87歳の男性。脳血管障害の後遺症により週1回の訪問作業療法を行っている。訪問時、85歳の妻が「家で介護することがつらい。疲れた」と暗い顔でため息をついている。訪問作業療法士の対応で正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第55回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
介護者の負担増大は、介護サービスの利用状況やケアプラン全体に関わる重要な問題です。訪問作業療法士は、利用者やその家族の状況変化に気づいた場合、チームの中心であるケアマネージャーに速やかに報告し、情報共有と連携を図ることが最も適切です。ケアマネージャーが、奥様の具体的なニーズをアセスメントし、必要に応じてケアプランの変更や新たなサービス(訪問介護、レスパイトケア、相談窓口など)の検討を行います。
選択肢ごとの解説
- 1. この段階で精神科受診を直接勧めるのは、専門職としての介入として適切ではありません。まずは状況を正確に把握し、多職種連携を通じて支援を検討すべきです。正しくは:まずケアマネージャーに情報共有し、精神的サポートの必要性について多職種で検討する。選びやすい理由:介護者の疲弊が精神的な問題につながる可能性があるため、一見妥当に見えるかもしれませんが、作業療法士が直接判断して勧めるのは時期尚早かつ専門外です。混同注意:介護負担によるうつ病などの精神疾患と、初期の段階での専門職の介入タイミングの判断。
- 2. 奥様が訴えているのは「介護のつらさ」であり、直接的に入所を希望しているわけではありません。入所施設の情報提供は、本人の意向を確認し、ケアマネージャーと相談した上で行うべきです。正しくは:まずケアマネージャーに状況を伝え、奥様の具体的なニーズや希望をアセスメントし、必要に応じて多職種でサービスを検討する。選びやすい理由:介護負担の軽減策として施設の利用が考えられるため、すぐに情報提供したくなるかもしれませんが、これも早計な対応です。混同注意:介護負担軽減の手段としての施設利用と、その情報提供の適切なタイミング。
- 3. 患者さん本人に直接、妻に甘えるなと伝えるのは、夫婦間の関係性や感情に配慮を欠き、信頼関係を損なう可能性があります。また、患者さんの病状や能力を考慮せずに伝えるのは不適切です。正しくは:患者さんの能力を適切に評価し、自立可能な動作を増やすための作業療法計画を立て、奥様の介護負担が減るような間接的支援を検討する。同時に、奥様の状況をケアマネージャーに報告し、介護支援全般を見直す機会とする。選びやすい理由:患者さんの自立度を高めることが介護負担軽減につながるという考えから、選びたくなるかもしれませんが、言葉の選び方や介入の仕方が問題です。混同注意:患者さんの自立支援と、介護者の精神的負担への配慮、そして多職種連携の重要性。
- 4. 訪問作業療法士が直接、別のサービス事業所に利用開始を依頼することは、職権を逸脱する行為であり、ケアプランに基づく多職種連携の原則に反します。ケアプランの変更や新たなサービス導入はケアマネージャーが中心となって行います。正しくは:ケアマネージャーに奥様の状況を報告し、訪問介護サービスの導入の必要性について検討を依頼する。選びやすい理由:介護負担の軽減策として訪問介護が有効であるため、すぐに実行したくなるかもしれませんが、手続きや決定権が異なります。混同注意:介護負担軽減の有効なサービスと、そのサービス導入における多職種連携の役割分担。
- 5. 正解。訪問作業療法士は、介護者の異変を察知した場合、速やかにケアマネージャーに情報共有する義務があります。ケアマネージャーは介護保険サービスの専門家であり、奥様の状況を包括的に把握し、必要な支援(ケアプランの見直し、他サービスの導入、相談窓口の紹介など)を調整する中心的な役割を担います。
国試ポイント
介護保険制度における多職種連携の役割分担と、特に介護者の異変に対する専門職の対応プロトコルが問われています。直接的な介入ではなく、適切な専門職への情報共有と連携が重要である点を理解しているかがポイントです。
混同注意
介護者の直接的な問題解決と、多職種連携を通じた間接的な問題解決の区別。特に、作業療法士の業務範囲外の介入(精神科受診の指示、他サービスへの直接依頼など)との混同。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず「誰に情報共有すべきか」「自身の職務範囲内で完結する問題か」「多職種連携のどの段階に当たるか」を判断基準にすると良いでしょう。特に、ケアマネージャーへの報告は、多職種連携の基本中の基本であることを意識してください。
関連知識
ケアマネジメントのプロセス、介護保険制度における多職種連携の役割、介護者の負担を軽減するための各種サービス(訪問介護、通所介護、短期入所、地域包括支援センターなど)、作業療法士の倫理と職務範囲。