46歳の男性。脳梗塞による右片麻痺。Brunnstrom法ステージは上肢Ⅴ、手指Ⅴ、下肢Ⅴ。発症後7か月が経過し、認知機能はMMSEが27点。既に退院し、父母と同居している。発症前は内装業に従事していたが、同職での復職が困難であるため、外来での復職支援を行うことになった。作業療法士の対応で最も適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
脳梗塞後の就労支援において、対象者の残存機能と実際の職務要件との整合性を確認するために、職場環境での職業評価は不可欠です。これにより、具体的な課題や必要な環境調整、訓練内容が明確になり、より効果的な支援計画を立案できます。他の選択肢は、この段階での最も適切な対応とは言えません。
選択肢ごとの解説
- 1. 発症から7か月が経過し、BrunnstromステージがVと比較的良好であるため、この段階での集中的な運動機能改善のみを最優先とするのは、就労支援の目的として最も適切ではありません。すでに実用的な運動能力は備わっている可能性が高く、残存機能の活用や作業遂行能力の向上に焦点を移す時期です。正しくは:残存する運動機能を活用し、実際の仕事に関連する動作の練習や、必要に応じて代償方法の習得を支援します。選びやすい理由:作業療法士の基本的な役割が運動機能の改善であるため、選んでしまいがちです。しかし、段階や目的を考慮する必要があります。混同注意:急性期・回復期のリハビリテーションの目標と、維持期・生活期(就労支援)の目標を混同しやすいです。
- 2. 就職が決定した後も、職場適応、新たな課題への対応、長期的な就労継続のために、必要に応じて支援を続けることが重要です。特に脳卒中後の復職では、環境の変化やストレスに対するサポートが求められることが多いです。正しくは:雇用された後も、必要に応じて職場への定着支援や、仕事内容・職場環境への適応に向けたフォローアップを継続します。選びやすい理由:就職を目標としているため、雇用決定をもって支援のゴールと考えがちです。混同注意:就労支援の短期的な目標(就職)と、長期的な目標(就労継続・安定)を混同しやすいです。
- 3. 正解。復職支援において、実際の職場環境で評価を行うことは非常に重要です。これにより、具体的な仕事の内容、必要な身体能力、作業環境の課題、人間関係など、机上では把握しきれない要素を詳細に評価できます。その情報をもとに、適切な職務の選定、環境調整、訓練内容の提案が可能になります。選びやすい理由:実際の職場での評価は手間がかかるように感じるかもしれませんが、最も効果的で現実的なアプローチです。混同注意:シミュレーション環境での評価と、実際の職場での評価の意義を混同しやすいですが、就労支援においては後者がより具体的で有効な情報をもたらします。
- 4. 就労支援の目的の一つは、対象者の自立性を最大限に高めることです。通勤に常に家族の付き添いを推奨することは、対象者の自立を妨げ、家族への負担を増大させる可能性があります。まずは本人の通勤能力を評価し、必要であれば通勤訓練や公共交通機関の利用支援などを検討すべきです。正しくは:対象者の通勤能力を評価し、必要に応じて通勤訓練を実施したり、公共交通機関の利用方法を検討・練習したりするなど、自立した通勤を促す支援を行います。選びやすい理由:安全性を考慮すると家族の付き添いが安心だと感じますが、長期的な自立を考えると適切ではありません。混同注意:一時的な介助と、長期的な自立支援の原則を混同しやすいです。
- 5. すべての課題がなくなるまで就労準備を続けるのは非現実的であり、復職の機会を逸する可能性があります。ある程度の課題が残っていても、実践を通じて適応能力を高めたり、職場でサポートを得たりすることで就労を継続できる場合があります。完璧を目指すよりも、現実的な目標設定と段階的な支援が重要です。正しくは:就労に必要な最低限の能力やスキルが整った段階で就労を検討し、残された課題は就労後のサポートで対応していくなど、段階的な支援計画を立てます。選びやすい理由:万全の状態で復職することが理想的だと考えがちです。混同注意:理想的な状態と、現実的な就労支援のアプローチを混同しやすいです。
国試ポイント
脳卒中後の生活期における作業療法士の役割、特に就労支援における評価の重要性と原則が問われています。対象者の病態や回復段階に応じた介入の優先順位を理解しているかが重要です。
混同注意
急性期・回復期での運動機能回復の重要性、または過剰な保護や理想主義的な支援と、生活期での現実的な自立支援・就労支援の原則との混同。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、以下の点に着目して判断します。1. 発症からの期間(回復段階)。2. 対象者の残存機能レベル。3. 支援の目的(例:ADL改善、QOL向上、就労支援など)。4. どのような評価や介入が、その目的達成のために最も直接的かつ効果的か。
関連知識
職業リハビリテーションのプロセス(職業評価、職業準備訓練、ジョブコーチ支援、職場復帰支援など)、ICF(国際生活機能分類)の活用、環境因子へのアプローチ、脳卒中後の高次脳機能障害(MMSE27点であるため、軽微な見落としがある可能性も考慮する)。