34歳の女性。掃除と整理整頓が趣味というほど几帳面な性格である。職場での昇進によって仕事量が増え、そのため夜遅くまで残り、懸命にこなすように努力していた。しばらくして、抑うつ状態になり、早朝覚醒、体重減少などの身体症状も出現し、精神科を受診した。抑うつ気分は朝方に強く、夕方に軽くなる傾向が認められる。この患者でみられやすいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
この患者は、几帳面で責任感が強く、職場での昇進に伴う業務量の増加に懸命に対応しようと努力した結果、抑うつ状態に陥っています。これは、メランコリー型うつ病に特徴的な性格傾向(メランコリー親和型性格:秩序、勤勉、良心的、完璧主義、義務感が強いなど)を持つ人が、ストレスにより発症しやすいことを示唆しています。このような性格の人は、他者からの期待に応えようとし、依頼を断ることが苦手であるため、過度な負担を抱え込みやすい傾向があります。したがって、「他人からの依頼を断れない」という特徴は、この患者の背景と抑うつ状態の発症機序を考慮すると、最も適切であると言えます。
選択肢ごとの解説
- 1. うつ病患者は思考の制止(思考がまとまらない、進まない)を伴うことが多く、言葉数が減ったり、発語が遅くなったりすることが一般的です。まわりくどい説明は、むしろ躁状態や強迫性障害などに見られることがあります。正しくは:説明が簡潔になったり、言葉数が少なくなったりする。選びやすい理由:精神的な不調があるとコミュニケーションに変化が出るという点では共通しているため、選択肢として気になるかもしれない。混同注意:躁状態の観念奔逸による多弁や強迫性障害の詳述性と混同する可能性がある。
- 2. 正解。几帳面で真面目、昇進による仕事量の増加にもかかわらず努力し続ける性格は、責任感が強く、他者からの期待に応えようとする傾向が強いことを示唆します。これは、ストレスを抱え込みやすく、断れない性格(依存性パーソナリティ障害の傾向や、メランコリー型うつ病の性格素因)と関連があり、うつ病の発症要因や増悪因子となりやすい特徴です。
- 3. 早朝覚醒は抑うつ状態の身体症状の一つですが、抑うつ気分が朝に強く、活動意欲が低下しているため、早朝から友人に電話をかけるような積極的な行動は考えにくいです。むしろ、引きこもりがちになります。正しくは:早朝覚醒するが、友人への連絡を控える。選びやすい理由:早朝覚醒という情報から、何らかの行動に結びつけてしまう可能性がある。混同注意:躁状態の多動性や社会性の亢進と混同する。
- 4. 几帳面で努力家、仕事量が増えても懸命にこなそうとする性格は、周囲からの評価や期待を強く意識し、それに応えようとする傾向が強いことを示します。自己評価の低下も抑うつ状態の特徴であり、他者の評価を過度に気にする状態が多いです。正しくは:周囲からの評価を過度に気にする。選びやすい理由:うつ病患者は自己肯定感が低いので、他者の評価を気にしないと誤解するかもしれない。しかし、実際は自己評価が低いために他者の評価を強く求めたり、評価が悪いのではないかと不安になったりする。混同注意:自己肯定感の低さから他者への関心が薄れると誤解したり、統合失調症の陰性症状と混同したりする。
- 5. 抑うつ状態では、意欲の低下や思考の制止がみられ、衝動的に高価な買い物をしたり、不要なものを大量に購入したりする行動は考えにくいです。このような行動は、むしろ躁状態や衝動制御障害で観察されます。正しくは:意欲が低下し、買い物に行くことすら億劫になる。選びやすい理由:精神状態の変化が行動に影響を与えるという漠然とした考えから選択肢として浮上するかもしれない。混同注意:躁状態の浪費や衝動買いと混同する。
国試ポイント
抑うつ状態、特にメランコリー型うつ病の臨床像や、その発症に関連する性格傾向(メランコリー親和型性格)を理解しているかどうかが問われています。身体症状だけでなく、心理的・行動的特徴を正確に把握している必要があります。
混同注意
抑うつ状態の症状(早朝覚醒など)と、その状態から派生する行動や、他の精神疾患の症状(躁状態、強迫性障害など)が混同されやすいです。特に、早朝覚醒があるからといって活動的になるわけではない点が誤解を生みやすいポイントです。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、まず患者の性格傾向と抑うつ状態の症状(特に日内変動)を結びつけ、メランコリー型うつ病の臨床像を想起します。その上で、各選択肢が抑うつ状態の具体的な症状や行動パターンと合致するか、あるいは他の精神疾患の症状と混同していないかを判断します。
関連知識
メランコリー親和型性格(完璧主義、几帳面、責任感が強い、真面目、義理堅い、他者配慮、目標志向など)。メランコリー型うつ病の診断基準(DSM-5など):興味・喜びの減退、体重減少/増加、不眠/過眠、精神運動焦燥/制止、疲労感、無価値感/罪悪感、集中力低下、自殺念慮。日内変動(朝悪化、夕方改善)。