18歳の男子。2年前までは成績優秀で友人も多かった。1年前から口数が減り徐々に欠席が増え、半年前から不登校となった。「隣人が見張っている」と言いだし自室のカーテンを一日中閉めたままにしている。1か月前から自室に引きこもり、「自分の考えが人に伝わってしまう」、「誰もいないのに自分の悪口が聞こえてくる」などと言うようになった。2週前から入浴をしていない。この患者の症状で誤っているのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
行為心迫は、自分の行動が他者によって強制されているという妄想であり、患者の「自分の考えが人に伝わってしまう」「誰もいないのに自分の悪口が聞こえてくる」「隣人が見張っている」といった記述とは合致しません。むしろ、患者は自室に引きこもり、入浴もせず、口数も減っていることから、行動の自発性の低下や意欲の減退、対人交流の回避といった無為自閉の症状が見られます。したがって、提示された症状の中で行為心迫は誤りです。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者は「誰もいないのに自分の悪口が聞こえてくる」と発言しており、これは実際に存在しない音声をあたかも現実のように知覚する幻聴(ここでは幻声)に該当します。正しくは:これは幻聴の典型的な症状です。選びやすい理由:幻聴は統合失調症でよく見られる症状であるため、誤りとは考えにくいです。混同注意:幻覚全般と混同しやすいですが、幻聴はその中でも聴覚性の幻覚です。
- 2. 正解。行為心迫は、行為が自分のものではなく、他者によって強制されていると感じる妄想です。この患者の症状記述には、行為が他者に強制されているという内容は含まれていません。むしろ、自室に引きこもり、入浴をしないなど、行動が自発性に欠ける無為の状態が見られます。選びやすい理由:妄想的な内容が複数あるため、これも妄想の一種かと錯覚しやすいかもしれません。混同注意:思考伝播や被害妄想などの他の妄想症状と混同しやすいですが、行為心迫は『行為の主体が他者である』という点が特徴です。
- 3. 患者は「自分の考えが人に伝わってしまう」と述べており、これは自分の思考が他者に知られてしまっていると感じる思考伝播(思考盗聴、思考広まり)に該当します。正しくは:これは思考伝播の典型的な症状です。選びやすい理由:思考に関する妄想は複数あるため、これが正しいかどうか迷うかもしれませんが、具体的な表現から思考伝播であることが明確です。混同注意:思考奪取(思考が抜き取られる)や思考挿入(他者の考えが自分の頭に入ってくる)と混同しやすいです。
- 4. 患者は「隣人が見張っている」と発言しており、これは自身が他人から害を加えられる、監視されているといった内容を確信している被害妄想に該当します。正しくは:これは被害妄想の典型的な症状です。選びやすい理由:妄想の中でも非常に一般的で、統合失調症の代表的な症状の一つであるため、誤りとは考えにくいです。混同注意:関係妄想(周囲の出来事が自分に関係していると感じる)や注察妄想(他者に見られていると感じる)と区別が難しい場合がありますが、ここでの「見張っている」は明確な被害妄想です。
- 5. 患者は「口数が減り」「徐々に欠席が増え」「半年前から不登校」「自室に引きこもり」「2週前から入浴をしていない」といった状態であり、これらは活動性の低下や自発性の喪失、他人との交流を避ける傾向を示す無為自閉の症状に該当します。正しくは:これは無為自閉の典型的な症状です。選びやすい理由:これは陽性症状ではなく、陰性症状に分類されますが、患者の状態をよく表しているため、誤りとは考えにくいです。混同注意:抑うつ症状による引きこもりや意欲低下と混同しやすいですが、このケースでは妄想や幻覚を伴っているため、統合失調症の陰性症状としての無為自閉が適切です。
国試ポイント
統合失調症の基本的な精神症状(陽性症状、陰性症状)の種類と、それぞれの具体的な内容を正確に識別できるかどうかが問われています。特に、妄想の内容を細分化し、適切な用語と結びつける知識が必要です。
混同注意
様々な妄想症状(被害妄想、関係妄想、注察妄想、思考伝播、思考奪取、思考挿入、行為心迫など)の定義が混同されやすいです。また、幻覚と妄想の違い、陽性症状と陰性症状の分類もよく問われます。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の問題が出た際には、個々の精神症状の具体的な内容記述から、それがどの症状(特に妄想の種類)に当てはまるかを正確に判断できるか、陽性症状と陰性症状を区別できるかがポイントになります。症状が複数提示された場合に、そのうちの一つだけが当てはまらない、という形式の問題にも注意が必要です。
関連知識
統合失調症の診断基準(DSM-5やICD-10/11)、各症状の臨床的特徴、治療(薬物療法、精神科リハビリテーション、作業療法)の基礎知識。