70歳の女性。Parkinson病。Hoehn & Yahrの重症度分類ステージⅢ。自宅で頻回に転倒し、日常生活に支障をきたすようになった。この患者に対する指導として適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
パーキンソン病による歩行障害、特にすくみ足や小刻み歩行に対しては、外部からの聴覚刺激(メトロノーム、音楽など)を用いてリズムに合わせて歩く「聴覚キューイング」が非常に有効です。これにより、歩行のリズムが整い、歩幅が広がり、転倒のリスクを軽減できることが多くの研究で示されています。Hoehn&YahrステージⅢでは、まだ自立歩行が可能であるため、このような歩行練習がQOL向上に直結します。
選択肢ごとの解説
- 1. パーキンソン病患者、特に方向転換時には、小刻み歩行や突進現象が悪化しやすく、直線的で素早い動きはバランスを崩し転倒リスクを高めます。正しくは:方向転換時は、大股でゆっくりと円弧を描くように、または一旦止まってから小さな歩幅で向きを変える「円弧歩行」や「足踏み方向転換」を指導する。選びやすい理由:一般的な歩行訓練では、効率的な動きとして直線的な移動が強調されることがありますが、パーキンソン病の特性には合致しません。混同注意:健常者向けの運動指導や、疾患の特性を考慮しない一般的な動作指導と混同しやすい。
- 2. パーキンソン病患者は、体幹の屈曲位(前かがみ)姿勢を取りやすく、これは姿勢反射障害や重心の前方移動により、突進歩行や転倒のリスクを高めます。正しくは:歩行中は、体幹を伸展させ、可能な限り上体を起こした姿勢を意識するように指導する。選びやすい理由:パーキンソン病の患者によく見られる姿勢であるため、現在の姿勢を維持させるという考えから選んでしまう可能性があります。混同注意:パーキンソン病の症状である「前傾姿勢」と、正しい姿勢指導を混同しやすい。
- 3. Hoehn&YahrステージⅢの患者は、まだ自力歩行が可能であり、生活活動の維持のために歩行能力の改善と転倒予防が優先されます。車椅子の指導は、歩行が困難になった場合の選択肢であり、この段階では適切ではありません。正しくは:この段階では、歩行補助具(歩行器など)の使用や歩行能力向上のための運動指導を優先する。選びやすい理由:頻繁な転倒は生活に支障をきたしているため、安全性を確保するための手段として車椅子を検討してしまう可能性があります。混同注意:疾患の進行度に応じた介入段階の判断と、安全確保の優先度を混同しやすい。ステージⅣ以降の介入内容と混同する可能性もある。
- 4. 正解。パーキンソン病患者の歩行障害(すくみ足、小刻み歩行など)に対して、聴覚的キューイング(メトロノーム、音楽など)を用いてリズムを意識させることは、運動の開始・維持、歩幅の拡大、歩行速度の改善に有効であり、転倒予防につながります。正しくは:これは適切な指導であるため修正は不要です。
- 5. 足関節に重錘バンドを装着すると、下肢への負荷が増大し、バランス保持が困難になり転倒リスクが増加します。また、パーキンソン病による運動緩慢や筋固縮が悪化する可能性もあります。正しくは:重錘ではなく、歩行を安定させるためのバランス訓練や、大股歩行・重心移動訓練などを行う。選びやすい理由:筋力強化を目的としたリハビリテーションの一環として重錘を用いることがありますが、パーキンソン病の歩行障害に対しては逆効果となることが多いです。混同注意:一般的な筋力トレーニングと、パーキンソン病の歩行障害に対する効果的な介入方法を混同しやすい。
国試ポイント
パーキンソン病の症状と、それに対するリハビリテーションにおける具体的な介入方法(特に歩行障害に対するアプローチ)を理解しているかどうかが問われる問題です。疾患の特性を考慮した適切な指導内容を選択できるかが重要です。
混同注意
パーキンソン病特有の症状である「すくみ足」や「突進現象」に対する適切な対応と、一般的な運動指導や筋力強化との区別が曖昧だと誤った選択肢を選んでしまう可能性があります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、パーキンソン病の各ステージにおける具体的なADLレベルと、それに対応するリハビリテーション介入の目的・内容を問う問題が考えられます。特に、歩行障害に対する非薬物療法の種類とその効果(例:フリーズへの対応、歩行補助具の選択)が重要となります。
関連知識
パーキンソン病のHoehn&Yahr分類(各ステージの症状と可能なADL)、姿勢反射障害、すくみ足、小刻み歩行、突進現象、運動プランニング障害、視覚・聴覚キューイングの効果。