72歳の男性。以前から心電図異常を指摘されていた。心電図(別冊No. 1)を別に示す。正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
Ⅰ度房室ブロックは、心電図においてP波の後にQRS波が必ず続くものの、P-R間隔が0.20秒(200ms)以上に延長していることを特徴とします。これは心房から心室への電気信号の伝導が遅延している状態を示し、通常は自覚症状に乏しいことが多いです。高齢者では、加齢に伴う心臓の伝導系の線維化などにより見られることがあります。
選択肢ごとの解説
- 1. 心房細動はRR間隔が不整で、P波が消失し、f波(細動波)が出現するのが特徴ですが、提示された心電図ではそのような所見は見られません。正しくは:心房細動では不規則なRR間隔とP波の消失、代わりに不規則なf波が出現します。選びやすい理由:高齢者によく見られる不整脈の一つであるため、知識の曖昧さから選んでしまう可能性があります。混同注意:洞性不整脈や他の不整脈と混同しやすいですが、P波の有無とRR間隔の規則性が鑑別のポイントです。
- 2. 心房粗動は、特徴的なノコギリ状のF波(粗動波)を認め、RR間隔が規則的または不規則となるのが特徴ですが、提示された心電図ではノコギリ状F波は確認できません。正しくは:心房粗動ではノコギリ状のF波が見られ、QRS波との関係で房室ブロックを伴うことが特徴です。選びやすい理由:心房細動と並んでメジャーな上室性不整脈であるため、知識の曖昧さから選んでしまう可能性があります。混同注意:心房細動や頻拍性不整脈と混同しやすいですが、ノコギリ状F波の有無が重要な鑑別点です。
- 3. WPW症候群は、P-R間隔の短縮、QRS波の幅が広いこと、デルタ波の出現が特徴ですが、提示された心電図ではこれらの特徴的な所見は確認できません。正しくは:WPW症候群では、P-R間隔の短縮とデルタ波(QRS波の立ち上がりのスラー)が特徴的に見られます。選びやすい理由:先天性の心臓病で、若年層に見られることが多いですが、不整脈を伴うことがあるため、選択肢の一つとして認識されている可能性があります。混同注意:他の心室性不整脈や伝導障害と混同しやすいですが、デルタ波の有無が鑑別の決め手となります。
- 4. 洞不全症候群は、洞結節の機能不全により、洞徐脈、洞停止、徐脈頻脈症候群などの様々な症状を呈しますが、提示された心電図ではこれらの特定の所見(著しい徐脈、P波の脱落など)が確認できません。正しくは:洞不全症候群では、洞徐脈、洞停止、高度房室ブロック、徐脈頻脈症候群など、洞結節の機能不全による多様な徐脈性不整脈が見られます。選びやすい理由:高齢者に多く見られる疾患であり、心電図異常を指摘されているという文脈から、推測で選んでしまう可能性があります。混同注意:他の徐脈性不整脈、特に房室ブロックと混同しやすいですが、P波の有無やP波とQRS波の関係性で鑑別します。
- 5. 正解。提示された心電図では、P波の後に必ずQRS波が続くものの、P-R間隔(P波の始まりからQRS波の始まりまで)が0.20秒(5mm四方、または小さいマスで5つ)を超えて延長しています。これがⅠ度房室ブロックの典型的な特徴です。その他の波形に異常は見られず、心拍数も正常範囲です。
国試ポイント
心電図の基本的な判読能力が問われています。特に、各波形(P波、QRS波、T波)、間隔(P-R間隔、Q-T間隔)、時間(QRS幅)の正常値と、主要な不整脈や伝導障害における特徴的な変化を正確に理解しているかが試されます。
混同注意
房室ブロックの各段階(Ⅰ度、Ⅱ度MobitzⅠ型、Ⅱ度MobitzⅡ型、Ⅲ度)や、他の徐脈性不整脈(洞不全症候群、洞性徐脈)との鑑別が重要です。特にⅠ度房室ブロックは症状がないため見過ごされやすく、他のブロックとの違いをP-R間隔とQRS波の関連性で明確に区別できる必要があります。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の心電図問題が出題された場合は、まず①リズム(規則性、不規則性)、②心拍数、③P波の有無とQRS波との関連、④P-R間隔、⑤QRS幅、⑥Q-T間隔、⑦ST部分とT波の形、の順に体系的に分析し、各項目の正常値からの逸脱がないかを確認すること。
関連知識
心電図の正常波形と各部位(洞結節、房室結節、ヒス束、プルキンエ線維)の役割。不整脈の種類(徐脈性、頻脈性、期外収縮)。各不整脈の心電図所見、症状、治療法。高齢者の心臓の特徴と加齢に伴う変化。