老年期における精神保健上の問題として正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
老年期には、身体機能の低下、親しい人との別れ、社会的な役割の喪失などが重なり、社会とのつながりが希薄になりやすいです。このような状況が「社会的孤立」を引き起こし、うつ病の発症リスクの増加、認知機能の低下、さらには死亡リスクの増加など、多岐にわたる精神保健上の問題に繋がることが広く認識されています。
選択肢ごとの解説
- 1. 自我同一性の確立は、エリクソンの発達段階論において青年期に達成されるべき課題であり、老年期の精神保健上の問題とは直接関連しません。正しくは:老年期においては、自我の統合が課題となります。選びやすい理由:「自我」という言葉から、高齢期の発達課題と関連があるように感じるかもしれませんが、時期が異なります。混同注意:エリクソンの発達段階論における青年期の課題(自我同一性対同一性拡散)と老年期の課題(自我統合対絶望)が混同されることがあります。
- 2. エディプスコンプレックスは、フロイトの精神分析理論において幼児期(3〜5歳頃)に経験される心理的葛藤であり、老年期の精神保健上の問題ではありません。正しくは:幼児期の性心理発達の概念です。選びやすい理由:「コンプレックス」という言葉から、何らかの心理的な問題と関連があるように思えるかもしれませんが、老年期の問題ではありません。混同注意:精神分析学における発達段階と、老年期の発達課題や精神疾患が混同されることがあります。
- 3. 空の巣症候群は、子供たちが自立して家を出た後に親が感じる喪失感や寂しさを指しますが、これは主に中年期後半から老年期早期にかけての一時的な心理状態であり、一般的な老年期の精神保健上の問題というよりは、特定のライフイベントに伴う適応障害に近い概念です。選択肢5の「社会的孤立」の方がより広範で深刻な老年期の精神保健上の問題として適切です。正しくは:空の巣症候群は、主に中年期後半から老年期早期にみられる適応障害の一種です。選びやすい理由:子供の独立は高齢期のライフイベントなので、高齢者特有の問題として正答を選びたくなります。しかし、これは一時的・限定的な問題であり、より広範な「精神保健上の問題」を問われた場合、より包括的な選択肢が優先されます。混同注意:特定のライフイベントに伴う一過性の心理状態と、高齢期に慢性化しやすい広範な精神保健上の問題が混同されることがあります。
- 4. モラトリアムは、社会的な責任を一時的に猶予され、自己探求や準備期間に充てることを指し、主に青年期に特徴的な現象です。老年期の精神保健上の問題とは異なります。正しくは:青年期における自己探求の期間を指します。選びやすい理由:「期間」という言葉から、人生のある時期と関連があるように感じるかもしれませんが、老年期の問題ではありません。混同注意:エリクソンの発達段階論における青年期の課題(自我同一性の確立)と関連する概念であり、老年期の発達課題とは異なります。
- 5. 正解。高齢期には、退職、配偶者や友人の死、身体機能の低下などにより社会とのつながりが希薄になりやすく、これがうつ病や認知機能低下などの精神保健上の問題に直結することが多いため、社会的孤立は老年期における重要な精神保健上の問題です。正しくは:社会的孤立は、高齢者のQOLを低下させ、精神的な健康を損なう主要な要因の一つです。選びやすい理由:他の選択肢が明確に老年期の問題ではないため、消去法で選ばれやすいですが、内容としても高齢者の精神保健上の問題として非常に重要です。混同注意:家族との関係性の問題や、引きこもりなどの特定の状況と混同されることがありますが、より広範な概念として高齢者の社会参加の減少や人との交流の欠如を指します。
国試ポイント
本問題は、老年期における精神保健上の主要な課題やリスク要因に関する基本的な知識を問うものです。各発達段階における主要な発達課題や心理的特徴、特定のライフイベントに伴う心理状態を正確に理解しているかが試されます。
混同注意
「空の巣症候群」は老年期に関連するライフイベントですが、これは特定の状況における一時的な適応障害であり、より広範かつ慢性的な「社会的孤立」が高齢期の精神保健上の問題としてはより適切です。他の選択肢は明確に老年期とは異なる発達段階の概念であるため、区別は容易です。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、高齢期の精神保健上の問題として、うつ病、認知症、せん妄、虐待、そしてこれらのリスク因子(社会的孤立、経済的問題、身体機能低下など)に着目して選択肢を評価する必要があります。
関連知識
エリクソンの発達段階論、フロイトの精神分析理論、老年期のライフイベントと心理的変化、高齢者のQOLと社会参加、高齢者のうつ病と認知症。