高次脳機能障害と脳の障害部位との組合せで正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
同じことを繰り返し質問するのは、新しい情報を記憶できない前向性健忘の症状であり、これは海馬を含む内側側頭葉の損傷(記憶の中枢)と深く関連しています。側頭葉は記憶機能において重要な役割を担います。
選択肢ごとの解説
- 1. 顔の片側の髭剃り忘れは、身体の半側空間無視の典型的な症状であり、これは主に右半球の頭頂葉(特に劣位頭頂小葉)の損傷によって引き起こされます。後頭葉は視覚情報処理に深く関与しています。正しくは:顔の左側の髭剃り忘れがある場合。関連する障害部位:右頭頂葉選びやすい理由:後頭葉も視覚に関わるため、見落としと関連付けて選択してしまう可能性がある。混同注意:半側空間無視と単なる視野障害や視覚失認との混同。
- 2. 新しい情報の記憶(特に陳述記憶やエピソード記憶)の障害は、海馬を含む内側側頭葉の損傷と深く関連しています。前頭葉は主に実行機能、計画、判断、注意、作業記憶などに関与します。正しくは:新しい道順を記憶できない場合。関連する障害部位:内側側頭葉選びやすい理由:前頭葉が記憶の一部(作業記憶など)に関わるため、全体的な記憶障害と混同してしまう可能性がある。混同注意:作業記憶(前頭葉)と長期記憶(側頭葉内側部)との混同。空間記憶と陳述記憶の混同。
- 3. 正解。新しいことを覚えられない(前向性健忘)ために、直前に聞いた内容も忘れてしまい、同じ質問を繰り返す症状は、海馬を含む内側側頭葉の損傷によって引き起こされる記憶障害の典型です。選びやすい理由:記憶障害の代表的な症状であり、側頭葉(特に海馬)との関連は教科書的な知識であるため、比較的選びやすい。混同注意:繰り返し聞く行動が単なる注意散漫や固執と誤解されることがあるが、根本は記憶障害である。
- 4. 物事を順序立てて計画し、実行する機能(実行機能)の障害は、主に前頭葉(特に前頭前野)の損傷によって引き起こされます。後頭葉は視覚情報処理が主な役割です。正しくは:物事を計画通りに実行するのが困難な場合。関連する障害部位:前頭葉選びやすい理由:高次脳機能障害の症状と脳部位の組み合わせは多岐にわたるため、他の部位の機能と混同しやすい。混同注意:実行機能障害と後頭葉の役割(視覚野)との混同。視覚的な情報の処理が困難な場合と、行動の計画が困難な場合を混同する。
- 5. 視覚情報を認識できていないのに「見えている」と主張する、あるいはそのように振る舞う現象は「アントン症候群」と呼ばれ、両側性の後頭葉皮質の損傷(特に一次視覚野を含む広範な損傷)によって引き起こされることが多いです。頭頂葉は空間認知や身体イメージ、注意などに関与しますが、失明に対する病識の欠如とは直接関連が薄いです。正しくは:視覚的な情報を受け取れていないにもかかわらず、見えているかのように振る舞う場合。関連する障害部位:後頭葉選びやすい理由:半側空間無視や身体失認など、頭頂葉の病識欠如と関連する症状があるため、選択肢として魅力的である。混同注意:アントン症候群(後頭葉)と、半側空間無視における病識の欠如や身体失認(頭頂葉)との混同。純粋な視覚失認とも異なる。
国試ポイント
高次脳機能障害の主要な症状と、その原因となる脳の各部位との正確な対応関係を問う問題です。特に、半側空間無視、記憶障害、実行機能障害、失認といった代表的な症状と、頭頂葉、側頭葉、前頭葉、後頭葉といった主要な脳部位の機能を正しく理解しているかどうかが問われます。
混同注意
各脳部位が担当する機能が多岐にわたるため、異なる症状と部位の組み合わせを混同しやすい。特に、記憶障害と前頭葉の実行機能、視覚失認と半側空間無視、病識の欠如と視野障害などが混同されやすい点です。
次に同じ論点が出たら
今後も高次脳機能障害の臨床症状と脳の解剖学的な部位の関連性は頻出する。特に『記憶』『注意』『実行機能』『視空間認知』『失語』『失行』『失認』といった主要な高次脳機能と、それぞれの障害部位(前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉、脳梁など)を結びつける知識の正確さが問われる。各症状がどの機能を反映しているのか、またその機能が脳のどの領域と関連が深いのかを具体例とともに理解しているかを確認する。
関連知識
前頭葉:実行機能障害、パーソナリティ変化、注意障害。側頭葉:記憶障害(海馬)、失語症(優位半球)、聴覚失認。頭頂葉:半側空間無視、失行、身体失認、ゲルストマン症候群。後頭葉:皮質盲、視覚失認、アントン症候群。