前頭葉の損傷による高次脳機能障害で生じるのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2・5番
解説
前頭葉は思考、計画、行動の開始・制御、言語の生成、遂行機能など多岐にわたる高次脳機能に関与します。肢節運動失行は、前頭葉の運動機能に関する領域(運動前野、補足運動野など)の損傷により、個別の肢の精密な運動の調整が困難になる状態で、前頭葉機能障害の典型です。また、Broca失語は左半球の下前頭回(Broca野)の損傷によって生じ、発話の流暢性が障害される代表的な言語障害であり、この領域も前頭葉に属します。他の選択肢は、視覚失調が後頭葉〜頭頂葉、触覚失認が頭頂葉、相貌失認が側頭葉後部〜後頭葉の損傷と関連が深いです。
選択肢ごとの解説
- 1. 視覚失調は、視覚情報に基づいて対象物まで正確に手を伸ばしたり、運動を調整したりすることが困難になる症状です。これは主に後頭葉と頭頂葉の接続領域(後部頭頂葉や頭頂後頭溝)の損傷によって生じます。正しくは:「後頭葉と頭頂葉の接続領域(後部頭頂葉など)の損傷により生じる」と修正されます。選びやすい理由:「失調」という言葉から運動機能の障害を連想し、前頭葉も運動に関わるため、誤って選んでしまう可能性があります。混同注意:小脳性の失調や、他の運動失調、または他の失行症と混同されやすいです。
- 2. 正解。肢節運動失行は、個々の指や手首、足首といった身体の特定部分の精密な随意運動が、麻痺や感覚障害がないにもかかわらず巧緻に行えなくなる状態です。これは前頭葉、特に運動前野や補足運動野、またはこれらの領域から脊髄への神経路の損傷によって生じることが多いです。前頭葉は運動の計画と実行、特に目的を持った精密な運動の調整に深く関与しています。
- 3. 触覚失認は、触れることによって物体の形や質感を識別することが困難になる障害です。これは主に頭頂葉(特に感覚野やその周辺連合野)の損傷によって引き起こされます。前頭葉の機能とは直接関連しません。正しくは:「頭頂葉損傷により生じる」と修正されます。選びやすい理由:「失認」という言葉が高次脳機能障害全般を示唆するため、特定の部位との関連が曖昧な場合に選びやすいかもしれません。混同注意:感覚性失語や、他の種類の失認(例:視覚失認)、あるいは純粋な感覚障害(触覚鈍麻など)と混同されやすいです。
- 4. 相貌失認は、既知の顔や見慣れた顔(家族、友人、自分自身の顔など)を認識できない、または顔の表情から感情を読み取れないといった症状を指します。この障害は主に側頭葉後部、特に紡錘状回顔領域や後頭葉の損傷によって生じます。前頭葉の損傷では通常発生しません。正しくは:「側頭葉後部または後頭葉損傷により生じる」と修正されます。選びやすい理由:高次脳機能障害の一つとして認知されており、広範な脳損傷と結びつけられやすいですが、責任病巣は特定の領域に限られます。混同注意:視覚失認や他の視覚認知障害、または記憶障害と混同されやすいです。
- 5. 正解。Broca失語は、言葉を流暢に話す能力が著しく障害される失語症の一種です。発話量が減少し、構音障害を伴い、文法が単純化される「電報様式」が特徴です。これは通常、優位半球(多くの場合、左半球)の前頭葉にある下前頭回(Broca野)の損傷によって引き起こされます。Broca野は発話の生成と文法構造の処理に重要な役割を担っています。
国試ポイント
脳の各部位と、それらの損傷によって引き起こされる典型的な高次脳機能障害の組み合わせについて、正確な知識があるかを問う問題です。特に、前頭葉は多様な機能を持つため、その責任病巣と関連する症状を具体的に理解しているかが重要となります。
混同注意
失行症、失認症、失語症の種類とそれぞれの責任病巣について、混同しやすい点が多いため注意が必要です。特に失行症は種類が多く、責任病巣が重複することもあるため、それぞれの特徴を明確に理解しておく必要があります。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出題された場合、他の脳部位(例:側頭葉や頭頂葉など)の損傷で生じる代表的な高次脳機能障害について問われる可能性があります。また、失行・失認・失語といった各症候群のより詳細な鑑別点や、責任病巣の具体的な位置が問われることも考えられます。
関連知識
前頭葉の機能(遂行機能、注意、行動制御、記憶の一部、言語生成、感情調整、運動計画・実行)、頭頂葉の機能(身体感覚、空間認知、行為、一部の言語)、側頭葉の機能(聴覚、記憶、感情、言語理解、視覚認知の一部)、後頭葉の機能(視覚)など、大脳の各葉の主要機能と関連する高次脳機能障害を総合的に理解しておくことが求められます。