76歳の女性。物忘れのために日常生活で失敗が目立った。最近、夫の浮気を疑うようになり、顔を合わせると興奮し物を投げるなどの行為がみられる。息子が誤りであることをいくら説明しても納得しない。この患者の精神症状を評価する尺度として適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
本事例の女性は、高齢で物忘れがあり、妄想(夫の浮気)、興奮、物を投げるなどの行動が見られます。これは認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)の特徴的な現れです。NPI(Neuropsychiatric Inventory)は、認知症患者に頻発する多岐にわたる行動・心理症状を、介護者からの情報に基づいて包括的に評価するために開発された尺度であり、本ケースの評価に最も適しています。
選択肢ごとの解説
- 1. HRS-D(Hamilton Rating Scale for Depression)は、うつ病の重症度を評価するための尺度です。本事例では妄想や興奮などの精神症状が主であるため、適切ではありません。正しくは:うつ病の症状評価に用いる。選びやすい理由:精神症状全般の評価尺度と混同する可能性がある。混同注意:他の精神疾患の評価尺度
- 2. 正解。NPI(Neuropsychiatric Inventory)は、認知症患者に特有の行動・心理症状(BPSD: Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)を評価するための尺度です。幻覚、妄想、興奮、易怒性、無関心など、多岐にわたる症状を評価でき、本事例の女性が示す夫への妄想や興奮、物の投擲といった症状に合致します。選びやすい理由:認知症に特化した行動・心理症状の評価尺度であるため、本ケースに最も適しています。
- 3. POMS(Profile of Mood States)は、気分の状態(不安、怒り、活気など)を評価する心理検査です。本事例の妄想や興奮といったBPSDの評価には直接的ではありません。正しくは:一時的な気分の状態やストレス反応の評価に用いる。選びやすい理由:「興奮」というキーワードから、気分の評価尺度であるPOMSを連想する可能性がある。混同注意:気分障害の評価尺度
- 4. SANS(Scale for the Assessment of Negative Symptoms)は、統合失調症の陰性症状(感情鈍麻、思考の貧困など)を評価するための尺度です。本事例でみられるのは妄想や興奮といった陽性症状に近い症状であり、陰性症状の評価尺度であるSANSは適切ではありません。正しくは:統合失調症の陰性症状評価に用いる。選びやすい理由:精神症状の評価尺度の一つとして知識があるため、選択肢として考慮してしまう可能性がある。混同注意:陽性症状評価尺度 (SAPS) や統合失調症以外の精神症状評価尺度
- 5. SDS(Self-Rating Depression Scale)は、自己記入式のうつ病評価尺度です。本事例では妄想や興奮など、うつ病とは異なる行動・心理症状が主であり、患者自身が正確に評価できない可能性も高いため不適切です。正しくは:自己記入式でうつ病のスクリーニングや重症度評価に用いる。選びやすい理由:うつ病に関連する尺度として知名度があるため、混同しやすい。混同注意:他者評価式のうつ病尺度(例:HRS-D)や、他の精神症状評価尺度
国試ポイント
高齢者における認知症の行動・心理症状(BPSD)の具体的な事例から、その評価に適切な尺度を選択できるかどうかが問われています。各評価尺度の対象疾患や評価項目を正確に理解していることが重要です。
混同注意
精神科領域の様々な評価尺度(うつ病、統合失調症、気分など)との区別。特に認知症に特化していない一般的な精神症状尺度と混同しやすい。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出た場合、まず患者の主症状が認知症に伴うBPSDなのか、他の精神疾患(うつ病、統合失調症など)の症状なのかを判断し、その上で各尺度の評価対象がその症状に合致するかどうかを確認する。
関連知識
各評価尺度の目的と適用疾患(HRS-D: うつ病、NPI: 認知症のBPSD、POMS: 気分状態、SANS: 統合失調症陰性症状、SDS: うつ病)。認知症のBPSDの種類と具体例。