高齢者の長期の安静臥床の影響で正しいのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1・3番
解説
高齢者の長期安静臥床は、身体的のみならず精神的・認知的にも多岐にわたる影響を及ぼします。選択肢1の「記憶力の低下」は、環境刺激の減少や社会的交流の不足、活動性の低下などが認知機能、特に記銘力に悪影響を与えるため正しいです。選択肢3の「循環血液量の減少」は、重力による静水圧の変化が少なくなることで、体液量の調節メカニズムが変化し、腎臓でのナトリウム排泄が増加したり、抗利尿ホルモンの分泌が抑制されたりすることで生じます。これにより、起立性低血圧などのリスクが高まります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。長期臥床は、環境刺激の減少や活動性の低下により脳機能に影響を与え、特に記銘力(新しい情報を記憶する能力)の低下を引き起こしやすいです。認知機能の全般的な低下の一環として現れます。選びやすい理由:直接的な身体変化ではないため、見落とされやすいかもしれません。
- 2. 長期臥床は、横隔膜運動の制限や呼吸筋力の低下、肺下葉の虚脱などにより、一回換気量(1回の呼吸で出入りする空気の量)を減少させる傾向があります。正しくは:一回換気量は減少します。選びやすい理由:安静臥床によって呼吸機能が変化するというイメージから、何らかの呼吸機能の変化が起こることは正しいですが、増加ではなく減少であることに注意が必要です。混同注意:呼吸数の増加や努力性呼吸と混同しやすいですが、一回換気量自体は減少します。
- 3. 正解。長期臥床は、重力の影響が軽減されることで静脈還流が変化し、特に下肢への血液貯留が減少し、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)などのホルモン分泌の変動により、体液量の恒常性が変化し循環血液量が減少します。選びやすい理由:体液の再分配により一時的に増える側面もありますが、長期的にはレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の抑制などにより全体的に減少します。
- 4. 長期臥床は、胸郭の拡張制限や呼吸筋力の低下により、予備呼気量(安静呼気後にさらに吐き出せる空気の量)を減少させます。正しくは:予備呼気量は減少します。選びやすい理由:呼吸機能が低下するという漠然とした認識から、何らかの変化が起こることは正しいですが、増加ではなく減少であることに注意が必要です。混同注意:残気量や機能的残気量との関係が複雑であり、混同しやすいかもしれません。
- 5. 長期臥床は、自律神経系の調節機能の変化(交感神経の相対的優位化)や心臓の脱条件付けにより、安静時心拍数を増加させる傾向があります。正しくは:安静時心拍数は増加します。選びやすい理由:運動不足で心拍数が下がるようなイメージや、代謝の低下と混同する可能性がありますが、身体活動の減少はむしろ循環器系に負担をかけ、心拍数増加を招くことが多いです。混同注意:運動による心臓への適応(心拍数の減少)と、安静臥床による心臓の脱適応(心拍数の増加)を混同しやすいです。
国試ポイント
この問題は、高齢者の長期安静臥床が身体の複数のシステム(認知機能、呼吸器系、循環器系など)に与える影響について、正確な知識を問うものです。特に、各臓器系の生理的変化の方向性(増加か減少か)を正しく理解しているかが重要です。
混同注意
各選択肢で「増加」と「減少」が対になる形で問われており、生理学的変化の方向性を曖昧に記憶していると誤りやすい構造です。例えば、一回換気量と予備呼気量、安静時心拍数について、臥床による影響を正しく理解しているかが問われます。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が問われた場合、安静臥床が特定の身体機能に与える影響(特に増加/減少の方向性)を問う問題形式が予想されます。また、単一の身体機能だけでなく、精神機能や社会活動への影響を問う問題も出題される可能性があります。
関連知識
長期臥床による他の影響としては、筋萎縮、骨粗鬆症、起立性低血圧、褥瘡、深部静脈血栓症、肺炎、尿路感染症、摂食嚥下機能低下、抑うつ、せん妄などが挙げられます。これらの複合的な影響を理解することが、高齢者ケアにおいて重要です。