23歳の女性。パーソナリティ障害。高校生のころから、わざとらしい言動や芝居がかった振る舞いで、たびたび友達と喧嘩になっていた。高校卒業後は、対人関係のトラブルで仕事が長続きせず、職を転々とした。最近、感情が不安定で、派手な外観や見栄を張るような言動が目立ち、無断外泊を繰り返すため、母親に連れられて精神科を受診した。情緒の安定を目的に作業療法が処方された。作業療法場面で予想される行動特徴はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
演技性パーソナリティ障害の人は、他者の関心を惹きつけるために、感情を大げさに表現したり、芝居がかった行動を取ったりします。また、自己評価が低く、他者からの承認や注目に強く依存するため、他者の意見や暗示に流されやすい「被暗示性」が顕著に見られます。この患者さんの記述には、わざとらしい言動、芝居がかった振る舞い、派手な外観、見栄を張る言動といった演技性パーソナリティ障害の特徴が明確に示されており、これらはいずれも被暗示性と関連が深い行動です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。演技性パーソナリティ障害の診断基準や特徴として、他者の影響を受けやすく、暗示にかかりやすい(被暗示性)ことが挙げられます。注目を集めるために他者の意見や期待に沿った行動を取りやすい傾向があります。
- 2. 演技性パーソナリティ障害の人は、注目を集めたいという欲求が強く、人との交流や集団活動をむしろ好む傾向があります。単独での活動は注目が得られにくいため、あまり好まないことが多いです。正しくは:他者との交流や集団活動を好む。選びやすい理由:他のパーソナリティ障害や精神疾患では単独活動を好むケースもあるため、一般論として考えた場合、誤って選んでしまう可能性があります。混同注意:シゾイドパーソナリティ障害や回避性パーソナリティ障害など、他者との交流を避ける傾向のあるパーソナリティ障害と混同する可能性があります。
- 3. 演技性パーソナリティ障害の人は、感情表現が過剰で劇的であることが特徴であり、平板化とは真逆の傾向を示します。注目を集めるために、感情を誇張して表現することが多いです。正しくは:感情表現が過剰で劇的である。選びやすい理由:統合失調症など他の精神疾患で見られる特徴であるため、知識の混同があると選びやすいです。混同注意:統合失調症の陰性症状や、一部のうつ病、自閉スペクトラム症など、感情の平板化が見られる疾患と混同する可能性があります。
- 4. 依存性パーソナリティ障害は過度な依存を示しますが、演技性パーソナリティ障害では、注目を集めるための操作的な行動は見られるものの、純粋な依存というよりは、注目確保のためのパフォーマンスとしての振る舞いが主です。また、関係が期待通りでなければすぐに冷めたり、関係者を理想化したりする傾向があるため、「過度に依存」とはニュアンスが異なります。正しくは:注目を集めるために作業療法士の関心を引こうとする行動が見られることがあるが、純粋な依存とは異なる。選びやすい理由:対人関係の問題が顕著であるため、助けを求める行動と解釈して、誤って選んでしまう可能性があります。また、境界性パーソナリティ障害と混同すると、依存的な行動が連想されやすいです。混同注意:依存性パーソナリティ障害や境界性パーソナリティ障害と混同する可能性があります。
- 5. 作業工程の細部へのこだわりは、強迫性パーソナリティ障害や自閉スペクトラム症などの特徴です。演技性パーソナリティ障害の人は、注目を集めるための派手な行動や感情表現を優先するため、細部にこだわるよりも、全体的な印象や他者からの評価を重視する傾向があります。正しくは:全体的な印象や他者からの評価を重視し、細部にこだわることは少ない。選びやすい理由:完璧主義や真面目な性格と混同した場合、選びやすくなるかもしれません。混同注意:強迫性パーソナリティ障害や自閉スペクトラム症(ASD)と混同する可能性があります。
国試ポイント
パーソナリティ障害の各類型の特徴を、具体的な事例と結びつけて理解しているかが問われる問題です。特に、DSM-5におけるパーソナリティ障害の診断基準や、それぞれの障害に特有の行動様式が作業療法場面でどのように観察されるかを理解しておくことが重要となります。
混同注意
各パーソナリティ障害の類似点と相違点、特にB群(境界性、自己愛性、反社会性、演技性)パーソナリティ障害の鑑別が難しい場合があります。例えば、境界性パーソナリティ障害は不安定な対人関係や感情の変動が見られますが、演技性パーソナリティ障害は注目への欲求と被暗示性がより際立ちます。依存性パーソナリティ障害との混同も起こりやすいですが、演技性パーソナリティ障害の「依存」は注目を集めるための手段であり、純粋な他者への頼りとは異なります。
次に同じ論点が出たら
設問から、まずどのパーソナリティ障害が示唆されているかを正確に判断します(キーワード:わざとらしい言動、芝居がかった振る舞い、対人関係のトラブル、感情不安定、派手な外観、見栄を張る言動、無断外泊、注目欲求)。その上で、そのパーソナリティ障害の主要な特徴と一致する選択肢を選びます。特に「情緒の安定」を作業療法の目的にしている点も考慮に入れます。
関連知識
DSM-5におけるパーソナリティ障害のクラスター分類(A群:奇妙・風変わり、B群:感情的・劇的・移り気、C群:不安・恐れ)と、それぞれの障害の診断基準。演技性パーソナリティ障害の診断基準(DSM-5)には、1.注目を浴びないことに不快感、2.不適切な誘惑的・挑発的な対人関係、3.浅薄で移ろいやすい感情表現、4.身体的印象による注目、5.過度に印象主義的で細部に欠ける話し方、6.自己劇化、芝居がかった態度、感情の誇張、7.被暗示性が高い、8.対人関係を実際よりも親密と考える、などが含まれます。また、各パーソナリティ障害に対する作業療法のアプローチの原則も重要です。