26歳の女性。衝動的な浪費や奔放な異性交遊の後に抑うつ状態となり、リストカットを繰り返していた。常に感情が不安定で、空虚感や見捨てられることへの不安を訴える。職場での対人関係の悪化をきっかけに自殺企図が認められたため入院となった。この患者に対する作業療法で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
境界性パーソナリティ障害患者は、見捨てられ不安や感情の不安定性から治療構造を揺るがす行動を取りやすいため、治療目標や治療上の契約を繰り返し確認し、明確な枠組みを提供することで、患者に安心感を与え、治療の継続性を保ちます。これにより、衝動性や自己破壊的行動の軽減を目指します。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者の申し出に応じるだけでは、境界性パーソナリティ障害特有の治療構造の不安定化を招き、治療的効果が得られにくい。治療計画に基づいた面接が重要。正しくは:治療計画に基づいて定期的に面接を設定し、必要に応じてカンファレンスで対応を検討する。選びやすい理由:患者中心の医療という考え方から、一見適切に思えるため。混同注意:一般的に患者の意見を尊重する態度と、境界性パーソナリティ障害における治療構造の維持の必要性。
- 2. 初回面接で自殺企図に深く踏み込むことは、患者の圧倒的な感情を引き起こし、治療関係の構築を妨げる可能性がある。まずは信頼関係の構築を優先し、安全を確保した上で、段階的に取り組むべき。正しくは:自殺企図については、患者との信頼関係を確立し、安全が確保された上で、適切な時期に継続的に話し合う。選びやすい理由:自殺企図は重要な問題であるため、早急に対応すべきだと考えるため。混同注意:緊急性の高い問題への対応と、心理的に不安定な患者への段階的なアプローチ。
- 3. 攻撃性がみられた際に治療者を安易に替えることは、見捨てられ不安を助長し、治療関係の断絶につながる。一貫した対応で治療的関係を維持することが重要。正しくは:攻撃性がみられた場合でも、治療チームで連携し、一貫した態度で対応し、治療的枠組みを維持する。選びやすい理由:治療者の負担軽減や、相性が悪いと考えることで、安易に交代させることが適切だと感じるため。混同注意:治療者の負担と、境界性パーソナリティ障害における治療の一貫性の重要性。
- 4. 患者の希望に安易に合わせてプログラムを変更することは、治療構造を不安定にし、患者の感情の不安定性や衝動性を強めてしまう可能性がある。治療目標に基づいたプログラムを維持することが重要。正しくは:治療目標に基づいたプログラムを提示し、患者の希望も考慮しつつ、変更する場合はチームで検討し、明確な理由を説明する。選びやすい理由:患者の主体性を尊重する態度と誤解されやすいため。混同注意:患者の自己決定権の尊重と、治療的な枠組みの中での患者の主体性の尊重。
- 5. 正解。境界性パーソナリティ障害患者は、感情の不安定さや見捨てられ不安から治療構造を揺るがす行動を取りやすいため、治療目標や治療上の契約を繰り返し確認し、明確な枠組みを提供することで、患者は安心感を得て治療に継続的に取り組めます。選びやすい理由:治療関係の安定と患者の安全確保に繋がるため、治療の基本原則として適切だと理解できる。混同注意:治療の基本原則としての「目標設定」が、境界性パーソナリティ障害において特に「繰り返し確認する」ことの重要性。
国試ポイント
境界性パーソナリティ障害患者への作業療法における、明確な治療構造の設定の重要性。
混同注意
患者の自律性を尊重することと、治療的枠組みを維持することの区別。境界性パーソナリティ障害では、安易な自己決定の尊重は治療の破綻を招くリスクがある。
次に同じ論点が出たら
境界性パーソナリティ障害の症例では、感情の不安定性、衝動性、対人関係の障害、空虚感、見捨てられ不安などのキーワードがある場合、治療の構造化や枠組みの明確化が求められる選択肢を選ぶ。
関連知識
弁証法的行動療法(DBT)は境界性パーソナリティ障害に有効な治療法であり、その根底には構造化された治療的枠組みの維持がある。見捨てられ不安への対応や、衝動性への対処スキル獲得を目的としたプログラムが含まれる。