17歳の男子。2か月前の体育の授業中に左膝の痛みに気付いたが、放置していた。最近は歩行時の左膝の痛みが出現したため病院を受診した。精査の結果、左大腿直筋の平滑筋肉腫と診断され、左大腿四頭筋の広範囲切除術が施行された。術後の左膝の関節可動域は屈曲120°、伸展-10°でMMTは屈曲4、伸展3であった。最も適切な補装具はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
この患者は左大腿四頭筋の広範囲切除術を受けたため、膝関節の伸展筋力がMMT3と低下しており、伸展可動域も-10°と完全伸展が困難な状態です。この状況では、歩行時に膝折れを起こしやすく、膝関節の不安定性が問題となります。両側金属支柱付膝装具は、膝関節の側方安定性を確保し、伸展位での支持性を向上させることで、歩行時の膝関節の不安定性を補い、安全な歩行を可能にします。股関節機能はMMT4と比較的保たれているため、長下肢装具は不要であり、短下肢装具では膝関節のサポートができません。
選択肢ごとの解説
- 1. 膝の伸展筋力がMMT3で、関節可動域も確保されているため、歩行は可能であり、車椅子は過剰な支援となります。正しくは:歩行が困難で日常生活全般に支障がある場合に選択されます。選びやすい理由:大腿四頭筋の広範囲切除という手術の大きさに着目し、歩行が非常に困難だと誤解した場合。混同注意:下肢の支持性が著しく低下し、立位保持や歩行が不可能なケース。
- 2. PTB(Patellar Tendon Bearing)式免荷装具は、膝関節や下腿の荷重を免荷する目的で使用されますが、この患者では膝関節の支持性の問題が主であり、免荷が必要な骨折や関節炎などの状態ではありません。また、膝関節の支持性向上には直接寄与しません。正しくは:下腿の骨折や潰瘍などで下腿への荷重を避ける必要がある場合に適用されます。選びやすい理由:下肢の筋力低下があるため、何らかの免荷が必要だと考えた場合。混同注意:膝関節ではなく、下腿自体の保護や免荷が必要な状況で用いる装具。
- 3. 正解。大腿四頭筋の広範囲切除により膝関節の伸展筋力(MMT3)が低下し、伸展制限(-10°)も認められるため、膝関節の安定性(特に伸展方向)が損なわれています。両側金属支柱付膝装具は、膝関節の側方安定性と過伸展・過屈曲の制限、および支持性の向上に寄与し、歩行時の膝折れを予防し、安全な歩行をサポートするのに最も適しています。選びやすい理由:両側金属支柱付長下肢装具と迷うが、股関節機能は保たれているため膝関節のみのサポートで十分と判断できる。混同注意:膝関節のみの機能障害に対する装具と、足関節や股関節も含む下肢全体の機能障害に対する装具の違い。
- 4. 短下肢装具は足関節の安定性や運動制御を目的とするものであり、膝関節の筋力低下や伸展制限による不安定性に対しては、その機能を補うことができません。この患者の問題は膝関節にあります。正しくは:足関節の機能障害(例:下垂足、不安定性)がある場合に選択されます。選びやすい理由:装具をつけることで症状が改善すると漠然と考えた場合、部位を特定せずに選択してしまう可能性。混同注意:膝関節と足関節のそれぞれの機能障害に対する装具の種類。
- 5. 長下肢装具は、膝関節だけでなく股関節を含めた下肢全体の支持性や安定性を高める目的で使用されます。この患者のMMTは股関節屈曲が4、膝関節屈曲が4と比較的良好であり、股関節には重篤な機能障害が示唆されていません。そのため、長下肢装具はオーバースペックであり、患者の残存機能を生かせず、かえって歩行を阻害する可能性があります。正しくは:股関節や体幹の支持性にも問題がある場合や、膝伸展筋力が著しく低い(MMT2以下など)場合に選択されます。選びやすい理由:大腿四頭筋の広範囲切除という情報から、膝関節の支持性が極めて低いと考え、より強力な支持が必要だと誤解した場合。混同注意:膝関節のみのサポートで足りるか、それとも股関節を含めた全体的なサポートが必要かの判断。
国試ポイント
膝関節の伸展筋力低下(特に大腿四頭筋損傷後)と関節可動域制限がある患者に対し、その機能障害を補うための適切な補装具を選択させる知識が問われます。各装具の適応部位と目的を正確に理解しているかが重要です。
混同注意
膝装具と長下肢装具の適応範囲の違い(股関節機能障害の有無)、およびPTB式免荷装具と膝関節支持性装具の目的の違い。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず問題となっている主要な関節(今回は膝関節)と、その具体的な機能障害(筋力低下、可動域制限、不安定性)を特定する。次に、選択肢の各装具がどの関節のどの機能障害を補うことを目的としているかを検討し、患者の状態に最も合致するものを選ぶ。
関連知識
各装具の名称、構造、適応疾患・病態、および装着による効果を理解すること。特に、長下肢装具、膝装具、短下肢装具の主な適用と、筋力低下や関節可動域制限の程度による選択基準。