境界性パーソナリティ障害の患者に対する作業療法で正しいのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4・5番
解説
境界性パーソナリティ障害のクライエントは、激しい感情の揺れや対人関係の不安定さを抱えており、自傷行為や他者への攻撃衝動のリスクが高いです。そのため、攻撃的な感情を適切かつ適応的な方法で表現できるよう支援することは、クライエントの衝動性をコントロールし、より建設的な行動を促す上で不可欠です(選択肢4)。また、彼らは見捨てられ不安や慢性的な空虚感といった強い主観的苦悩を抱えているため、治療者がその苦痛を共感的に理解し、受け止める姿勢は、クライエントの信頼を得て治療関係を構築する上で最も基本的な要素となります(選択肢5)。
選択肢ごとの解説
- 1. 境界性パーソナリティ障害のクライエントが示す退行行動は、未熟な対処メカニズムであり、それを許容すると依存を強化したり、症状を悪化させたりする可能性があります。治療者は適切な境界設定と成熟した対処方法への誘導が必要です。正しくは:退行行動を安易に許容せず、安定した環境と現実的な期待の中で、より成熟した行動様式を促す。選びやすい理由:共感的な態度と混同し、クライエントの苦しみを和らげようとして、一時的に受け入れることが最善だと誤解しがち。混同注意:共感的理解と、行動の許容・強化の区別。
- 2. 境界性パーソナリティ障害のクライエントは、対人関係において不安定さや衝動性、過敏性を持つことが多く、初期段階での集団参加は、かえって対人関係の問題を悪化させたり、混乱を招いたりするリスクがあります。まずは個別の関係性構築と安定化が優先されます。正しくは:個別での治療関係の確立と安定化を図り、クライエントの状態や対人関係スキルに応じて、慎重に集団作業への移行を検討する。選びやすい理由:作業療法の重要な要素である集団活動が、どのクライエントにも一般的に良いという認識から、つい選んでしまいがち。混同注意:集団療法の効果と、クライエントの特性に応じた導入時期・方法の考慮。
- 3. 境界性パーソナリティ障害のクライエントは、強い不安や衝動性、自己同一性の拡散を抱えており、明確で一貫した治療の枠組み(設定、時間、ルールなど)が非常に重要です。柔軟すぎる枠組みは、クライエントの不安を増強させ、混乱を招く可能性があります。正しくは:治療の枠組みは明確かつ一貫して提示し、逸脱行動に対しては毅然とした態度で臨むことで、クライエントに安心感と構造を提供する。選びやすい理由:個別のニーズに応えるという意図から、柔軟な対応が良いと誤解しがち。また、クライエントの要求に流されやすい心理。混同注意:個別化された治療と、治療構造の明確さの区別。
- 4. 正解。境界性パーソナリティ障害のクライエントは、自己や他者への攻撃衝動を抱えやすいですが、その表現方法が不適切であると、人間関係の破綻や自傷行為につながることがあります。作業療法を通じて、安全かつ建設的な方法で感情を表出する機会を提供し、感情調整スキルを育むことは非常に重要です。選びやすい理由:攻撃的な感情の表現を促すこと自体に抵抗を感じ、選択肢として避けたい心理が働くかもしれない。混同注意:攻撃性を助長することと、攻撃感情を適応的に表現することの区別。
- 5. 正解。境界性パーソナリティ障害のクライエントは、慢性的な空虚感、見捨てられ不安、激しい感情の動揺など、非常に強い主観的苦悩を抱えています。治療者がその苦悩を真正面から共感的に理解し、受け止める態度は、クライエントが治療関係を信頼し、自己を開示していく上での基盤となります。選びやすい理由:共感するだけでは不十分と感じて、選択肢として選びにくいかもしれない。混同注意:共感的理解と、問題行動の許容を混同すること。
国試ポイント
境界性パーソナリティ障害の特性を理解し、その特性に合わせた作業療法上の適切な介入原則(特に感情調整、対人関係、治療構造の維持)を問う問題です。表面的な共感だけでなく、具体的な行動変容や枠組みの重要性まで踏み込んで理解しているかが試されます。
混同注意
『共感的理解』と『退行の許容』や『枠組みの柔軟化』を混同しやすい。共感は重要だが、問題行動の許容や治療構造の曖昧化は症状悪化につながるという区別が必要です。
次に同じ論点が出たら
次回同じ論点が出た場合、境界性パーソナリティ障害のクライエントに対する治療目標、具体的な作業活動の選択理由、または危機介入時の対応方法などが問われる可能性があります。特に、転移・逆転移の問題や治療者のバーンアウト対策も関連知識として重要です。
関連知識
精神科作業療法における治療関係の原則、パーソナリティ障害の各タイプの主な特徴と介入のポイント、感情調整スキルの指導、認知行動療法や弁証法的行動療法の基本的な考え方。