21歳の男性。大学生。1年前から様々な場面で不安感が出現し、急に動悸やめまいがして大量の汗をかくようになった。最近は特に理由もなく、いらいらして落ち着かず、窒息感や脱力感、抑うつ、吐き気がひどくなり、大学にも通えず日常生活にも支障が出るようになった。精神科クリニックを受診し、外来作業療法を受けることになった。この患者の作業療法場面でみられる特徴はどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2・3番
解説
本ケースは、パニック発作(動悸、めまい、多汗、窒息感)と全般性不安症(様々な場面での不安感、イライラ、落ち着きのなさ、脱力感、抑うつ、吐き気)の両方の特徴を持つ患者です。パニック発作時には呼吸促迫(過呼吸)が頻繁に見られ、強い不安や抑うつ状態が持続することで集中力は著しく低下します。したがって、2(呼吸の促進)と3(集中力の低下)が適切な特徴として挙げられます。他の選択肢は、統合失調症やパーソナリティ障害などで見られる特徴であり、本ケースの病態とは合致しません。
選択肢ごとの解説
- 1. パニック症や全般性不安症の患者が、作業療法場面で演技的な行動を主訴として示すことは一般的ではありません。演技性パーソナリティ障害などで見られることがあります。正しくは:演技的行動ではなく、不安に伴う身体症状や認知機能の変化、活動性の低下などが特徴として現れます。選びやすい理由:精神疾患という漠然としたイメージから、ドラマチックな行動を連想する可能性はありますが、本ケースの症状からは直接結びつきません。混同注意:ヒステリー反応や演技性パーソナリティ障害の症状と混同しやすいです。
- 2. 正解。問題文に「急に動悸やめまいがして大量の汗をかくようになった」「窒息感」と記載されており、これはパニック症の特徴的な症状です。パニック発作時には、呼吸促迫(過呼吸)がしばしば見られ、作業療法場面でもその傾向が認められる可能性があります。
- 3. 正解。問題文から、患者は全般性不安症やパニック症の症状を抱えていると考えられます。「いらいらして落ち着かず」「大学にも通えず日常生活にも支障が出るようになった」という記述は、強い不安や抑うつ状態、自律神経症状が持続することで、思考がまとまらず、集中力が著しく低下していることを示唆しています。そのため、作業療法活動への集中困難は十分に考えられます。
- 4. 常同行為は、特定の動作を無意味に繰り返す行動で、統合失調症の慢性期や自閉スペクトラム症などで見られることが多いです。本ケースのパニック症や全般性不安症の症状からは直接結びつきません。正しくは:常同行為ではなく、不安や焦燥感からくる多動や落ち着きのなさが見られる可能性はあります。選びやすい理由:「落ち着かず」という記述から、何らかの反復行動を想像するかもしれませんが、常同行為とは異なります。混同注意:目的のない反復行動(常同行為)と、不安による落ち着きのなさや多動を混同しやすいです。
- 5. 連合弛緩は、思考の論理的なつながりが失われ、話がまとまらない状態を指し、統合失調症の陽性症状(思考障害)の一つとして特徴的です。本ケースの不安症の症状とは異なります。正しくは:連合弛緩ではなく、思考制止や思考の堂々巡り、悲観的な内容へのとらわれなどが見られる可能性はあります。選びやすい理由:「落ち着かず」「日常生活に支障が出る」という記述から、思考がまとまらない状態を連想するかもしれませんが、連合弛緩はより重度の思考障害を指します。混同注意:思考制止や思考の貧困といった他の思考障害、あるいは不安による思考の混乱と混同しやすいです。
国試ポイント
精神疾患ごとの特徴的な症状を正確に理解し、ケーススタディで提示された情報から適切な症状を選択できるかが問われています。特に、不安症圏の症状と他の精神疾患の症状を鑑別できる知識が必要です。
混同注意
不安による身体症状や認知機能の変化と、統合失調症やパーソナリティ障害の症状が混同されやすい。特に、「落ち着かない」という記述から常同行為、「日常生活に支障」から連合弛緩といった、より重篤な症状を連想してしまう可能性がある。
次に同じ論点が出たら
今後同様のケースが出題された場合、まず与えられた症状から主要な精神疾患(この場合は不安症圏)を特定し、その疾患に特有の症状と、他の疾患の鑑別がポイントとなる症状を区別できるようになる必要があります。
関連知識
不安症圏(パニック症、全般性不安症、社会不安症など)の診断基準と主な症状、抑うつ状態の身体症状・精神症状、統合失調症の陽性症状・陰性症状、パーソナリティ障害の主なタイプと症状。