70歳の女性。脳出血による右片麻痺。Brunnstrom法ステージ上肢Ⅳ、下肢Ⅳ。独居にて自宅で生活し、屋内は短下肢装具と杖を使用して歩行可能である。最近歩行時にふらつきが生じるなど転倒への不安が強まったことから、通所リハビリテーションを利用することとなった。通所時の転倒リスク評価で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第60回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
70歳女性、脳出血後右片麻痺患者で、独居、杖歩行可能だが転倒不安があるという状況から、転倒リスクを総合的に評価できる検査が必要とされます。TUGは、座る、立ち上がる、歩く、方向転換する、座るという一連の動作を測定することで、バランス能力、移動能力、そして転倒リスクを簡便かつ客観的に評価できます。カットオフ値が設定されており、転倒リスクの高い患者を特定するのに非常に有用であるため、本症例の転倒リスク評価として最も適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。TUGは、椅子からの立ち上がり、3mの歩行、方向転換、再び着座という一連の動作を要するテストです。高齢者や神経疾患患者の移動能力、バランス能力、そして転倒リスクを簡便かつ客観的に評価できるため、歩行時のふらつきと転倒不安を訴える本症例の転倒リスク評価として最も適切です。
- 2. NIHSSは脳卒中の重症度を評価するためのスケールであり、意識レベル、視力、顔面麻痺、運動機能、感覚、小脳機能、失語症などを多項目で評価します。主に脳卒中急性期の神経学的症状の程度を把握するために用いられ、転倒リスクの直接的な評価指標ではありません。正しくは:脳卒中の急性期における神経症状の重症度を評価します。選びやすい理由:患者が脳出血であるため、脳卒中に関連するスケールとして選択肢として考えてしまう可能性があります。しかし、この患者は急性期を過ぎて生活期にあり、転倒リスクの評価が目的です。混同注意:他の機能評価スケール(FIMやBarthel Indexなど)や、より慢性期の障害評価と混同しやすいかもしれません。
- 3. UPDRSはパーキンソン病の重症度や進行度を評価するためのスケールで、非運動症状、日常生活動作、運動症状、合併症の4つのパートから構成されます。本症例は脳出血による右片麻痺であり、パーキンソン病の診断ではないため、このスケールは適切ではありません。正しくは:パーキンソン病の重症度と進行度を評価します。選びやすい理由:運動機能の評価スケールであるため、運動に関連する問題として選んでしまうかもしれませんが、対象疾患が異なります。混同注意:他の神経疾患特異的評価スケール(例えばALSFRS-Rなど)と混同しやすいかもしれません。
- 4. 改訂タディユースケールは、主に痙縮の評価に用いられます。関節の可動域と筋緊張の変化を複数の速度で受動的に動かすことで評価し、痙縮の程度を数値化します。転倒リスクは痙縮によって影響を受ける可能性はありますが、これは直接的な転倒リスクの総合評価指標ではありません。正しくは:痙縮の程度を評価します。選びやすい理由:脳出血による片麻痺患者には痙縮が生じることが多いため、関連性の高さから選んでしまうかもしれませんが、問題の目的は「転倒リスク評価」です。混同注意:MAS(Modified Ashworth Scale)など、他の痙縮評価スケールと混同しやすいです。
- 5. 生理学的コスト指数(PCI)は、歩行時の心拍数と安静時心拍数を用いて、歩行に必要なエネルギー消費量や効率を評価する指標です。歩行の効率性を示すものであり、転倒リスクの有無や程度を直接的に評価するものではありません。正しくは:歩行のエネルギー効率を評価します。選びやすい理由:歩行に関連する指標であるため、一見すると選択肢として魅力的かもしれませんが、転倒リスク自体を直接評価するものではありません。混同注意:RPE(自覚的運動強度)やVO2maxなどの運動負荷や身体能力の指標と混同しやすいかもしれません。
国試ポイント
本問題は、脳卒中後のリハビリテーションにおいて、患者の状況に応じた適切な評価指標を選択できるか否かを問うものです。特に、転倒不安を訴える患者に対して、どのような指標を用いるべきかという臨床的な判断能力が求められます。各評価スケールの目的と対象疾患、評価項目を正確に理解していることが重要です。
混同注意
TUGはFIMやBarthel IndexなどのADL評価、FRT(Functional Reach Test)やBBS(Berg Balance Scale)などのバランス評価と混同されやすいですが、TUGは「移動能力」と「転倒リスク」を複合的に評価する点が特徴です。
次に同じ論点が出たら
次にこの論点が出た場合、「転倒リスクを直接評価する」「移動能力を総合的に評価する」「患者の自覚的な不安を客観化する」といったキーワードに注目し、どの評価が最もフィットするかを判断します。疾患特異的スケールや単一機能の評価スケールは、目的が転倒リスク総合評価であれば不適切と判断する視点も重要です。
関連知識
転倒リスク評価にはTUGの他に、FRT、BBS、POMA(Performance-Oriented Mobility Assessment)、フォールズ・エフィカシー・スケール(FES)などがあります。これらも合わせて理解しておくことが重要です。脳卒中患者の評価では、ブルンストロームステージ、FIM、MASなどもよく用いられます。