8歳の女児。部屋の整理整頓が苦手で物をよくなくす。学校では忘れ物が多く、授業中もじっと座っていることができない。同級生に対しておせっかいであり、余計な一言が多く、けんかが絶えない。学級担任の勧めで、両親に付き添われ精神科を受診し、外来作業療法が開始された。この児に予想される作業療法中の行動の特徴はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
問題文の女児は、「整理整頓が苦手で物をなくす」「忘れ物が多い」「授業中じっと座っていられない」「おせっかいで余計な一言が多く、けんかが絶えない」といった特徴が見られます。これらはADHD(注意欠陥・多動性障害)の主要な症状である不注意、多動性、衝動性を示唆しています。特に「おせっかい」「余計な一言が多い」「けんかが絶えない」は、衝動性の高さによる対人関係の困難を表しており、作業療法中の活動場面では、自分の番を待てずに衝動的に行動してしまうことが予想されます。したがって、「順番を待てない」は、ADHD児の行動特性として最も適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 過呼吸は、強い不安やストレス、パニック発作などに関連して生じる身体症状であり、ADHDの核となる行動特性ではありません。正しくは:不安やパニック症状が強い場合に見られますが、ADHD児の行動特性としては適切ではありません。選びやすい理由:ADHD児は感情制御が難しい場合がありますが、過呼吸はそこまで直接的な症状ではありません。混同注意:不安障害やパニック障害の症状と混同しやすいです。
- 2. ADHDの多動性は一般的に持続的であり、特定の時間帯に大きく変動するとは限りません。活動性の変動は誰にでも起こり得るものですが、ADHD児特有の明確な日内変動とは言えません。正しくは:ADHDの多動性は、むしろ持続的に認められることが多いです。選びやすい理由:一般的に子どもの活動レベルは日によって、また時間帯によって異なるため、一見正しそうに思えるかもしれませんが、ADHDに特化した行動特性ではありません。混同注意:気分障害など他の疾患の症状や、一般的な子どもの活動性と混同しやすいです。
- 3. 正解。問題文に示されている「おせっかい」「余計な一言が多い」「けんかが絶えない」といった対人関係の困難は、ADHDの核症状の一つである衝動性の表れです。衝動性が高い子どもは、ゲームや活動中に自分の番が来るまで待つことが苦手な特徴があります。
- 4. 長時間の手洗いは強迫性障害(OCD)の代表的な症状であり、不潔恐怖や汚染観念といった強迫観念に駆られて行われる行動です。ADHDの行動特性とは異なります。正しくは:これは強迫性障害の強迫行為として見られるものです。選びやすい理由:ADHD児は特定の行動にこだわりを見せることもありますが、この場合は強迫的な要素が強く、ADHDとは異なる概念です。混同注意:強迫性障害の症状と混同しやすいです。
- 5. 頻繁な瞬きは、チック症の運動チックの一種として見られることが多い症状です。ADHDとチック症は併存することもありますが、瞬き自体はADHDの主要な行動特性ではありません。正しくは:これはチック症に見られる身体症状です。選びやすい理由:ADHD児の中には落ち着きのなさから、何らかの身体的な動きを伴うケースもありますが、チックは神経学的メカニズムが異なります。混同注意:チック症の症状と混同しやすいです。
国試ポイント
ADHD(注意欠陥・多動性障害)の診断基準(DSM-5など)と、それに伴う具体的な行動特性を理解しているかどうかが問われる問題です。特に不注意、多動性、衝動性の3つの主要症状が、日常生活や作業療法場面でどのように現れるかを具体的に把握している必要があります。他の精神疾患(不安障害、強迫性障害、チック症など)の症状との鑑別も重要です。
混同注意
ADHDと、不安障害(過呼吸)、強迫性障害(長時間手洗い)、チック症(頻回まばたき)といった他の精神疾患の症状を混同しやすいです。また、発達障害の他の類型(ASDなど)の特性と混同することもあります。ADHDの衝動性と、一般的な子どものわがままや未熟さとの線引きも難しい場合があります。
次に同じ論点が出たら
次にADHDに関する問題が出た場合、不注意・多動性・衝動性の具体的な症状を問われるだけでなく、作業療法における評価項目(例: COPM, PEDI, TOPSなど)や介入方法(例: SST, 環境調整, セルフモニタリングなど)、または併存症(学習障害、ASD、チック症、不安障害など)に関する知識が問われる可能性があります。また、学齢期のADHD児が学校生活や家庭生活で直面する具体的な課題とその対応についても確認しましょう。
関連知識
ADHDは、不注意、多動性、衝動性を特徴とする神経発達症の一つです。DSM-5では、主に不注意優勢型、多動・衝動性優勢型、混合型に分類されます。小児期に発症し、学業、社会生活、職業生活に影響を及ぼすことがあります。作業療法では、集中力の向上、衝動性の制御、対人スキルの獲得、自己管理能力の育成などが目標となります。具体的な介入としては、構造化された環境設定、感覚統合療法、認知行動療法、ソーシャルスキルトレーニング(SST)などがあります。薬物療法と併用されることも多いです。