作業療法中に腹痛を訴える身体表現性障害の患者への対応として適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
身体表現性障害の患者に対する作業療法では、症状への過度な囚われを防ぎ、現実的な活動への参加を促すことが重要です。軽い身体活動は、患者さんの注意を身体症状から逸らし、活動することによる達成感や気分転換を促します。これにより、症状があっても活動できるという経験を積み重ね、身体症状への不安や固着を軽減していくことを目指します。症状を完全に否定せず、受け止めつつも、症状にとらわれすぎないよう活動へと導く視点が求められます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。身体表現性障害の患者さんは身体症状に過度に囚われがちですが、活動を完全に中止すると症状への固着を強める可能性があります。軽い身体活動は、患者さんの注意を症状からそらし、心理的・身体的な状態を改善するきっかけとなるため、適切な対応です。活動を通して、症状があっても活動できるという経験を促します。
- 2. 身体表現性障害の患者さんは、身体症状の医学的原因が不明瞭であることが多く、痛みの原因を追求することは患者さんの身体症状への固着をかえって強める可能性があります。また、治療者は患者さんの訴えを共感的に受け止めつつも、過度に身体症状の“原因”に焦点を当てすぎないように注意が必要です。正しくは:痛みの原因を追求するのではなく、患者さんの苦痛に共感を示し、その上で症状があってもできる活動を見つける方向でサポートします。選びやすい理由:患者さんの訴えに真摯に向き合う姿勢として一見正しいように思えますが、身体表現性障害の特性上、症状の原因探しは症状への固着を悪化させることがあります。混同注意:器質的疾患による症状への対応(原因除去や症状緩和のための原因究明)と混同しやすいです。
- 3. 注意をそらすこと自体は有効な戦略の一つですが、「積極的に話しかける」という一方的な方法は、患者さんの苦痛や訴えを軽視していると受け取られる可能性があります。患者さんのペースに合わせて、自然な形で活動に誘導したり、興味のある話題を振ったりする方が適切です。正しくは:患者さんの感情を受け止めつつ、自然な形で患者さんが関心を持てる活動や話題に注意を向けるよう働きかけます。選びやすい理由:注意をそらすことが身体表現性障害の対応として効果的であるという知識から、この選択肢を選んでしまいがちです。しかし、その「そらし方」が重要になります。混同注意:単なる気分転換や注意転換の技法と、身体表現性障害の患者に対するより繊細なアプローチとを混同しやすいです。
- 4. 身体表現性障害の患者さんが訴える症状は、医学的な所見と必ずしも一致しません。痛みが完全に治まるまで安静にさせてしまうと、症状への注意がより一層集中し、活動への恐怖心を助長し、症状の慢性化や活動性の低下を招く可能性があります。正しくは:患者さんの訴えを否定せずに受け止めつつ、症状があっても無理なく行える活動の継続を促します。選びやすい理由:身体的な痛みがある場合に安静を指示するのは一般的な対応であるため、選びやすいです。混同注意:急性期の身体疾患による疼痛への対応(安静第一)と、身体表現性障害の疼痛への対応とを混同しやすいです。
- 5. 身体表現性障害の患者さんは、身体的異常がないことを説明されても、その説明を受け入れられないことが多く、むしろ「自分の苦痛を理解してもらえない」と感じ、不信感を抱く可能性があります。安心させようとして病状を説明しても、症状の改善にはつながりにくいです。正しくは:身体所見に異常がないという事実は直接的には伝えずに、患者さんの訴えを共感的に聞きながら、症状管理や活動参加へのサポートを行います。選びやすい理由:客観的な事実を伝えれば患者さんが納得して安心するだろう、と考えてしまいがちです。特に、器質的疾患の可能性を除外できた場合に患者に安心感を与えるという一般的な医療アプローチと混同しやすいです。混同注意:器質的疾患が除外された際の患者への説明と、身体表現性障害の患者への精神的なアプローチとを混同しやすいです。
国試ポイント
身体表現性障害の患者対応では、症状を否定せず共感的に受け止めつつも、過度に症状の原因追求や解決に固執させず、症状があっても活動に参加し、生活の質を高めるための支援を行うという原則が問われています。特に、症状への注意をそらし、活動への参加を促す具体的な方法が重要視されます。
混同注意
器質的な身体疾患による症状への対応(安静、原因究明、身体所見に基づく説明など)と、精神科疾患としての身体表現性障害への対応の原則の違いを混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後、身体表現性障害の患者対応に関する問題が出題された場合は、症状の『原因』や『治癒』に直接焦点を当てるのではなく、『症状があってもできる活動』『生活の質の向上』『心理的支援』に重点を置いた選択肢が適切であると判断する。
関連知識
身体表現性障害の治療ガイドライン、認知行動療法(症状へのとらわれを減らす技法)、作業療法のADL/IADL参加促進、心理的アプローチの基本。