Parkinson病患者30名に対してリズミカルな運動を導入した。導入1週後の歩行速度の変化について、統計処理を実施したところ、有意差(p<0.05)を認めた。選択した統計処理で適切なのはどれか。なお、歩行速度のデータは正規分布を示す。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
問題文では「Parkinson病患者30名に対してリズミカルな運動を導入し、導入1週後の歩行速度の変化を評価した」とあり、これは同一対象者の介入前後(2時点)の比較であることを示しています。また、「歩行速度のデータは正規分布を示す」という条件が明記されています。これらの条件(2つの対応のある群、量的データ、正規分布)を満たす場合に最も適切なパラメトリック検定は、対応のあるt検定です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。この検定は、同じ対象者から2つの時点(介入前と介入後など)で測定された量的データ(歩行速度)の平均値に統計的に有意な差があるかを比較する際に使用します。問題文の「導入1週後の歩行速度の変化」は、介入前後の比較であり、データが正規分布を示すため、対応のあるt検定が適切です。
- 2. 一元配置分散分析は、3つ以上の独立した群の平均値を比較する際に用いられるパラメトリック検定です。本問題では、単一の群(パーキンソン病患者30名)における介入前後の2時点の比較であり、3つ以上の独立した群を比較する状況ではありません。正しくは:3つ以上の独立した群の平均を比較する場合に用いる。選びやすい理由:平均の比較を行う点では似ていますが、「独立した」「3つ以上」という条件を満たさないため誤りです。混同注意:多数の群間比較におけるt検定との使い分け。
- 3. Kruskal-Wallis検定は、3つ以上の独立した群の中央値を比較する際に用いられる非パラメトリック検定です。データが正規分布しない場合や順序尺度の場合に適用されます。本問題では正規分布するデータであり、かつ2時点の対応のある比較であるため不適切です。正しくは:正規分布しない3つ以上の独立した群の中央値を比較する場合に用いる。選びやすい理由:複数の群の比較に用いる点は似ていますが、データが正規分布せず、かつ独立した群である場合に限定されます。混同注意:一元配置分散分析(パラメトリック版)、対応のないデータ、非正規分布。
- 4. Mann-WhitneyのU検定は、2つの独立した群の中央値を比較する際に用いられる非パラメトリック検定です。データが正規分布しない場合や順序尺度の場合に適用されます。本問題では、同じ患者の介入前後の比較(対応のあるデータ)であり、かつデータが正規分布しているため不適切です。正しくは:正規分布しない2つの独立した群の中央値を比較する場合に用いる。選びやすい理由:2群の比較という点は似ていますが、独立した群であること、非正規分布データに用いる点が異なります。混同注意:対応のないt検定(パラメトリック版)、対応のあるデータ、非正規分布。
- 5. Wilcoxonの符号順位検定は、2つの対応のある群(同一被験者の前後、またはペアを組んだ対象など)の中央値を比較する際に用いられる非パラメトリック検定です。データが正規分布しない場合や順序尺度の場合に適用されます。本問題では対応のある比較である点は共通しますが、データが正規分布するため、パラメトリック検定である対応のあるt検定が優先されます。正しくは:正規分布しない2つの対応のある群(同一被験者の前後など)の中央値を比較する場合に用いる。選びやすい理由:2つの対応のある群を比較するという点は対応のあるt検定と共通していますが、こちらは非正規分布データに用いる点が異なります。混同注意:対応のあるt検定(パラメトリック版)、正規分布。
国試ポイント
統計学的検定手法の選択に関する基本的な知識が問われています。特に、データの種類(量的、質的)、分布(正規分布か否か)、比較する群の数、および群間の関係性(対応があるか、独立しているか)によって、適切な検定方法が異なることを理解しているかが重要です。
混同注意
パラメトリック検定とノンパラメトリック検定の使い分け、対応のあるデータと対応のないデータの区別、そして比較する群の数が2つか3つ以上かによる検定方法の違い(t検定と分散分析、それぞれのノンパラメトリック版)が混同しやすいポイントです。
次に同じ論点が出たら
次に同様の問題が出題された場合、以下の点を確認して適切な統計検定を判断します。1. データ型: 量的データか(数値で表せるか)? それとも質的データか(カテゴリで表されるか)? 2. データの分布: 正規分布しているか? 3. 比較対象: 何を比較しているか?(例:平均、中央値、割合) 4. 群の数: 比較する群や時点の数は2つか?それとも3つ以上か? 5. 群の関係性: 比較する群は対応があるか(同一人物の前後、ペアなど)?それとも独立しているか(異なるグループ)?
関連知識
データの尺度水準(名義尺度、順序尺度、間隔尺度、比率尺度)、パラメトリック検定の前提条件(正規性、等分散性など)、有意水準(p値)の解釈、帰無仮説と対立仮説の概念。