30歳の女性。右上腕切断標準断端。上腕義手は差し込み式ソケット、8字ハーネス、複式コントロールケーブルシステム、随意開き式能動フックで構成されている。適合判定の際、肘90度屈曲位で手先具が完全には開かなかった。原因で最も考えられるのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
上腕義手の随意開閉型能動フックの開閉は、肩甲帯の屈曲・外転運動によるケーブルの張力で制御されます。肘を90度曲げた状態では、すでに上腕の屈曲運動が最大近くに達しているため、肩甲帯の十分な筋力がないと、フックを開くための十分なケーブル張力を発生させることができません。筋力不足はケーブル動作に直接影響し、先端器具の完全な開閉を妨げます。
選択肢ごとの解説
- 1. フック部分のゴムバンドはフックの閉鎖力(把持力)に関与しますが、フックの開閉度には直接関係しません。ゴムバンドが緩いと、フックを閉じる力が弱くなりますが、開かない原因にはなりません。正しくは:フックの把持力が弱い場合に関係します。選びやすい理由:フックに関連する部品であるため、義手の機能不全の原因として考えやすいですが、開閉とは別の機能です。混同注意:フックの開閉機能と把持機能。
- 2. ケーブルの保護管(ハウジング)の長さが短いと、ケーブルに最初から張力がかかりすぎているか、可動域が制限されてフックが全く開かないか、または常に開いた状態になる可能性があります。しかし、肘を90度曲げた特定の姿勢で『完全に開かない』という状況には直接結びつきにくいです。もし短すぎると、全可動域でフックの開閉が制限されます。正しくは:ケーブルのハウジング長が不適切である場合、フックが全く開かない、常に開く、または特定の位置で引っかかるなどの問題が生じますが、特定の肘角度での開閉困難は筋力不足の可能性が高いです。選びやすい理由:ケーブル機構義手であるため、ケーブル自体の問題と想像しやすいため。混同注意:ケーブルの機械的調整と、ユーザーの身体機能による操作性の限界。
- 3. 正解。正答。上腕義手の随意開閉型フックは、肩甲帯の運動(特に肩甲骨の引き離しや上腕の屈曲)によりケーブルを引っ張り、開きます。肘を90度曲げた状態では、上腕の屈曲運動によるケーブル張力の寄与が限界に近づくため、残存肢の肩甲帯筋力が不足していると、フックを完全に開くのに必要な追加の張力を発生させることが困難になります。選びやすい理由:義手自体の調整の問題と勘違いしやすいですが、身体機能の評価も重要です。混同注意:義手部品の調整不良と、患者の身体能力不足。
- 4. 前腕を支える部分(ソケット)のトリミングが不適切だと、ソケットの圧迫や不快感、残存肢の可動域制限が生じる可能性があります。しかし、これはフックの開閉メカニズム(ケーブル張力)に直接影響を与えるものではありません。主にソケットの適合感や残存肢の皮膚状態に関わります。正しくは:トリミングの不適切は、装着感や残存肢の皮膚トラブル、可動域制限を引き起こします。選びやすい理由:ソケットの適合は義手全般の重要な要素であるため、原因として考えやすいですが、フックの開閉動作とは直接関係が薄いです。混同注意:ソケットの適合性と、ケーブル制御機構の機能不全。
- 5. 切断された腕の肩関節の回旋運動範囲の制限は、義手の操作そのものに影響を与える可能性はありますが、フックの開閉は主に肩関節の屈曲・外転および肩甲帯の運動によって行われるため、回旋制限が直接的にフックの『完全に開かない』原因となる可能性は低いです。特に随意開閉型フックの主要な操作は肩甲帯の引き離し運動です。正しくは:肩関節の屈曲・外転可動域の制限であれば、フックの開閉に影響する可能性があります。回旋制限は、義手操作全般や日常生活動作に影響する可能性があります。選びやすい理由:関節可動域制限は義手操作に影響するため、原因として考えやすいですが、フックの開閉動作の主要な駆動源ではありません。混同注意:特定の関節可動域と、フック操作に必要な主要な運動の混同。
国試ポイント
上肢義手の操作原理と、各構成要素の機能、特に肩甲帯の運動とケーブル制御による先端器具の開閉メカニズムを理解することが重要です。
混同注意
ケーブルの機械的な問題(ハウジング長など)と、患者自身の身体機能(筋力、ROM)による操作性の問題を混同しやすい。本事例では特定の姿勢での操作困難であるため、単なる機械的問題よりは身体機能の関与が強く示唆されます。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、特定の姿勢や動作での義手操作の困難さが見られたら、まず操作に必要な筋力や可動域が十分かを検討し、次に義手自体の機械的な調整の問題を疑います。
関連知識
義手ユーザーの適合評価では、特定の姿勢や動作下での先端器具の機能評価が必須です。特に上腕義手では、肩関節の可動域と肩甲帯の筋力が操作性に大きく影響します。ケーブル制御義手の基本的な操作は、肩甲骨の外転・内転や上腕の屈曲運動を利用してケーブルを引っ張り、先端器具(フックやハンド)を開閉するものです。