小脳の機能不全による協調運動障害の説明で誤っているのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
選択肢3の「運動分解」の説明が不適切です。運動分解は、複雑な協調運動が個々の単純な運動に分断され、ぎこちない動きになる状態を指します。例えば、目標に手を伸ばす際に、肩と肘の動きが同時に滑らかに行えず、まず肩を動かしてから肘を動かす、といったように要素が分解されることを言います。選択肢の説明にある「拮抗筋が同時に収縮してしまい」という部分は、むしろ共同運動障害(dyssynergia)や同時収縮の障害の一部と関連が深く、運動分解の直接的な特徴ではありません。
選択肢ごとの解説
- 1. 小脳失調症の症状の一つである書字障害(字が乱れたり、大きさが不揃いになったりする)の適切な説明です。正しくは:正しい説明なので修正の必要はありません。選びやすい理由:症状の名称と説明が合致しているため、誤りとは判断しにくいです。混同注意:書字障害の他のタイプ(小文字症など)と混同する可能性がありますが、小脳失調では大文字症が特徴的です。
- 2. 小脳失調症における企図振戦(intention tremor)の典型的な説明です。正しくは:正しい説明なので修正の必要はありません。選びやすい理由:振戦の種類が多く、特に安静時振戦などとの違いが曖昧な場合に迷うかもしれませんが、企図振戦の説明としては適切です。混同注意:安静時振戦(パーキンソン病)、体位時振戦、動作時振戦など、他の振戦と混同しやすいです。企図振戦は動作の終末で増強するのが特徴です。
- 3. 正解。運動分解(decomposition of movement)は、複雑な運動が個々の要素に分かれて不器用になる現象を指します。選択肢の説明は、同時収縮(co-contraction)や共同運動障害(dyssynergia)の一部を表している可能性はありますが、「拮抗する運動の切り替えが円滑に行えない」という元の問題文の選択肢の内容から、「拮抗筋の同時収縮」という説明は、小脳性運動分解の直接的な説明として正確ではありません。運動分解は、運動を構成する各要素をスムーズに連結できない状態です。拮抗筋の同時収縮は共同運動障害の一部ですが、運動分解とはやや異なります。正しくは:運動分解とは、複数の関節を使った協調運動が個々の単純な運動の組み合わせに分解されてしまい、滑らかさを欠く状態を指します。例:肘を曲げながら肩を動かす動作が、まず肘を曲げてから肩を動かす、といったように不連続になる。選びやすい理由:運動の「分解」という言葉の響きから、筋肉の協調性が失われることを連想させ、正しくないとは判断しにくいかもしれません。しかし、具体的に「拮抗筋の同時収縮」と説明している点が誤りです。混同注意:協調運動障害の様々な症状(失調、共同運動障害、変調運動など)と混同しやすいです。特に、共同運動障害(dyssynergia)との区別が曖昧になりやすいですが、運動分解は特に多関節運動の要素が分離する点が特徴です。
- 4. 時間測定障害(dyschronometria)は、小脳性失調症において運動のタイミング制御が困難になることを指し、開始や停止の遅れはその典型的な現れです。正しくは:正しい説明なので修正の必要はありません。選びやすい理由:「時間」という言葉が含まれるため、単純な運動の遅延と混同するかもしれませんが、小脳失調における時間測定障害の適切な説明です。混同注意:単なる運動の緩慢さ(徐動)や、反応時間の延長と混同する可能性がありますが、時間測定障害は特に運動の「タイミング」の障害に焦点を当てています。
- 5. 協調収縮不能(dyssynergia)は、複数の筋肉群が協調して動くことができず、滑らかな運動が障害されることを指します。この説明は適切です。正しくは:正しい説明なので修正の必要はありません。選びやすい理由:多くの小脳症状が「協調性の障害」として表現されるため、他の症状と区別がつきにくいかもしれませんが、この説明は共同運動障害(dyssynergia)の概念をよく表しています。混同注意:運動分解(decomposition of movement)と混同しやすいですが、協調収縮不能は主に異なる筋肉群間の協調性の欠如を指し、運動分解は多関節運動の構成要素が分離する現象を指します。
国試ポイント
小脳機能不全によって生じる協調運動障害の各症状(企図振戦、運動分解、共同運動障害、時間測定障害、大文字症など)の定義と特徴を正確に理解しているかを問う問題です。特に、似たような症状名や概念の区別が重要になります。
混同注意
小脳失調の各症状名とその定義が非常に混同しやすいため、それぞれの具体的な病態生理と臨床症状を明確に区別することが重要です。特に、運動分解、共同運動障害、変調運動、測定障害などは細かな違いを理解する必要があります。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の論点が出題された場合、小脳失調の各症状を具体的な運動パターンや徴候と結びつけて正確に判断できるかを確認します。特に、名称と説明が一致しているかだけでなく、誤った説明がなぜ誤りなのかを理由とともに説明できるようになることが重要です。
関連知識
小脳の解剖生理学(小脳半球、小脳虫部、小脳核の機能)、小脳性疾患(脊髄小脳変性症、多発性硬化症、脳卒中による小脳病変など)、リハビリテーション介入(フレンケル体操、バランス練習など)