16歳の女子。高校進学後から体型を笑われたように思い、極端な減量をして痩せが目立つようになった。2か月前から登校できなくなって入院治療を受けることになった。入院後、気分転換と早期の復学を目的とした作業療法が処方された。この患者に対する導入期の作業療法で最も適切なプログラムはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第57回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
摂食障害の患者さんに対する導入期の作業療法では、まず信頼関係の構築と、患者さんが安心感を持って取り組める活動の提供が重要です。摂食障害の患者さんは、体型や食事、自己評価に関して非常に敏感で、ネガティブな感情を抱きやすいため、直接的な課題に取り組むよりも、気分転換になり、達成感を得やすい簡単な創作活動などが適しています。これにより、自己肯定感を少しずつ高め、作業への動機付けを促すことができます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。摂食障害の患者さんで、特に導入期には、気分転換や自己肯定感の向上を目的とした、達成しやすい手工芸などの活動が適しています。体型や食事に直接関係しない、成功体験を得やすい活動を通じて、作業への導入を促し、治療関係を構築することが重要です。
- 2. 摂食障害の患者さんは、認知の歪みを持つことが多いですが、導入期にいきなり小集団でのディスカッションはハードルが高すぎます。他者との交流や自己開示が困難な場合が多く、不安や抵抗感を増幅させる可能性があります。正しくは:ある程度病状が安定し、治療関係が構築され、他者との交流に抵抗が少なくなってから、段階的に導入を検討します。選びやすい理由:認知行動療法的なアプローチは摂食障害に有効であるため、一見良さそうに見えます。混同注意:病状が進行し、治療の後半段階で取り組むべき内容と混同しやすいです。
- 3. 摂食障害の患者さんは、体型への強いこだわりから、過度な運動を行う傾向があり、運動プログラムは病的な行動を助長するリスクがあります。また、著しい痩せがある場合は、身体的合併症のリスクも高いため、導入期には不適切です。正しくは:身体状況を十分に評価し、栄養状態が改善され、過度な運動へのこだわりが軽減されてから、段階的に適切な運動プログラムを導入します。選びやすい理由:気分転換や体力向上という目的から、運動が良いと考える人もいるかもしれません。混同注意:一般的な精神疾患や身体疾患のリハビリテーションにおける運動プログラムと混同しやすいです。摂食障害特有の病態理解が必要です。
- 4. 摂食障害の患者さんは、食事やカロリーに対して非常に強いこだわりや恐怖心を抱いているため、導入期にカロリー計算を行うプログラムは、症状を悪化させる可能性が高いです。不安を増強させ、治療への抵抗を高める恐れがあります。正しくは:食事への不安が軽減され、栄養状態が安定し、ある程度回復が進んでから、栄養士と連携して段階的に行われるべき内容です。選びやすい理由:食事に関する知識は必要だと考えられがちですが、タイミングが重要です。混同注意:糖尿病などの他の疾患における栄養指導と混同しやすいです。摂食障害における食事への病的なこだわりを理解する必要があります。
- 5. 導入期は、患者さんが入院生活に適応し、治療者との信頼関係を築く時期です。早期の段階で退院後の生活を具体的に検討するプログラムは、患者に過度なプレッシャーを与え、精神的な負担が大きすぎます。まずは現在の状態での目標設定と治療関係の構築が優先されます。正しくは:病状が安定し、退院が現実的な目標となってきた段階で、患者さんの状況に合わせて段階的に実施します。選びやすい理由:早期復学という目標があるため、退院後の生活を見据えることは重要だと感じられるかもしれません。混同注意:治療の初期段階と終盤段階の目標設定を混同しやすいです。導入期はまず治療環境への適応が重要です。
国試ポイント
摂食障害の病態理解と、治療段階に応じた作業療法プログラムの選択能力が問われています。特に導入期における介入の原則(信頼関係構築、安心感、達成感、気分転換、症状に直接触れない配慮)が重要です。
混同注意
他の精神疾患や身体疾患の導入期プログラム、あるいは摂食障害の後期治療段階のプログラムと混同しやすいです。摂食障害特有の病理(体型や食事へのこだわり、自己肯定感の低さ、完璧主義)を考慮した選択が必要です。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、患者の疾患(摂食障害)、現在の状況(導入期、気分転換と早期復学が目的)、そして各プログラムが患者の症状や治療目標にどのように影響するか(悪化させるか、助長するか、適切か)を総合的に判断する必要があります。
関連知識
摂食障害(神経性やせ症、神経性過食症)の症状と治療原則、精神科作業療法の各段階(導入期、展開期、終結期)における目標とプログラム内容、精神科リハビリテーションにおける信頼関係構築の重要性、患者中心のケア。