57歳の男性。筋萎縮性側索硬化症。発症後5年が経過。四肢と体幹に重度の運動麻痺を生じてベッド上の生活となり、ADLは全介助。球麻痺症状を認め、安静時も呼吸困難を自覚している。この患者がコミュニケーション機器を使用する際の入力手段として適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は進行性の神経変性疾患であり、病気の進行とともに多くの随意筋が麻痺しますが、外眼筋は比較的障害されにくいという特徴があります。この患者は重度の全身麻痺、球麻痺、呼吸困難を呈しており、他の随意運動による入力手段が困難な状況です。そのため、外眼筋を用いた視線入力装置が最も適切なコミュニケーション手段となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 球麻痺症状により舌の運動機能が低下している可能性が高く、精緻な入力手段としては不適切です。正しくは:症状が進行しても比較的保たれる部位や機能を用いる必要があります。選びやすい理由:初期のALS患者では舌で操作する機器も選択肢になるため、進行期の状態を見落とすと選択肢として考えてしまうかもしれません。混同注意:初期ALS患者の入力手段、または嚥下訓練の対象部位と混同しやすいです。
- 2. 球麻痺症状は、舌だけでなく口唇を含む顔面の筋肉にも影響を及ぼし、巧緻な動きを要する操作には適していません。正しくは:呼吸困難を伴う重度の球麻痺では、口唇のコントロールも困難になっていると考えられます。選びやすい理由:呼気と同じように、口唇は比較的残存機能として考えられがちですが、球麻痺の進行度を考慮すると不適切です。混同注意:球麻痺の初期段階や、より軽度な症状の場合の入力手段と混同する可能性があります。
- 3. 患者は安静時にも呼吸困難を自覚しており、これは呼吸筋の麻痺が進行していることを示します。このような状況で呼気を利用した入力は、患者にさらなる負担をかけ、安定した操作が困難です。正しくは:呼吸機能が著しく低下しているため、呼吸に関連する動作は避け、他の残存機能を検討すべきです。選びやすい理由:呼吸は反射的な動作であり、わずかな空気の流れでも感知できる機器もあるため、一見可能に思えるかもしれませんが、呼吸困難の症状を考慮すると不適切です。混同注意:呼吸機能が比較的良好なALS患者や、他の疾患で呼吸器系の残存機能を利用するケースと混同する可能性があります。
- 4. 問題文に「四肢と体幹に重度の運動麻痺を生じてベッド上の生活となり、ADLは全介助」と明記されており、手指を動かす能力が失われているため、入力手段として利用できません。正しくは:重度の運動麻痺があるため、手指の機能は期待できません。選びやすい理由:一般的なコミュニケーション機器では手指での入力が多いため、ALSの進行度合いを見落とすと選択肢として考えてしまうかもしれません。混同注意:ALSの初期段階や、他の疾患で手指の機能が保たれている場合と混同しやすいです。
- 5. 正解。筋萎縮性側索硬化症(ALS)では、病気の進行に伴い多くの骨格筋が麻痺しますが、外眼筋は比較的最後まで機能が保たれることが多いです。この患者は重度の全身麻痺と球麻痺、呼吸困難を呈しているため、他の入力手段が困難な中、外眼筋を用いた視線入力は有効なコミュニケーション手段となります。
国試ポイント
ALS患者の進行度に応じた適切なコミュニケーション手段の選択能力を問う問題です。ALSの病態生理、特にどの筋肉が比較的温存されやすいかという知識が重要となります。全身状態から残存機能を正確に把握することが求められます。
混同注意
ALSの初期症状や、他の疾患におけるコミュニケーション支援機器の選択肢と混同しやすいです。特に、球麻痺症状が進行している中で、舌や口唇、呼気といった部位の残存機能を過大評価してしまう可能性があります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、患者の疾患の種類、進行度、残存している身体機能や感覚、認知機能、そして呼吸状態などを詳細に把握し、それらに最も適した支援機器や介入方法を選択できるかを判断します。
関連知識
ALSの病態生理(運動ニューロンの変性、上位・下位運動ニューロン症状、球麻痺)、外眼筋の機能、コミュニケーション支援機器の種類(視線入力装置、スイッチ入力装置、文字盤など)、重度身体障害者のADL支援。