40歳の男性。脳梗塞による左片麻痺。「手を腰の後ろに回してください」、「肘を曲げずに腕を前から水平位まで上げてください」の指示に左上肢はそれぞれ図のようになった。左上肢の状態として適切なのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
この症例では、「手を腰の後ろに回す」という伸展共同運動の一部と、「肘を曲げずに腕を前から水平位まで上げる」という屈曲共同運動からの独立した動きの両方が見られます。特に後者の動きは、共同運動パターンから逸脱した分離運動の一部であり、連合反応や共同運動が主体である段階から、より高次の皮質支配による随意運動の回復を示唆しています。
選択肢ごとの解説
- 1. 「肘を曲げずに腕を前から水平位まで上げる」という動きは、上肢屈曲共同運動から肘伸展要素が分離されており、共同運動の初期段階ではありません。初期段階では共同運動パターン全体でしか動かせません。正しくは:この動きは共同運動の初期段階ではなく、共同運動から独立した動きの一部である。選びやすい理由:麻痺回復過程の初期段階では共同運動が出現するため、麻痺の症状と聞くと初期を連想しやすい。混同注意:Brunnstrom Recovery Stage IIまたはIIIの共同運動が主体である時期。
- 2. 「肘を曲げずに腕を前から水平位まで上げる」という指示に応じた動きは、共同運動パターンからの分離が見られ、痙縮が始まったばかりの時期(Brunnstrom Stage II)とは異なります。痙縮が始まったばかりでは、このような分離運動は困難です。正しくは:この時期は痙縮が始まったばかりの時期ではなく、共同運動からの分離が見られる時期である。選びやすい理由:脳梗塞発症直後であれば痙縮が始まったばかりの時期も考えられるが、問題文に発症からの期間が明記されていないため、現在の症状から判断する必要がある。混同注意:Brunnstrom Recovery Stage IIの時期。
- 3. 「肘を曲げずに腕を前から水平位まで上げる」という動きは、共同運動からの分離を示しており、痙縮が最も強い時期(Brunnstrom Stage III)では、このような分離運動は困難です。Stage IIIでは共同運動パターン内でのみ動かすことができ、分離は限定的です。正しくは:この動きは痙縮が最も強い時期ではなく、共同運動からの分離が見られる時期である。選びやすい理由:麻痺の回復過程で痙縮が強くなる時期があるため、最も強い時期を連想しやすい。混同注意:Brunnstrom Recovery Stage IIIの時期。
- 4. 正解。「手を腰の後ろに回す」は上肢伸展共同運動の一部ですが、「肘を曲げずに腕を前から水平位まで上げる」は、上肢屈曲共同運動(肩関節外転・外旋、肘関節屈曲、前腕回外など)のうち、肘関節の屈曲を伴わない運動であり、共同運動パターンから独立した動き(分離運動)が可能になっている状態を示します。これはBrunnstrom Stage IVに相当する回復段階です。選びやすい理由:提示された動きの組み合わせが、共同運動のパターンとその一部からの分離を示すため、回復段階の理解を問う問題として適切。混同注意:基本的な共同運動のままと捉えてしまうこと。
- 5. 「完全に自由な分離運動」は、Brunnstrom Recovery Stage VIに相当し、健側とほぼ同等の動きが可能です。しかし、この症例では「手を腰の後ろに回す」という共同運動の一部も認められており、完全に自由な分離運動が行える段階ではありません。正しくは:この動きは、完全に自由な分離運動ではなく、基本的な共同運動から独立した動きが可能になっている段階である。選びやすい理由:一部で分離運動が見られるため、回復がかなり進んだ状態と誤解しやすい。混同注意:Brunnstrom Recovery Stage VIの時期。
国試ポイント
脳卒中片麻痺におけるBrunnstrom Recovery Stageと、それに伴う運動回復の特徴を理解すること。
混同注意
共同運動と分離運動の段階、および痙縮の程度が混同しやすい。共同運動は皮質脊髄路の障害により脊髄レベルの介在ニューロンを介した反射弓が亢進することで生じやすいのに対し、分離運動はより高位中枢からの抑制性・促通性支配の再建を反映する。痙縮は共同運動の回復段階で強くなる傾向にあるが、共同運動そのものと痙縮のピークを混同しない。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、「共同運動パターンに属する動き」と「共同運動パターンから逸脱した分離運動に属する動き」を明確に区別し、提示された動きがどちらの段階に相当するかを判断する。
関連知識
Brunnstrom Recovery Stageの各段階(Stage I:弛緩性麻痺、Stage II:共同運動出現・痙縮増強、Stage III:共同運動での随意運動、痙縮最強、Stage IV:共同運動からの分離、痙縮減弱、Stage V:さらに分離、痙縮最小、Stage VI:ほぼ正常)を、具体的な運動パターンと関連付けて理解する。