54歳の女性。手内筋が萎縮し、環指と小指はMP関節が過伸展し、PIP関節・DIP関節が屈曲している。また、環指と小指のしびれの訴えがある。薬物療法と装具療法が開始された。この患者が使用する装具で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
患者の症状は、手内筋の萎縮と環指・小指のMP関節過伸展、PIP・DIP関節屈曲、環指・小指のしびれであり、これらは尺骨神経麻痺による『鷲手(かぎづめ指)』の典型的な症状です。ナックルベンダーは、この鷲手変形に対して、MP関節の過伸展を抑制し、屈曲位を保持することで機能的な手の使用を促し、PIP・DIP関節の屈曲拘縮の予防・改善を図る装具として最も適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 短対立装具は母指の対立運動障害やCM関節の安定化に用いられます。本症例の症状である環指・小指の変形としびれとは直接関連がありません。正しくは:母指の対立機能障害や母指CM関節の安定化が必要な場合に選択されます。選びやすい理由:手の装具であるため、深く考えずに選択してしまう可能性があります。混同注意:他の母指に関連する装具(長対立装具など)と混同しやすいです。
- 2. 正解。この症例は尺骨神経麻痺に特徴的な『鷲手(かぎづめ指)』を示しており、MP関節の過伸展とPIP/DIP関節の屈曲が認められます。ナックルベンダーは、MP関節の過伸展を防止し、PIP/DIP関節の屈曲拘縮を予防・改善する目的でMP関節を軽度屈曲位に保持する装具であり、鷲手変形に最も適しています。選びやすい理由:具体的な症状と装具の目的が一致するため、適切に判断できれば選びやすいです。混同注意:逆ナックルベンダーやバデイスプリントなど、他のMP関節や指関節に作用する装具と混同しないように注意が必要です。
- 3. バデイスプリントは、主にDIP関節の屈曲拘縮(ハンマートゥなど)に対して、DIP関節を伸展位に保持するために使用されます。本症例はMP関節の過伸展とPIP/DIP関節の屈曲を呈しており、DIP関節単独の屈曲拘縮を対象とする装具ではありません。正しくは:主にDIP関節の屈曲拘縮を伸展位で保持する場合に選択されます。選びやすい理由:指の関節変形に対応する装具であるため、選択肢として考慮される可能性があります。混同注意:他の指関節の拘縮に対応する装具(例:マレット指スプリント、PIP関節用スプリント)と混同しやすいです。
- 4. 逆ナックルベンダーは、ナックルベンダーとは逆で、MP関節が屈曲拘縮を呈している場合に、MP関節を伸展方向に誘導する装具です。本症例はMP関節が過伸展しているため、適応外となります。正しくは:MP関節の屈曲拘縮を伸展位に矯正する場合に選択されます。選びやすい理由:名前がナックルベンダーに似ているため、混乱して選択してしまう可能性があります。混同注意:ナックルベンダーと作用が逆であるため、それぞれの適応を明確に理解していないと混同しやすいです。
- 5. コックアップ・スプリント(手関節背屈位保持装具)は、主に橈骨神経麻痺による下垂手や手根管症候群などで、手関節を背屈位で安定させることを目的とします。本症例の主症状は指の変形としびれであり、手関節の安定化が主要な目的ではありません。正しくは:手関節を背屈位で固定・安定させる必要がある場合に選択されます。選びやすい理由:手部の装具として代表的なものの一つであるため、知識が曖昧だと選んでしまう可能性があります。混同注意:他の手関節を固定する装具(スタック・スプリントなど)や、指関節を主体とする装具と混同しやすいです。
国試ポイント
本問題は、手部の主要な神経麻痺(特に尺骨神経麻痺)とそれに伴う特徴的な変形(鷲手)を識別し、その変形に適切な装具療法を選択できるかを問うものです。各装具の名称と適応、作用機序を正確に理解していることが重要です。
混同注意
各装具の適応疾患や目的、作用部位が混同しやすいです。特に、ナックルベンダーと逆ナックルベンダーのように名前が似ていて作用が逆のものは注意が必要です。また、短対立装具やコックアップ・スプリントなど、他の代表的な手の装具についても、それぞれの適応を明確に区別できるようにしておく必要があります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、まず患者の症状からどの神経麻痺が疑われるか、またはどの関節にどのような変形があるかを特定します。次に、その変形や機能障害に対して、各装具がどのように作用し、何を目的とするのかを正確に判断し、最も適切な装具を選択します。特に、どの関節のどの方向の動きを制御する装具なのかを意識することが重要です。
関連知識
尺骨神経麻痺の症状(Froment徴候、Wartenberg徴候など)、正中神経麻痺(猿手、手根管症候群)、橈骨神経麻痺(下垂手)とその装具療法。各指関節の解剖学的構造と運動、拘縮の種類と対応する装具。