5歳の男児。重症心身障害児施設に入所している。四肢に強い筋緊張があり、重度の側弯症もある。言語による意思表示は困難であり、食事は経管栄養である。作業療法士がこの児に対して最初にすべき日常生活の基盤づくりで最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
重症心身障害児は、重度の筋緊張や側弯症を伴うことが多く、適切な姿勢保持が困難である。座位ポジショニングは、身体の安定性を確保し、変形を予防・改善するだけでなく、呼吸機能の改善や消化器系の負担軽減、外部刺激への応答性向上、精神的な安定にも寄与するため、日常生活の基盤として最も重要である。
選択肢ごとの解説
- 1. 経管栄養の児にとって、飲水訓練は誤嚥のリスクを伴い、嚥下機能の評価が先決である。座位ポジショニングによる安定した姿勢の確保は、摂食嚥下機能訓練の前提となる。正しくは:座位ポジショニングにより身体の安定が確保され、嚥下機能の評価と訓練が進んだ段階で、医師や言語聴覚士の指示のもとで飲水訓練を検討する。選びやすい理由:経管栄養の児に対し、経口摂取への移行を目的とした訓練は重要であると感じやすいが、その前提となる身体機能の安定が不足しているため不適切である。混同注意:摂食嚥下訓練の重要性。ただし、摂食嚥下訓練には安全な姿勢と嚥下機能の評価が必須である。
- 2. 重度の筋緊張や側弯症があり、言語による意思表示も困難な重症心身障害児に、いきなり複雑な課題の自力遂行を求めることは困難であり、児の負担が大きい。まずは身体的な基盤を整える必要がある。正しくは:まずは座位ポジショニング等で身体の安定を図り、苦痛の軽減と基本的な生活動作の基盤を構築した上で、児の能力に応じた単純な課題から段階的に自力遂行を促す。選びやすい理由:自立支援は作業療法士の重要な役割であるため、自力遂行を促すことは正しいアプローチに見えるが、この症例では時期尚早である。混同注意:ADL(日常生活動作)訓練の重要性。しかし、ADL訓練には身体の安定が前提となる。
- 3. 正解。重度の筋緊張や側弯症があるため、適切な座位ポジショニングは身体の安定性を確保し、変形の進行予防、呼吸・循環機能の改善、消化機能の促進、外部環境への関与を促すための日常生活の基盤となる。これは、他のあらゆる活動の前提となるため、最初にすべきこととして最も適切である。選びやすい理由:重症心身障害児のケアにおいて、身体の安定と機能維持は最優先事項であるため、適切な選択肢である。混同注意:他の機能訓練の重要性。しかし、ポジショニングはそれらすべての土台となる。
- 4. 言語による意思表示は困難であり、言語訓練の必要性はあるものの、四肢の筋緊張や重度の側弯症があるため、まず身体の安定した姿勢を確保することがコミュニケーションやその他の訓練の前提となる。言語訓練は作業療法士の専門外であり、言語聴覚士の専門領域である。正しくは:座位ポジショニングにより安定した姿勢を確保した上で、言語聴覚士と連携し、児の能力に応じた意思疎通手段(視線入力、ジェスチャーなど)の検討や訓練を行う。選びやすい理由:コミュニケーション能力の向上は重症心身障害児にとって重要であるため、言語訓練は有効なアプローチに見えるが、身体基盤の安定が先行すべきである。混同注意:コミュニケーション能力向上の重要性。しかし、訓練の前提条件と多職種連携が考慮されていない。
- 5. 他児との交流を通じて社会性を養うことは重要であるが、重度の筋緊張や側弯症があり、言語による意思表示も困難な児にとって、まずは身体の安定を確保し、苦痛を軽減することが最優先である。安定した姿勢なくして他児との交流は困難であり、適切な環境設定も必要となる。正しくは:座位ポジショニングにより身体の安定を図り、外部環境への適応力を高めた上で、児の能力や興味に応じた他児との交流機会を段階的に提供する。選びやすい理由:社会性の育成は発達上重要であるため、魅力的な選択肢に見えるが、この症例においては身体基盤の構築が先行すべきである。混同注意:社会性育成の重要性。しかし、活動への参加には身体的安定が不可欠である。
国試ポイント
重症心身障害児の作業療法におけるアプローチの優先順位を理解する。特に、安定した姿勢保持が活動の基盤となることを把握することが重要である。
混同注意
個別機能訓練と生活の基盤となる支援。重症心身障害児に対するアプローチは、まず身体の安定と健康維持を最優先し、その上で機能訓練や社会性育成に進むという段階的な視点が求められる。
次に同じ論点が出たら
重症心身障害児への介入問題では、まず身体的な安定性や生命維持、苦痛の軽減といった基本的なニーズが満たされているかを判断し、最も優先すべき介入を選択する。
関連知識
重症心身障害児のポジショニングの目的(変形予防、呼吸循環機能改善、消化機能改善、褥瘡予防、外部環境への関与促進)、ポジショニングの種類(座位、臥位など)、ポジショニングに使用する補助具(シーティング、クッション、装具など)。