32歳の男性。統合失調症。これまで院内の外来作業療法に参加していたが、友人の就労を契機に本人も就労希望を口にするようになった。担当の作業療法士が院内のカンファレンスで、この患者の就労移行支援事業所利用を提案するにあたって最も重要なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
就労移行支援事業所は、精神障害を持つ方が就労を目指す際に利用する福祉サービスであり、その利用にあたって最も重要なのは、利用者本人の「働きたい」という意欲です。意欲がなければ、どれだけ環境が整っていても支援の効果は限定的になります。症状の程度や病識なども考慮されますが、これらは意欲があれば支援の中で対応していくことが可能です。
選択肢ごとの解説
- 1. 罹病期間自体が就労支援事業所の利用決定に直接最も重要となるわけではありません。個々の患者の現在の状態や意欲がより重視されます。正しくは:罹病期間の長さよりも、現在の病状の安定度や就労に向けた具体的な能力が重要です。選びやすい理由:病気の経過の長さは、症状の安定性や社会機能への影響を推測させるため、一見重要そうに見えます。混同注意:病気の期間が長いと、それだけで就労が難しいと誤解することがあります。
- 2. 幻聴の頻度は症状の一部であり、安定している場合は就労可能ですが、最も重要なのは就労への意欲です。症状コントロールが重要であり、頻度そのものが直接的な決定要因ではありません。正しくは:幻聴の頻度よりも、幻聴に対する対処能力や、幻聴が就労活動にどの程度影響するか、そしてそれを乗り越えようとする本人の意欲が重要です。選びやすい理由:精神疾患の症状である幻聴は、就労を妨げる要因になり得ると考えられがちです。混同注意:症状が残存していると就労は不可能だと混同することがあります。症状があっても、対処できていれば就労は可能です。
- 3. 病識は治療への取り組みや再発予防に重要ですが、就労移行支援事業所の利用を提案する段階で最も重視されるのは、本人の『働きたい』という具体的な意欲です。正しくは:病識の程度も大切ですが、就労支援の初期段階では、病識の有無よりも本人の就労への強い意欲が優先されます。病識は就労を進める中で育むこともできます。選びやすい理由:病識があることで自己管理能力が高まり、就労が安定すると考えられるため、重要視しがちです。混同注意:病識がないと就労が無理だと決めつけることがあります。就労支援の過程で病識が深まることもあります。
- 4. 正解。就労移行支援事業所は、就労を希望する精神障害者に対して、就労に必要な知識や能力を向上させる訓練を提供する場所です。そのため、最も重要なのは、利用を希望する本人自身の「働きたい」という強い意欲です。意欲があれば、他の課題(症状や病識など)は支援の中で克服していくことが可能です。選びやすい理由:本人の意欲が何よりも優先されることは、支援の基本原則です。混同注意:客観的な病状や機能レベルと混同せず、本人の主観的な動機付けを重視することがポイントです。
- 5. 統合失調症の病型は診断上の分類であり、個々の患者の就労能力や就労移行支援事業所の利用可能性に直接影響を与える最も重要な因子ではありません。個別の症状や機能レベル、そして本人の意欲が重要です。正しくは:統合失調症の病型ではなく、現在の症状や機能レベル、そして就労への意欲が就労支援の可否を判断する上で重要です。選びやすい理由:病型によって予後や症状の特徴が異なるため、就労にも影響すると考えがちです。混同注意:病型と個人の機能レベルや社会適応能力を混同することがあります。
国試ポイント
この問題は、精神障害者の就労支援において、何が最も重要な要素であるかを理解しているかを問うています。特に、本人の主体的な意欲を重視する現代の支援の原則が問われるポイントです。
混同注意
症状の重さや病識の有無といった、客観的な臨床情報に引きずられやすいですが、支援の初期段階においては本人の『意欲』が最も重要であることを理解しておく必要があります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、精神障害者の社会参加支援(就労、地域生活など)において「本人の希望・意欲」が最も重要な要素となる状況を見極めることが重要です。
関連知識
就労移行支援事業所の目的と機能、精神科リハビリテーションにおける当事者主権・リカバリーの概念、ICF(国際生活機能分類)の視点(参加、環境因子、個人因子)。