65歳の女性。専業主婦。右利き。上肢の振戦のため心配した夫に伴われて来院した。Hoehn&Yahrの重症度分類ステージⅠ。入院後に内服投与が開始され、2週後退院となった。退院時に安静時振戦は消失したが、右下肢の固縮および右すり足を認めた。片脚立位で右が10秒、左が20秒。ADLは自立しているが、箸の使用と書字に時間がかかる。退院後のプログラム内容で適切でないのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
フレンケル体操は、主に運動失調に対する協調運動訓練として用いられます。パーキンソン病の主要症状は固縮、振戦、無動、姿勢反射障害であり、運動失調は主症状ではありません。したがって、パーキンソン病の退院後プログラムとしてフレンケル体操を優先的に選択することは適切ではないと判断されます。
選択肢ごとの解説
- 1. パーキンソン病の患者において、散歩は全身運動となり、心肺機能の維持や下肢筋力の向上、歩行能力の維持・改善に繋がるため、適切なリハビリテーション内容です。正しくは:散歩は全身運動として有効であり、特に屋外での活動は気分転換にもなるため推奨されます。選びやすい理由:症状が軽度であるため、散歩のような一般的な運動が十分ではないと感じるかもしれませんが、日常生活に取り入れやすい運動として重要です。混同注意:特定の高度な運動療法と混同し、散歩の効果を過小評価する可能性があります。
- 2. 太極拳はバランス能力の向上、姿勢の安定、協調性の改善に効果があり、特にパーキンソン病患者の転倒予防や身体機能維持に有用な運動として推奨されます。正しくは:太極拳はバランス、協調性、姿勢制御に優れており、パーキンソン病患者に適した運動です。選びやすい理由:複雑な動きに見えるかもしれませんが、ゆっくりとした動きが特徴で、身体への負担が少ないため、導入しやすい運動です。混同注意:一般的な運動とは異なるため、効果があるのか疑問に感じるかもしれませんが、研究でもその有効性が示されています。
- 3. 正解。フレンケル体操は主に脊髄小脳変性症や多発性硬化症などによる運動失調(協調運動障害)のリハビリテーションに用いられます。本症例はパーキンソン病であり、主に固縮、振戦、動作緩慢、姿勢反射障害が症状の中心であり、運動失調は主要な症状ではありません。したがって、フレンケル体操は本症例の主たる症状への対応として適切ではありません。正しくは:パーキンソン病患者に対しては、固縮や動作緩慢、姿勢保持能力の改善を目的とした体操(例: リズム運動、バランス運動、伸張運動)がより適切です。選びやすい理由:体操の一種であるため、何らかの運動に良いのではないかと思うかもしれませんが、その適用疾患を理解していないと誤って選択してしまう可能性があります。混同注意:様々な体操療法がある中で、各体操療法の適応疾患や目的を混同しやすいです。フレンケル体操は小脳性運動失調に有効な療法です。
- 4. 箸の使用や書字に時間がかかるという記述があり、これは手指の巧緻運動障害や固縮を示唆しています。手内筋の伸張運動は、固縮の軽減や手指の可動域・協調性の改善に繋がり、日常生活動作の質を高める上で有効なアプローチです。正しくは:手指の機能改善を目的とした伸張運動は、巧緻動作の困難を抱える患者にとって重要なリハビリテーションです。選びやすい理由:全身的な運動が強調されがちですが、ADLの自立度を保つ上で手指の機能維持・改善は非常に重要です。混同注意:全身運動のみに焦点を当て、手指のような局所の介入の重要性を見落とす可能性があります。
- 5. 床に置かれた物品の整理は、自宅環境の転倒リスクを低減させるための環境調整の一環として非常に重要です。パーキンソン病患者は姿勢反射障害や固縮、すり足歩行などにより転倒リスクが高まるため、安全な生活環境を整備することはリハビリテーションの重要な要素です。正しくは:安全な生活環境の整備は、転倒予防の観点からパーキンソン病患者の生活指導において不可欠です。選びやすい理由:直接的な身体訓練ではないため、リハビリテーションではないと考えるかもしれませんが、作業療法における環境調整は重要な介入です。混同注意:運動療法や物理療法といった直接的な介入と混同し、環境調整の重要性を見落とす可能性があります。
国試ポイント
パーキンソン病の症状とその重症度分類(Hoehn&Yahr)を理解し、それぞれの症状に適したリハビリテーション方法を選定できるかが問われています。特に、様々な運動療法の適用疾患や目的を正確に把握している必要があります。
混同注意
様々なリハビリテーション体操や運動療法があり、それぞれの適応疾患や目的を混同しやすい点が狙われやすいです。特にフレンケル体操と他の協調運動やバランス訓練を混同する可能性があります。
次に同じ論点が出たら
今後、他の神経疾患(例:脳卒中、脊髄損傷、小脳疾患)の症例と各リハビリテーション手法の組み合わせについて問われる可能性があります。疾患ごとの主症状と、それに対応するリハビリテーション技術の関連性を理解しておくことが重要です。
関連知識
パーキンソン病の四大症状(安静時振戦、固縮、無動/動作緩慢、姿勢反射障害)。Hoehn&Yahrの重症度分類。パーキンソン病のリハビリテーションとして推奨される運動(例:LSVT BIG、歩行訓練、バランス訓練、有酸素運動)。フレンケル体操の適応疾患(脊髄小脳変性症、多発性硬化症など)。