慢性期頸髄損傷の残存機能レベルと使用する機器の組合せで正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
第3頸髄節までの機能残存では四肢・体幹の随意運動がほとんどなく、横隔膜の機能も不十分なため、わずかな頭頸部の動きや呼気・音声などで操作できる環境制御装置が適応となります(公式正答1)。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。第3頸髄節までの残存では上下肢を動かせないため、頭頸部の動きや呼気・音声で家電などを操作できる環境制御装置が適応となります。
- 2. 横隔膜は主に第4頸髄節(第3〜第5頸髄節)の支配であり、第4頸髄節まで残存していれば自発呼吸が可能なことが多く、人工呼吸器は通常必要ありません。正しくは:C1-C3残存の場合、横隔膜や肋間筋の機能が失われるため、人工呼吸器が必要となることが多いです。選びやすい理由:頸髄損傷では呼吸筋麻痺が起こりうるため、人工呼吸器が必要というイメージから誤って選択される可能性があります。混同注意:呼吸筋麻痺の程度と損傷レベルの関連性について、正確な知識がないと混同しやすいです。C5残存では通常、横隔神経(C3-C5)が保たれており、呼吸は自立しています。
- 3. 第5頸髄節まで残存していれば肩・肘の屈曲が可能で、手で操作するジョイスティック式の電動車椅子を使用できます。チンコントロール(顎操作)の電動車椅子は第4頸髄節レベルで用います。正しくは:C1-C4レベルの頸髄損傷、特に上肢機能が著しく制限される場合にチンコントロール電動車椅子が用いられます。C6残存の場合、手関節の背屈が可能なため、ジョイスティック操作の電動車椅子が一般的です。選びやすい理由:電動車椅子が必要という点では合っていますが、その操作方法が損傷レベルと合致しないため誤りです。チンコントロールはより重度の麻痺に対する選択肢です。混同注意:頸髄損傷で電動車椅子が必要なことは理解できていても、残存機能に応じた操作方法(ジョイスティック、チンコントロール、ヘッドコントロールなど)の具体的な区別ができていないと混同しやすいです。
- 4. BFO(ボールベアリング式前腕支持装具)は、肩や肘の筋力が弱い第4〜第5頸髄節レベルで上肢の運動を補助するために用います。第6頸髄節まで残存していれば通常は必要ありません。正しくは:BFOは主にC4-C5レベルの頸髄損傷で、上肢の重力排除下での運動補助や食事、整容動作を支援するために使用されることが多いです。C7残存では、通常BFOは必要ありません。選びやすい理由:何らかの装具や補助具が必要という漠然としたイメージから選択される可能性があります。BFOが上肢の支持に使われることから、頸髄損傷の補助具として誤解されるかもしれません。混同注意:BFOの適応となる損傷レベルや、その機能について正確に理解していないと混同しやすいです。C7残存では、肘伸展や手関節屈筋の一部が働くため、より高度な上肢機能を有します。
- 5. コックアップスプリントは手関節背屈筋が働かない第5頸髄節レベルなどで手関節を支えるために用います。第7頸髄節まで残存していれば手関節背屈筋は十分に働きます。
国試ポイント
頸髄損傷の機能残存レベルと、それに応じた適切な自助具・補助機器の知識が問われています。各レベルでどの筋群が機能し、どのような動作が可能になるかを理解し、それぞれの機器がどのような目的で、どのレベルの患者に適用されるかを正確に把握しているかが重要です。特に、基本的な呼吸筋(横隔膜)、上肢の主要な動きに関わる筋群(三角筋、上腕二頭筋、手関節背屈筋など)とその神経支配レベルを明確に結びつける必要があります。
混同注意
各選択肢で提示されている機器が、どの頸髄損傷レベルに最も適しているかについて混同しやすいです。特に、電動車椅子の操作方法(ジョイスティック、チンコントロール、ヘッドコントロール)や、上肢装具(BFO、コックアップスプリント)の具体的な目的と適応レベルの区別が曖昧だと誤答につながりやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後同じ論点が出題された場合、頸髄損傷の各レベルにおける残存機能(特にキーマッスル)と、それによって可能となるADL、そしてそれを補完するための主要な補助機器(電動車椅子、装具、環境制御装置など)を明確に結びつけられるかを問われるでしょう。また、単一の機器だけでなく、複合的なアプローチや新しいテクノロジー(例:脳波デバイス)に関する知識も重要になる可能性があります。
関連知識
頸髄損傷の各レベルにおけるキーマッスルとその機能、国際機能評価基準(ASIA Impairment Scale, AIS)の理解。呼吸器管理の必要性、膀胱・直腸管理、体温調節機能など、頸髄損傷に伴う全身的な合併症とそれに対するケア。電動車椅子の種類と操作方法、各種装具や自助具の適応とその目的。