朝6時に朝食をとり、8時に家を出て同じコースを歩き回り、10時にスーパーで同じ食材を購入して帰宅する行動を毎日繰り返す認知症患者で、最も考えられるのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
前頭側頭型認知症(特に行動型)は、前頭葉の障害により常同行動、同じ行動を繰り返す固執、儀式的行動、脱抑制などの行動・人格変化が特徴的に見られます。設問の「毎日同じ時間に、同じコースを歩き、同じ場所で同じものを買う」という行動パターンは、典型的な常同行動であり、このタイプの認知症に最も合致する症状です。
選択肢ごとの解説
- 1. HIV認知症の主な症状は認知機能の広範な低下、運動障害、行動障害ですが、決まった行動を繰り返す常同行動は典型的ではありません。正しくは:HIV認知症は、HIVウイルスが脳に感染することで起こり、記憶障害、注意障害、精神運動緩慢などが主症状です。選びやすい理由:認知症全般の知識があれば選択肢として検討されるかもしれませんが、特徴的な行動パターンとは直接結びつきません。混同注意:他の種類の認知症でみられる行動特徴と混同する可能性は低いですが、認知症という広義の疾患群と混同するかもしれません。
- 2. 血管性認知症は脳梗塞や脳出血などにより発症し、症状は階段状に進行することが多く、病巣部位によって多彩な症状を示しますが、常同行動は主な特徴ではありません。正しくは:血管性認知症の症状は、脳血管障害の部位や程度によって異なり、記憶障害、思考力低下、感情失禁などが見られますが、常同行動は特徴的ではありません。選びやすい理由:一般的な認知症の一つであるため、知識の少ない受験生は選択肢として選びがちですが、提示された行動パターンとの関連は弱いです。混同注意:アルツハイマー型認知症の記憶障害や実行機能障害と混同するかもしれませんが、行動面の特異性とは異なります。
- 3. 正解。前頭側頭型認知症(特に行動型前頭側頭型認知症)は、前頭葉の機能低下により、常同行動、同じ行動を繰り返す、習慣的行動への固執、脱抑制などの特徴的な行動・人格変化を示すことが知られています。設問の「同じコースを歩き回り、同じ食材を購入して帰宅する行動を毎日繰り返す」という記述は、まさに常同行動の一種であり、このタイプの認知症に最も合致します。正しくは:この行動パターンは、前頭側頭型認知症(行動型)に特徴的な常同行動、つまり習慣的な行動や決まった行動を繰り返す傾向を示しています。選びやすい理由:前頭側頭型認知症の具体的な症状を理解していれば正答できます。混同注意:他の認知症でみられる記憶障害や見当識障害とは異なる、行動面の特異な症状を指しているため、混同は少ないかもしれません。
- 4. Lewy小体型認知症の主な特徴は、認知機能の変動、幻視、パーキンソニズム、レム睡眠行動障害などです。常同行動も現れる可能性はありますが、設問のような厳格な繰り返し行動が最も特徴的とは言えません。正しくは:Lewy小体型認知症は、認知機能の変動(良い時と悪い時がある)、リアルで鮮明な幻視、手足の震えやこわばりなどのパーキンソン症状、寝言を言ったり夢の中で行動するなどのレム睡眠行動障害が主な症状です。選びやすい理由:認知症の多様な症状の一つとして常同行動を広くとらえてしまうと誤って選ぶ可能性があります。混同注意:パーキンソン病の症状と混同しやすく、また幻視という特徴的な症状に意識が向きがちですが、提示された行動様式は直接的な特徴ではありません。
- 5. Alzheimer型認知症の主な症状は、記銘力障害(新しいことを覚えられない)から始まり、進行すると見当識障害、実行機能障害などが現れます。常同行動も後期に見られることはありますが、設問のように初期からこれほど顕著で厳格なパターンを繰り返すことは一般的ではありません。正しくは:Alzheimer型認知症は、記憶障害(特に近時記憶)が最も早期かつ主要な症状であり、進行に伴い時間や場所の認識が困難になる見当識障害や、計画・実行能力の低下が見られます。選びやすい理由:最も一般的な認知症であるため、他の特徴的な症状との関連を見落とし、安易に選択してしまいがちです。混同注意:前頭側頭型認知症の行動変化と、アルツハイマー型認知症の記憶障害による行動変化(例:徘徊)を混同する可能性がありますが、常同行動は前頭側頭型認知症により特徴的です。
国試ポイント
認知症の診断において、各疾患に特徴的な中核症状や行動・心理症状(BPSD)を正確に理解しているかが問われています。特に前頭側頭型認知症に特徴的な行動変化(常同行動、脱抑制など)を他疾患と鑑別できることが重要です。
混同注意
アルツハイマー型認知症による記憶障害や見当識障害に伴う行動変化(例:目的のない徘徊)と、前頭側頭型認知症に特徴的な『決まった行動を繰り返す』常同行動との違いが混同されやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず行動パターンが『決まった行動の繰り返し』や『社会規範からの逸脱』であるかに注目し、常同行動や脱抑制の有無から前頭側頭型認知症を疑います。記憶障害が顕著ならアルツハイマー型、幻視やパーキンソン症状があればレビー小体型、発症様式が階段状なら血管性認知症を検討します。
関連知識
前頭側頭型認知症には、行動型前頭側頭型認知症(bvFTD)の他に、失語症を主症状とする進行性非流暢性失語と意味性認知症があります。行動型は、人格変化や行動異常(脱抑制、常同行動、無関心、共感の欠如など)が顕著です。Lewy小体型認知症の幻視、パーキンソニズム、認知変動、レム睡眠行動障害も重要知識です。