68歳の女性。2か月前に頭部打撲歴あり。10日前から歩行障害が出現し徐々に悪化した。病院を受診したところ緊急入院となった。穿頭血腫ドレナージ術後、症状は改善した。別に示す頭部CT画像(別冊No. 3)のうち、この患者の術前の頭部CT画像はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
この患者は2ヶ月前の頭部打撲歴と、10日前からの徐々に悪化する歩行障害を呈しており、慢性硬膜下血腫の典型的な病歴です。慢性硬膜下血腫のCT画像所見は、頭蓋骨内板に沿って脳表を圧迫する三日月状の低吸収域(時間経過により等吸収域や高吸収域、混合吸収域となる場合もある)であり、脳溝の消失や脳室の圧迫を伴います。選択肢④の画像は、この特徴を最もよく示しています。
選択肢ごとの解説
- 1. この画像は、慢性硬膜下血腫の特徴である脳溝の消失や脳室の圧迫を示す典型的な三日月型病変が認められません。一般的な脳実質のCT画像のように見えます。正しくは:慢性硬膜下血腫の画像所見と異なるため、この選択肢は誤りです。選びやすい理由:CT画像の中から何らかの異常を探そうとする際、明確な病変が見えない場合に一時的に迷う可能性はありますが、本症例の臨床経過とは合致しません。混同注意:正常な脳CT画像や、異なる種類の頭蓋内病変と混同する可能性があります。
- 2. この画像は、脳室の拡大や脳溝の拡大が見られ、脳萎縮を示唆する所見です。今回の症例のような急性期の神経症状を伴う頭蓋内圧亢進症状とは異なります。正しくは:脳萎縮の所見であり、慢性硬膜下血腫の画像所見とは異なります。選びやすい理由:頭部CT画像に異常があるため、選択肢として考慮するかもしれませんが、病変の形態や病歴とは異なります。混同注意:水頭症やアルツハイマー病などの認知症に伴う脳萎縮と混同する可能性があります。
- 3. この画像は、脳実質内に高吸収域を示しており、脳出血(急性期)や腫瘍性病変を示唆します。硬膜下血腫の典型的な所見ではありません。正しくは:脳実質内の病変であり、硬膜外や硬膜下に広がる血腫の画像所見とは異なります。選びやすい理由:高吸収域があるため異常と判断できますが、その位置や形状が硬膜下血腫とは異なるため注意が必要です。混同注意:急性期の脳出血や脳腫瘍と混同する可能性があります。
- 4. 正解。このCT画像では、頭蓋骨内板に沿って広がる三日月状の低吸収域(または等吸収域/混合吸収域)が認められ、脳溝の消失や脳室の圧迫が見られます。これは、亜急性期から慢性期の硬膜下血腫に特徴的な所見です。患者の頭部打撲歴(2ヶ月前)と症状出現までの期間(10日前から悪化)に合致します。正しくは:慢性硬膜下血腫の典型的なCT画像所見です。選びやすい理由:特にありません。臨床経過と画像所見が最も一致しています。混同注意:他の脳病変、特に急性硬膜下血腫や硬膜外血腫との鑑別が必要です。急性硬膜下血腫は高吸収域を示し、硬膜外血腫はレンズ状(凸レンズ型)を示す点で異なります。
- 5. この画像は、頭蓋骨に沿ってレンズ状(凸レンズ型)の高吸収域を示しており、硬膜外血腫の典型的な所見です。本症例の既往歴(2ヶ月前の頭部打撲、徐々に悪化する症状)は慢性硬膜下血腫を示唆しており、硬膜外血腫とは異なります。正しくは:硬膜外血腫の画像所見であり、慢性硬膜下血腫とは異なります。選びやすい理由:頭部外傷の既往があるため、頭蓋内出血の一種として選択しやすいですが、形状と症状の経過が異なります。混同注意:硬膜下血腫と硬膜外血腫を混同する可能性があります。硬膜外血腫は通常、受傷直後から急激な症状悪化を呈することが多いです。
国試ポイント
頭部外傷後の慢性硬膜下血腫の典型的なCT画像所見と臨床経過を理解しているか、また他の頭蓋内血腫(急性硬膜下血腫、硬膜外血腫)や脳疾患との鑑別ができるかが問われています。
混同注意
急性硬膜下血腫(高吸収域、三日月状)、硬膜外血腫(高吸収域、レンズ状)、脳挫傷(不均一な高吸収域)、脳腫瘍(不均一な濃度変化、浮腫を伴うことが多い)などの画像所見。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、CT画像における血腫の『形状(三日月状かレンズ状か)』、『吸収値(高吸収域か低吸収域か)』、『脳溝や脳室の圧迫の有無』、そして『患者の臨床経過(受傷からの期間、症状の進行度)』を総合的に判断できるかが重要となります。
関連知識
頭部外傷の種類とそれに対応するCT画像所見(硬膜下血腫、硬膜外血腫、脳挫傷、脳内出血など)、各病態の症状発現時期や進行速度。慢性硬膜下血腫では、外傷から数週間〜数ヶ月後に症状が出現し、認知機能障害、頭痛、片麻痺、歩行障害などがみられることが多いです。