63歳の男性。脳出血による左片麻痺。Brunnstrom法ステージは上肢Ⅲ、手指Ⅲ、下肢Ⅳ。上肢の分離運動促通を目的とした自主訓練として最も適切なのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
選択肢5の「棒を垂直に保持する」は、肩関節の屈曲・外転位を避けつつ、上腕骨の中間位での保持を促し、肩甲骨の安定化と前腕の回内外を伴わない肘関節の屈曲・伸展、手指の協調した動きを必要としないため、上肢BrunnstromステージⅢの患者にとって分離運動を促進するための適切な訓練である。ステージⅢでは共同運動パターンが強く出現するため、共同運動パターンを抑制し、分離運動を促すことが重要である。
選択肢ごとの解説
- 1. 「文字を書く練習」は、手指の高度な分離運動と巧緻性、および前腕の回内外、手関節の安定性が必要であり、BrunnstromステージⅢの手指では困難である可能性が高い。手指Ⅲは粗大な把握が可能だが、個別的な指の運動や精密な動作は困難。正しくは:手指の個別運動や巧緻性が改善し、Brunnstromステージが上昇してから行う訓練として適切。選びやすい理由:日常生活動作に直結する訓練であり、目標となりやすいため。混同注意:手指の巧緻動作を要求される段階での訓練。ステージⅢではまだ手指の分離運動が不十分。
- 2. 「窓を拭く動作」は、肩関節の屈曲・外転、肘関節の伸展を伴うことが多く、これは上肢伸筋共同運動パターンに類似した動きである。BrunnstromステージⅢでは共同運動パターンが強く出現するため、共同運動パターンを強化する恐れがあり、分離運動の促進には繋がりにくい。正しくは:共同運動パターンに囚われずに、独立した関節運動が可能になってから行う訓練として適切。選びやすい理由:比較的単純な反復動作に見え、共同運動パターンに乗りやすいため、比較的行いやすいと感じるかもしれない。混同注意:共同運動パターンを誘発しやすい動作と、分離運動を促す動作との区別。
- 3. 「紙を引き裂く」は、両手を使う場合は異なる関節運動の組み合わせになるが、片手で行う場合でも指の屈曲・伸展が共同運動パターンに乗りやすく、手指の分離運動を促進するには不十分である。また、紙の厚さによっては粗大な把握力しか使わない場合もある。正しくは:手指の分離運動を促すには、より繊細な指の動きを要求する課題が必要となる。選びやすい理由:日常生活で行いそうな簡単な動作に見えるため。混同注意:粗大把握の訓練と、手指の分離運動の訓練。
- 4. 「ボールを突く」動作は、肘関節の屈曲・伸展を中心とした運動だが、これは上肢の屈筋・伸筋共同運動パターンを強化する可能性があり、分離運動の促進には繋がりにくい。特に、上肢Ⅲでは共同運動パターンが強く出現するため、この動作は共同運動を助長する恐れがある。正しくは:共同運動パターンを抑制し、特定の関節のみを動かす練習を取り入れるべきである。選びやすい理由:比較的単純な動作であり、運動量の確保には繋がりやすいため。混同注意:共同運動パターンを誘発しやすい運動と、分離運動を促す運動。
- 5. 正解。選択肢5の「棒を垂直に保持する」は、肩関節の屈曲・外転位を避けつつ、上腕骨の中間位での保持を促し、肩甲骨の安定化と前腕の回内外を伴わない肘関節の屈曲・伸展、手指の協調した動きを必要としないため、上肢BrunnstromステージⅢの患者にとって分離運動を促進するための適切な訓練である。ステージⅢでは共同運動パターンが強く出現するため、共同運動パターンを抑制し、分離運動を促すことが重要である。選びやすい理由:一見地味な訓練に見えるが、共同運動パターンに乗りづらい、分離された関節運動を促す点が重要である。混同注意:共同運動パターンを誘発しやすい動作と、分離運動を促進する動作。
国試ポイント
Brunnstrom法の各ステージにおける運動特性と、それに適した具体的な訓練内容を理解すること。特に、共同運動パターンからの分離運動の促進が重要となるステージⅢの訓練を把握することがポイントとなる。
混同注意
BrunnstromステージⅢは共同運動パターンが最も強く出現するステージであり、随意運動が困難なステージⅡや、随意運動は可能だが分離運動が困難なステージⅣとの区別が重要である。ステージⅢでは共同運動を利用した運動も訓練に取り入れられるが、分離運動を促進する訓練の導入も考慮される。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出題された場合、症例のBrunnstromステージ、特に上肢と手指のステージを詳細に確認し、そのステージに最も適した運動学的特性を考慮した訓練内容であるかを判断する。ステージⅢでは共同運動パターンからの分離を促す訓練が重要であることを念頭に置く。
関連知識
Brunnstromステージは、脳卒中後の運動麻痺の回復段階を評価する指標であり、ステージⅠからⅥまである。ステージⅢは共同運動パターンが強く出現し、随意的な運動はできるが、共同運動パターンに囚われやすい状態である。上肢屈筋共同運動パターンは肩甲骨挙上・内転、肩関節外転・外旋、肘関節屈曲、前腕回外、手関節・手指屈曲。上肢伸筋共同運動パターンは肩甲骨下制・外転、肩関節内転・内旋、肘関節伸展、前腕回内、手関節・手指伸展である。