49歳の男性。右利き。脳梗塞による右片麻痺、Brunnstrom法ステージ上肢Ⅲ、手指Ⅲ、下肢Ⅳ、感覚障害を認める。MMSEは30点、高次脳機能障害は認めない。杖と短下肢装具を使用して歩行は自立。ドライブが趣味である。運転再開に向けた自動車の改造として適切なのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4・5番
解説
この男性は右片麻痺であり、特に運転操作において右下肢(アクセル・ブレーキ操作)と右上肢(ハンドル操作)に支障が生じる可能性があります。したがって、これらを補助する改造が適切です。選択肢4のハンドルノブ設置は、左手一本でのハンドル操作を容易にし、右片麻痺患者の運転を安全にする上で有効です。選択肢5の左アクセルペダルへの変更は、右足でのアクセル操作が困難な右片麻痺患者が左足でアクセルを操作できるようにするもので、運転再開に不可欠な改造となることが多いです。他の選択肢は、この患者の症状や問題点に対して直接的な運転補助にはなりません。
選択肢ごとの解説
- 1. 移乗ボードは、車への乗り降り(移乗動作)を補助するためのものであり、運転操作そのものには直接関係ありません。設問では、歩行は自立しており、高次脳機能障害も認められないため、移乗の困難さが運転再開の主要な阻害要因とは考えにくいです。正しくは:運転操作を補助する装置を選びます。選びやすい理由:麻痺があるため、乗り降りに不安がある場合に有効と誤解されるかもしれません。混同注意:運転操作の補助装置と身体の移動補助具を混同しやすいです。
- 2. 体幹ベルトは、座位保持能力が低下している場合に体幹の安定を図るために用いられます。しかし、この男性はBrunnstromステージ下肢Ⅳで歩行が自立しており、MMSE30点、高次脳機能障害なしとあるため、座位保持に問題があるとは示唆されていません。運転中に体幹が安定しないという情報がないため、優先順位は低いです。正しくは:麻痺の影響で運転操作に直接的な支障がある部分を補う改造を選びます。選びやすい理由:片麻痺があると体幹の安定に問題があるケースもあるため、一般論として選択肢として考えてしまうかもしれません。混同注意:座位保持の補助と運転操作の補助を混同しやすいです。
- 3. 手動運転装置は、下肢に重度の麻痺があり、アクセルやブレーキペダルを操作できない場合に、手でそれらの操作を行うための装置です。しかし、この男性はBrunnstromステージ下肢Ⅳで歩行は自立しており、感覚障害があるものの、下肢によるペダル操作が全くできないとは断定できません。むしろ、右片麻痺であるため、右足でのアクセル・ブレーキ操作が困難であることが想定されますが、この選択肢は「手動運転装置」と一般的な表現であり、左右どちらのペダル操作を補うか不明確です。左アクセルペダルへの変更の方が、より具体的かつ適切な改造になります。正しくは:右片麻痺の特性を考慮し、より具体的な改造(例:左アクセルペダルへの変更)を検討します。選びやすい理由:片麻痺があると下肢での操作が困難な場合があるため、手動運転装置が必要だと考える人もいるかもしれません。しかし、下肢Ⅳであり、完全にペダル操作が不可能とまではいえないため、他の選択肢の方がより適切です。混同注意:「手動運転装置」という広い概念と、「左アクセルペダル」のような具体的な片麻痺対応改造とを混同しやすいです。
- 4. 正解。右片麻痺があるため、右腕や右手の機能が低下している可能性があります。ハンドルノブを設置することで、左手一本でのハンドル操作が容易になり、特に旋回時などにスムーズな運転が可能になります。右手の補助的な使用や、緊急時の操作にも役立ちます。
- 5. 正解。右片麻痺がある右利き男性の場合、通常右足で操作するアクセルとブレーキペダルの操作が困難になる可能性が高いです。特に日本の車両は右アクセル・中央ブレーキが標準であるため、右足での操作が難しい場合、左足でアクセル操作ができるように左アクセルペダルを設置することは非常に有効な改造です。ブレーキは通常通り右足で踏むことができるため、両ペダルの操作が安全に行えます。
国試ポイント
脳梗塞による片麻痺患者が自動車運転を再開する際の、症状に応じた適切な自動車改造について理解しているかを問う問題です。特に、利き手・利き足、麻痺側、Brunnstromステージ、歩行能力、高次脳機能障害の有無といった情報から、具体的な改造の必要性を判断する能力が試されます。
混同注意
身体機能の補助具(移乗ボード、体幹ベルト)と、運転操作を直接的に補助する装置(手動運転装置、ハンドルノブ、左アクセル)の区別が曖昧だと誤答しやすいです。また、漠然とした「手動運転装置」と、具体的な「左アクセルペダル」のように、片麻痺の特性に合わせたより適切な改造を見極める必要があります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出題された場合、患者の『利き手・利き足』と『麻痺側』の関係、および『具体的な運転操作のどの部分に困難が生じるか』を明確に判断し、それに対応する改造を選択することが重要です。特に、アクセル・ブレーキ操作とハンドル操作に焦点を当てて検討します。
関連知識
・片麻痺患者の自動車運転評価項目(身体機能、高次脳機能、運転シミュレーター、実車評価) ・自動車運転関連法規とリハビリテーション専門職の役割 ・身体障害者向けの自動車改造の種類と機能(手動運転装置、左アクセルペダル、ハンドルノブ、旋回グリップ、ウィンカーレバー延長など) ・BrunnstromステージとADL・IADL能力の関連性