52歳の男性。統合失調症で精神科入院歴があるが、この9年間は治療中断しており、時々幻聴に影響された言動がみられる。医師の往診の後、何とか本人の同意を得て訪問支援開始となった。初回訪問時、居間で20分ほど落ち着いて話ができる状況である。初期の訪問において、作業療法士が最も留意すべきなのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
統合失調症で治療中断期間がある患者に対し、訪問支援の初期段階では、信頼関係の構築が最優先です。本人が関心を持つ事柄や趣味を把握することは、共通の話題を見つけ、会話を促進し、安心感を与え、治療者への抵抗感を減らす上で非常に有効です。これにより、今後の支援を円滑に進める基盤が築かれます。
選択肢ごとの解説
- 1. 本症例は9年間治療を中断しており、薬への抵抗感が強い可能性があります。訪問初期に薬の服用を積極的に推奨すると、患者が支援そのものに拒否感を示し、関係性が破綻するリスクがあります。まずは信頼関係の構築が優先されます。正しくは:信頼関係が構築され、患者の病識や服薬への理解度が高まった段階で、服薬の必要性について情報提供し、本人の意思を尊重しながら検討を促す。選びやすい理由:統合失調症の治療には薬物療法が不可欠であるため、早期介入の必要性を感じやすい。混同注意:治療の最終目標としての薬物療法と、初期介入での優先事項の混同。
- 2. 本症例は統合失調症で幻聴の影響が見られ、環境変化や過剰な刺激に敏感である可能性があります。初期から1日に複数回訪問すると、患者に負担を与え、侵襲的に感じさせてしまい、訪問支援自体を拒否する原因となる恐れがあります。最初は頻度を控えめにし、患者のペースに合わせるべきです。正しくは:患者の状況や反応を慎重に観察しながら、適切な訪問頻度を検討し、段階的に調整する。選びやすい理由:症状が不安定な患者には頻繁な支援が必要だと考えがち。混同注意:病状の不安定さと、支援頻度の適切な調整の混同。
- 3. 身辺の整理整頓は患者の生活機能の向上に繋がる重要な要素ですが、これも訪問初期に性急に促すと、患者のプライバシーの侵害と感じさせたり、コントロールされているという不快感を与えたりする可能性があります。患者のペースを尊重し、信頼関係を築いた上で、生活の質の向上に向けて共同で取り組む姿勢が重要です。正しくは:信頼関係を確立し、患者が整理整頓の必要性を理解し、自ら取り組む意欲が見られた段階で、具体的な支援方法を提案する。選びやすい理由:生活環境の改善は生活の質の向上に直結するため、早期介入が効果的だと考えやすい。混同注意:生活機能改善の重要性と、介入のタイミングの混同。
- 4. 訪問支援の初期段階において、毎回異なるスタッフが訪問すると、患者は安定した関係性を築きにくく、不安を感じやすくなります。特に精神疾患患者は人との関係構築に時間を要することが多いため、可能な限り同じスタッフが継続して訪問し、一貫した支援を提供することで信頼関係を深めることが重要です。正しくは:原則として、担当スタッフを固定し、継続的な訪問を通じて信頼関係を構築する。やむを得ずスタッフが交代する際には、事前に患者へ説明し、スムーズな引き継ぎを行う。選びやすい理由:組織的な公平性や、スタッフ間の情報共有の観点から複数のスタッフが関わることを考慮しがち。混同注意:チームアプローチの必要性と、初期段階における関係性構築のための担当固定の重要性の混同。
- 5. 正解。本症例は、医師の往診後「何とか本人の同意を得て」訪問支援が開始された段階であり、治療者への警戒心がある可能性があります。初回の訪問でリビングで20分落ち着いて会話できている状況で、本人が関心を持つ事柄や趣味を把握することは、共通の話題を見つけて会話を円滑にし、安心感を与え、心理的距離を縮める上で最も有効な手段です。これは、今後の継続的な支援の基盤となる信頼関係を構築するために不可欠です。選びやすい理由:患者中心のケアの原則に合致し、支援の入り口として適切であるため。混同注意:一般的な対人援助技術と、精神科訪問支援におけるラポール形成の具体的な方法の理解。
国試ポイント
精神科訪問支援における信頼関係構築の重要性とその具体的なアプローチを理解しているか。
混同注意
介入初期段階での直接的な治療的介入と、関係性構築のための間接的介入の優先順位。
次に同じ論点が出たら
精神科訪問支援の初期段階において、患者の主体性を尊重し、治療への動機付けを高めるための介入が求められているかを確認する。
関連知識
ラポール形成、リカバリー志向のアプローチ、アウトリーチの原則、精神科リハビリテーションの段階的アプローチ。