情報を検索し、言葉として出力する能力が問われています。注意機能単独の問題というよりは、より高次の認知機能の問題が示唆されます。正しくは:特定の文字から始まる言葉を想起し出力する課題において、直接的に注意機能の障害が主因とは考えにくいです。選びやすい理由:統合失調症の患者は集中力が低下しやすいため、注意機能障害を疑うかもしれませんが、この課題の直接的な困難の原因ではありません。混同注意:課題への集中力不足と、思考内容の生成・出力困難を混同している可能性があります。
- 3. 言語性記憶障害は言葉に関する記憶の障害ですが、この課題は特定の言葉を覚えているか否かを問うものではなく、「い」で始まる言葉を『生成・想起する能力』が問われています。知識としての言葉は記憶していても、それをアウトプットするプロセスに問題がある可能性が高いです。正しくは:言葉そのものを覚えているか(記憶内容)ではなく、言葉を効率的に検索し、引き出して表現する能力に問題があります。選びやすい理由:言葉が「出てこない」という訴えから、記憶の問題と捉えやすいですが、これは単語の想起・生成の問題であり、記憶そのものの保持の問題とは異なります。混同注意:言葉の『記憶』と、言葉の『想起・流暢性』を混同している可能性があります。
- 4. 正解。「『い』で始まる単語をなるべく多く挙げてください」という課題は、特定のカテゴリーや文字から連想される単語を時間内にどれだけ多く生成できるかを評価する「語想起課題」や「言語流暢性課題」の一種です。患者さんが「考えられない」「言葉が出てこない」と訴えているのは、まさにこの思考や発語の流暢性の低下を示しており、言語流暢性障害と直接的に関連します。統合失調症では、前頭葉機能の低下により言語流暢性が障害されることが知られています。正しくは:選択肢は正しい。
- 5. ワーキングメモリー(作業記憶)は一時的に情報を保持し操作する能力ですが、この課題では「い」というルールを一時的に保持しつつ、頭の中の語彙を検索し、選択し、発話するという一連のプロセス全体が評価されます。ワーキングメモリーも関与しないわけではありませんが、「考えられない」「言葉が出てこない」という主訴は、語の生成・出力機能、すなわち言語流暢性の障害をより直接的に示しています。正しくは:「い」という文字のルールを保持するだけでなく、そのルールに基づいた言葉を効率的に探索・生成・出力する能力の問題が主であると考えられます。選びやすい理由:統合失調症ではワーキングメモリー障害も頻繁に見られるため、選択肢として魅力的ですが、この状況での直接的な課題困難の原因としては、言語流暢性の方がより適切です。混同注意:情報の短期的な保持・操作能力と、思考や言語の生成・出力能力を混同している可能性があります。
国試ポイント
統合失調症患者の認知機能障害、特に前頭葉機能と関連する言語流暢性の評価と臨床症状の関連を問う問題です。特定の課題内容と、それが評価する認知機能の種類を結びつける知識が求められます。単に症状の有無だけでなく、それがどの認知機能障害に該当するかを正確に理解しているかが重要です。
混同注意
言語性記憶障害やワーキングメモリー障害など、他の認知機能障害も統合失調症でよく見られるため、それらと混同しやすいですが、課題内容から直接的に評価される機能を見極める必要があります。言語性記憶は既知の単語を覚えているか、ワーキングメモリーは一時的な情報処理能力ですが、言語流暢性は語彙の引き出しやすさや発話速度に関わります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題される場合、他の認知機能課題(例:ストループ課題、トレイルメイキングテスト、WCSTなど)と、それによって評価される具体的な認知機能の組み合わせについて問われる可能性が高いです。また、統合失調症だけでなく、他の疾患(認知症、脳損傷など)における同様の認知機能障害についても知識を深めておく必要があります。
関連知識
統合失調症における認知機能障害(前頭葉機能、実行機能、注意機能、記憶機能など)、語想起課題(言語流暢性課題)の種類(文字流暢性課題、カテゴリ流暢性課題)、遂行機能障害症候群 (Dysexecutive Syndrome) の概念。