30歳の男性。単純エックス線写真(別冊No. 3)を別に示す。この骨折で損傷されていると推測されるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
橈骨頭骨折は肘関節における重要な骨折であり、橈骨頭は肘関節の屈伸および前腕の回内外運動に関与します。橈骨頭と尺骨近位端の間で関節を形成しているのが上橈尺関節であり、この関節の安定性を保つのが橈骨輪状靱帯です。橈骨頭に骨折が生じるような強い外力が加わった場合、高確率で橈骨輪状靱帯にも損傷が及ぶため、選択肢3が最も適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 上腕三頭筋腱は肘関節の後方に位置し、上腕骨顆上骨折や肘頭骨折など後方からの外力による損傷が考えられますが、橈骨頭骨折とは直接的な関連が薄いです。正しくは:橈骨頭骨折では、上腕三頭筋腱の損傷は一般的ではありません。選びやすい理由:肘関節周辺の主要な筋腱であるため、選択肢として考えやすいかもしれません。混同注意:肘関節周囲の他の骨折に伴う筋腱損傷と混同しやすいです。
- 2. 上腕二頭筋腱は肘関節の前面を走行し、主に回外・屈曲に関与します。橈骨頭骨折との直接的な関連は少なく、上腕骨近位部骨折や腱の断裂などで損傷が考えられます。正しくは:橈骨頭骨折では、上腕二頭筋腱の損傷は一般的ではありません。選びやすい理由:これも肘関節周辺の主要な筋腱であり、選択肢としてもっともらしく感じるかもしれません。混同注意:上腕二頭筋長頭腱の断裂や、他の部位の骨折に伴う損傷と混同しやすいです。
- 3. 正解。橈骨頭骨折は、肘関節に外力が加わることで橈骨頭が尺骨に対して押し込まれる形になることが多く、その際、橈骨頭と尺骨近位端を連結し、橈骨頭の安定化に重要な役割を果たす橈骨輪状靱帯が同時に損傷される可能性が高いです。特に橈骨頭の転位がある場合、高頻度で損傷が見られます。
- 4. 方形回内筋は前腕の遠位部(手首に近い方)に位置し、橈骨と尺骨の間を結び回内運動に関与します。橈骨頭骨折は前腕の近位部(肘に近い方)に発生するため、方形回内筋が損傷される可能性は非常に低いです。正しくは:方形回内筋は橈骨頭骨折とは解剖学的に離れており、直接損傷されることは通常ありません。選びやすい理由:回内運動に関わる筋肉であるため、前腕の機能と関連付けることで選択肢に迷うかもしれません。混同注意:前腕の他の回内外筋(円回内筋など)や、前腕遠位部の骨折(コーレス骨折など)と混同しやすいです。
- 5. 長掌筋腱は前腕掌側の手関節付近を走行し、図の骨折で損傷が推測される構造ではありません。
国試ポイント
橈骨頭骨折に合併しやすい周囲組織の損傷に関する知識が問われています。特に靱帯損傷は骨折の転位や不安定性に大きく影響するため、重要視されます。
混同注意
肘関節周囲の様々な骨折や靱帯損傷の組み合わせが考えられるため、それぞれの解剖学的部位と機能的役割を正確に理解しておく必要があります。例えば、側副靱帯損傷や、上腕骨顆上骨折に伴う神経・血管損傷などと混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が問われた場合、特定の骨折部位に対し、周囲のどの神経、血管、筋腱、靱帯が損傷されやすいかを解剖学に基づいて判断できるかどうかがポイントになります。画像所見から骨折の形態や転位の有無を読み取り、関連する軟部組織の損傷リスクを推測する能力も重要です。
関連知識
橈骨頭骨折の分類(Mason分類など)、肘関節の安定化機構(骨性安定性、靱帯性安定性、筋性安定性)、橈骨輪状靱帯の機能と損傷時の症状(回外制限など)。肘関節脱臼との合併や、Essex-Lopresti損傷(橈骨頭骨折、橈尺関節脱臼、遠位橈尺関節の不安定性)のような複合損傷も関連知識として重要です。