洗顔ができない単関節の障害における関節運動と可動域制限の組合せで正しいのはどれか。ただし、自助具は使用しないものとする。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
洗顔動作では、手を顔に近づけるために肘関節を大きく屈曲させる必要があります。一般的に、手を口元や顔全体に持っていくためには、肘関節が少なくとも90度以上、場合によってはそれ以上に屈曲できることが望ましいです。選択肢3の「肘関節屈曲50度」という制限は、肘がほとんど伸びた状態に近いことを意味し、手を顔まで届かせることが極めて困難となるため、自助具なしでの洗顔は不可能と判断されます。他の選択肢の制限は、洗顔動作を完全に不可能にするほどではないか、または主たる制限とはなりにくいと考えられます。
選択肢ごとの解説
- 1. 洗顔動作には肩関節の屈曲が必須ですが、40度という制限は大きいものの、体幹の傾きなどで補完すれば、ある程度は洗顔動作を行うことが可能な場合があります。特に顔の下部など。肘関節の重度な屈曲制限に比べると、洗顔動作全体の主要な妨げにはなりにくいと判断されます。正しくは:洗顔が不可能となる肩関節屈曲の制限は、より重度である必要があります(例:20度以下)。また、肩関節外転が重度に制限される場合も洗顔は困難になります。選びやすい理由:肩の動きは洗顔に非常に重要であり、40度という数字は確かに低いと感じるため、洗顔ができないと直感的に選んでしまいがちです。混同注意:洗顔に必要な肩関節の最低可動域が明確でない場合や、他の選択肢との相対的な影響度の判断が難しい場合に混同しやすいです。
- 2. 通常の肩関節内旋の可動域は約70~90度であり、60度はやや制限があるものの、洗顔動作において内旋は主に手の向きを調整する補助的な動きであり、この程度の制限で洗顔が全くできなくなることは考えにくいです。正しくは:肩関節の内旋が極度な制限(例:0度に近い)であれば、手のひらで顔を覆うような動きが難しくなるかもしれませんが、洗顔の基本的なリーチ動作は内旋が制限されても行いやすいです。選びやすい理由:関節の可動域に「制限」という言葉があるため、「できない」と短絡的に考えてしまう可能性があります。混同注意:洗顔における肩関節の各方向の運動の重要度について理解が不足している場合、または「可動域制限」の程度がどのくらい影響するか判断が難しい場合に混同しやすいです。
- 3. 正解。洗顔動作では、手を顔に近づけるために肘関節を大きく曲げる必要があります。通常、顔全体に手を届かせるためには肘関節が少なくとも90度以上の屈曲が求められます。屈曲が50度までしかできない場合、腕が伸びた状態に近く、手を顔まで届かせることが極めて困難になるため、自助具なしでの洗顔は不可能と判断されます。
- 4. 通常の前腕回外の可動域は約80~90度であり、60度はやや制限があるものの、洗顔動作では手のひらを上に向けたり、顔に触れる角度を調整したりするのに回内外運動を使いますが、60度の回外があれば十分に対応可能であり、洗顔全体が不可能になるほどの制限ではありません。正しくは:前腕の回内外が著しく制限され、例えば回外・回内ともに20度以下といった重度な制限であれば、洗顔において水をすくう、石鹸を泡立てる、顔に広げるといった動作が困難になる可能性があります。選びやすい理由:手のひらの向きの調整は洗顔に役立つため、その制限が問題になるのではと考えがちです。混同注意:洗顔における手の向き調整の重要度と、リーチ動作そのものの重要度の区別がついていない場合に混同しやすいです。
- 5. 通常の手関節背屈の可動域は約60~70度であり、10度は大きな制限です。しかし、洗顔動作では手関節の背屈は必須ではありません。むしろ、手関節がやや掌屈位でも顔に触れることは可能であり、リーチ動作が十分であれば洗顔を行うことはできます。正しくは:手関節の可動域制限が極端で、例えば背屈・掌屈ともに0度に近い完全な固定状態であれば、手のひらで顔に触れる角度が著しく制限され、洗顔が困難になる可能性があります。選びやすい理由:手首の動きは細かい手の操作に重要であり、10度という数字は低いと感じるため、洗顔が困難になると考えてしまうかもしれません。混同注意:洗顔動作における主要な関節運動(肩、肘)と、補助的な関節運動(手首、前腕)の重要度の違いを混同しやすいです。
国試ポイント
ADL(日常生活活動)における具体的な動作と、それを可能にするための関節可動域の関連性を問う問題です。各関節の標準的な可動域を理解しているだけでなく、特定のADLを行う上でどの関節のどの方向の動きが最も重要かを判断する能力が求められます。特に、一つの重度な制限がADL全体に与える影響を見極めることがポイントです。
混同注意
各関節の可動域制限がADLに与える影響の相対的な大きさを判断する際に、主要な運動と補助的な運動の区別がつきにくい。また、各関節の正常可動域と、ADL遂行に必要な最小可動域を混同しやすい。特に、数値を見たときにそれがどれくらいの制限なのか、体感的に把握しにくい場合に誤った選択をしがちです。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、他のADL(例:食事、更衣、排泄、入浴など)や、異なる姿勢(座位、立位)での動作について、主要な関節運動とそれに必要な可動域を検討する。また、複数の関節制限が複合した場合の影響や、自助具を使用した場合の補完効果についても考察する。特に、機能的リーチ動作(Functional Reach Test)や上肢挙上(Upper Extremity Elevation)の各フェーズにおける関節の役割を意識する。
関連知識
ADL評価(FIM、BIなど)と各項目の遂行に必要な身体能力; 関節可動域測定(ROM測定)の基礎知識と正常値; 自助具の効果と適応; 機能的リーチ動作に必要な上肢の協調運動; 基本動作分析(task analysis)