32歳の女性。統合失調症。1年前から小売店で週3日のパート勤務をしているが、最近、同僚から嫌がらせを受けているという被害的な訴えが増え、主治医の指示で週2日、精神科デイケアを利用することになった。この患者の治療目的に合ったプログラムとして適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
統合失調症患者の被害的な訴えや職場での対人関係の困難は、社会認知機能の障害と密接に関連しています。SCITは社会認知(感情知覚、社会的知識の利用、帰属スタイルなど)の改善を目指すプログラムであり、他者の意図や行動を誤って解釈する傾向を修正し、社会的な状況に適切に対応する能力を高めることを目的としています。この患者が職場での同僚からの「嫌がらせ」と感じている状況に対し、SCITは自身の解釈を修正し、より適応的な対人関係を築くための重要なスキルを提供します。これにより、就労継続と生活の質の向上が期待できます。
選択肢ごとの解説
- 1. 重度の精神疾患を持ち、地域での生活維持に困難を抱える患者に対し、多職種チームが包括的かつ集中的な支援を提供するプログラムです。本患者はすでにパート勤務しており、より特定の問題(対人関係、被害妄想)への介入が求められています。正しくは:地域での生活機能が著しく低下し、頻繁な入院を繰り返すなど、既存のサービスでは対応が困難な状態の患者に適しています。選びやすい理由:地域で生活しながら治療を受けるという点で関連性があるように見えるかもしれませんが、本患者の現在の課題(対人関係の困難)に対しては、より専門的な介入が可能なプログラムが優先されます。混同注意:一般的な地域支援プログラムと混同しやすいですが、ACTは特に重症度が高く、既存のサービスでは対応が難しい患者に対する集中的な支援に特化しています。
- 2. 精神疾患を持つ人が競争的な職場で仕事を見つけ、維持できるよう支援する、エビデンスに基づいた雇用支援モデルです。この患者はすでに仕事に就いており、職場での対人関係や被害的な訴えへの対応が主な課題であるため、直接的な雇用獲得・維持支援プログラムとは異なります。正しくは:新たな就職を目指す、あるいは就職後の職場定着支援が必要な患者に適しています。本患者はすでに仕事についているため、現在の主要な課題とは合致しません。選びやすい理由:精神疾患を持つ人の就労支援であるため、就労中の患者にも関連があるように見えますが、IPSの主要な目的は就職支援と職場定着の初期段階にあります。混同注意:一般的な就労支援と混同しやすいですが、IPSは特に競争的雇用への早期就職と、精神医療との統合された支援が特徴です。
- 3. 認知機能の改善を目的としたプログラムで、注意、記憶、実行機能などを対象とします。統合失調症患者の認知機能障害に効果が期待されますが、この患者の現在の具体的な問題(被害的な訴え、対人関係の困難)には、より直接的に社会認知をターゲットにしたプログラムが適切です。正しくは:認知機能全般の改善を通じて、日常生活や社会生活の質を高めることを目指すプログラムです。本患者の「被害的な訴え」や「同僚からの嫌がらせ」といった社会的な誤解釈を改善するには、より特化した社会認知トレーニングが必要です。選びやすい理由:統合失調症患者の認知機能改善は重要であるため、選択肢として魅力的ですが、このケースでは「同僚からの嫌がらせ」という具体的な対人関係の問題が提示されています。混同注意:認知行動療法(CBT)や他の認知リハビリテーションプログラムと混同しやすいですが、NEARは特に神経心理学的な観点からの認知機能改善に焦点を当てています。
- 4. 正解。統合失調症患者の社会認知機能(感情の認識、他者の意図理解、社会的スキルの適用など)の改善に特化したグループベースのプログラムです。患者が同僚からの嫌がらせという被害的な訴えを抱えている状況に対し、他者の感情や意図を正確に理解し、自身の帰属スタイルを修正するスキルを向上させることは、職場での適応を維持するために非常に有効です。
- 5. 主に自閉スペクトラム症の児童を対象とした構造化された教育的アプローチであり、統合失調症の成人患者の治療プログラムとしては適切ではありません。正しくは:自閉スペクトラム症の患者、特に小児期からの発達障害を持つ人々のためのプログラムです。選びやすい理由:発達障害の分野で知られるプログラムであるため、精神科領域の他の疾患と混同して選択してしまう可能性があります。混同注意:他の認知機能改善やコミュニケーションスキル向上を目的としたプログラムと混同しやすいですが、TEACCHは自閉スペクトラム症に特化しており、そのアプローチも構造化された環境整備が中心です。
国試ポイント
精神疾患を持つ患者の症状や生活背景から、最適な治療プログラムを選択できる知識が問われています。特に、統合失調症患者の社会認知機能障害が日常生活、特に就労場面での問題にどう影響するか、そしてそれに対する具体的な介入方法(プログラム名とその特徴)を理解しているかが重要です。それぞれのプログラムがどのような目的で、どのような患者に適応されるかを正確に把握しておく必要があります。
混同注意
ACTは重度ケースの地域生活支援、IPSは就労獲得・定着支援、NEARは一般的な認知機能改善と、それぞれ目的が異なるため、本患者の具体的な課題と合致しない点を明確に理解する必要があります。特にIPSは就労支援全般と混同されやすいですが、IPSは「新しい仕事を見つけること」と「見つけた仕事を継続することの初期段階」に重点を置いているのに対し、本患者はすでに就労中であり、仕事上での対人関係のトラブル解決が主眼です。NEARは認知機能障害全体を対象としますが、SCITは「社会認知」という特定の認知機能に特化しており、より具体的な対人関係の問題解決に焦点を当てています。
次に同じ論点が出たら
次に類似の論点が出題された場合、患者の「現在の具体的な課題」と「プログラムの主要な目的・ターゲット」がどれだけ合致しているかを注意深く評価する。特に、就労中であっても、その就労を阻害する要因が何であるか(例:症状による対人関係の誤解釈、認知機能の低下、職場環境への不適応)を見極め、それに応じたプログラムを選択する。各プログラムの名称と略称、そしてその主要な適応疾患や目的をセットで覚える。
関連知識
統合失調症における社会認知機能障害の概念とそれが日常生活に与える影響。精神科リハビリテーションにおける各種プログラム(認知機能リハビリテーション、就労支援、地域生活支援など)の目的と適応。SCITの具体的な構成要素(感情知覚訓練、帰属スタイル訓練、メンタライゼーション訓練など)。精神科デイケアの役割と、そこで提供されるプログラムの種類。