57歳の女性。右利き。5年前から多発性筋炎でステロイド治療中。約1か月前から四肢の脱力と易疲労性が著しく、多発性筋炎の増悪と診断された。嚥下機能は保たれている。スプーンの把持は可能だが、食事の途中で口まで運べなくなり介助を要する。この患者への対応で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
多発性筋炎増悪による上肢の筋力低下と易疲労性が原因で、食事中のスプーンを口元まで運べない状態にある。BFO(バランスト・フローティング・オルトーシス)は、上肢の重さを免荷し、少ない力で腕を動かすことを可能にする自助具であり、この患者の「口まで運べなくなる」という具体的な問題点に対し、最も直接的かつ適切な解決策となる。炎症性筋疾患の増悪期には高負荷トレーニングは禁忌であり、過度な安静も廃用につながるため、BFOの使用は残存能力を活用しながらADLを維持・向上させる理にかなった選択肢である。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。多発性筋炎の増悪による上肢の筋力低下と易疲労性に対して、BFOは腕の重さを免荷し、わずかな力で肘関節の屈伸運動や肩関節の水平運動を補助するため、食事動作におけるスプーンを口元へ運ぶ困難さを軽減するのに非常に効果的である。
- 2. この患者は右利きで、右手の把持能力は保たれており、問題はスプーンを口元まで運ぶ腕の挙上能力と持続力である。利き手交換は、利き手の機能が著しく失われた場合や、永続的な重度障害がある場合に検討されるものであり、今回の筋力低下と易疲労性が主症状であるケースには適切ではない。正しくは:利き手である右腕の疲労を軽減し、効率的に使用できる工夫を検討する。選びやすい理由:右手が疲れるため、左手を使う訓練も有効かと考えるかもしれない。混同注意:片麻痺などで利き手が完全に使えなくなった場合の対応と混同しやすい。
- 3. 患者は「スプーンの把持は可能だが」と明記されており、握る力や形状に問題があるわけではない。問題はスプーンを口元まで運ぶ腕の挙上・維持能力であるため、柄の形状変更は直接的な解決策とはならない。正しくは:腕の挙上や保持を補助する器具や自助具の導入を検討する。選びやすい理由:食事動作に関する自助具の選択肢として、まず握りやすい柄を想像しやすい。混同注意:握力低下や関節変形による把持困難なケースへの対応と混同しやすい。
- 4. 多発性筋炎の増悪期であっても、完全に上肢の使用を控えることは廃用症候群を招き、ADL能力のさらなる低下につながる可能性がある。適切な範囲での活動や、補助具の活用により、残存機能の維持・向上を図ることが重要である。正しくは:疲労を考慮しつつ、休息を適切に取りながら、残存機能を活用できる範囲で活動を促し、必要に応じて補助具を使用する。選びやすい理由:炎症や疲労があるため、安静が最優先と考えるかもしれない。混同注意:急性期の炎症が非常に強い時期の絶対安静と、機能回復期の段階的な活動制限・支援のバランスに関する理解が混同しやすい。
- 5. 多発性筋炎の増悪期における高負荷の筋力増強訓練は、炎症を悪化させたり、筋組織をさらに損傷させたりするリスクがあるため禁忌である。この時期は、低負荷で疲労を避けた運動や、ROM運動、耐久性の維持を目的とした活動が適切である。正しくは:低負荷で疲労を避け、関節可動域の維持や軽度の筋力維持・耐久性向上を目的とした運動を段階的に行う。選びやすい理由:筋力低下があるため、筋力を強化する必要があると短絡的に考えるかもしれない。混同注意:慢性期や回復期における適切な筋力トレーニングと、急性期・増悪期の治療的運動の原則が混同しやすい。
国試ポイント
多発性筋炎患者の病期に応じた適切な評価と介入、特に上肢機能低下に対する自助具(BFO)の適応を理解しているか。炎症性疾患の急性期・増悪期における運動療法の禁忌(高負荷訓練)や、ADL支援の原則を問う問題。
混同注意
握力低下による把持困難(スプーンの柄の変更)と、上肢挙上困難(BFO)の区別。炎症性疾患急性期の運動療法(安静)と慢性期・回復期の運動療法(筋力増強)の区別。
次に同じ論点が出たら
患者の具体的なADL困難点を特定する:「把持は可能だが、口まで運べなくなる」という詳細な記述がポイント。病態と病期を考慮する:「多発性筋炎の増悪」「ステロイド治療中」から、筋力低下・易疲労性があること、高負荷運動は避けるべきことを推察する。提示された選択肢が、患者の具体的な問題点に合致するかどうかを評価する:筋力低下とリーチ動作困難にはBFOが最適。
関連知識
多発性筋炎の病態と治療:自己免疫疾患であり、ステロイド治療が一般的。増悪期には筋力低下、易疲労性が顕著。BFOの機能と適応:上肢の支持と動作補助。主に筋力低下や関節拘縮、運動麻痺などで上肢の挙上やリーチ動作が困難な場合に用いられる。特にC5-6レベルの脊髄損傷や神経筋疾患の患者に有効。炎症性筋疾患の運動療法:増悪期には高負荷運動は禁忌。低負荷・等尺性運動、ROM運動が推奨される場合もあるが、基本は炎症を悪化させないこと。摂食動作における自助具:BFOの他に、ユニバーサルカフ、滑り止めマット、把持しやすい柄のスプーンなどがあるが、患者の具体的な問題点によって選択が異なる。