70歳の男性。脳梗塞による右片麻痺。Brunnstrom法ステージは上肢Ⅱ、下肢Ⅲ。重度の感覚障害と右肩関節に亜脱臼を認める。T字杖で室内歩行は自立している。ADL指導で最も正しいのはどれか。
画像の選択肢を選ぶと答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
右片麻痺で上肢BrunnstromステージII、重度の感覚障害、右肩関節亜脱臼がある70歳の男性がシャワーを浴びる際に、麻痺側から袖を通すことで健側の介助を容易にし、肩関節への負担を軽減しながら安全に実施できるため、この方法が最も適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 画像では健側から起き上がろうとしており、麻痺側である右片麻痺の患者が健側(左側臥位)でベッドから起き上がる動作は、麻痺側上肢が下敷きになりやすく、肩関節亜脱臼を悪化させる危険性があるため不適切です。また、麻痺側を上にして起き上がるのが原則です。正しくは:麻痺側(右)を上にして、健側(左)の手で麻痺側の手と肩を支えながら、健側の肘と体幹を使い起き上がる。選びやすい理由:健側を先に動かす方が安定しやすいと考えるため。混同注意:ベッド上の体位変換と起き上がり動作の原則。
- 2. 画像では浴槽の縁に座っており、手すりも使用していますが、右片麻痺で重度の感覚障害、右肩関節亜脱臼のある患者が浴槽に入る際には、麻痺側下肢の安定性が低く、浴槽内で転倒するリスクが高いです。特に浴槽縁に座って麻痺側下肢から入れる動作は不安定であり、麻痺側の下肢が不随意に外側へ滑り落ちてしまうリスクがあり危険です。また浴槽の出入りには浴槽台やバスボードの使用が望ましいです。正しくは:バスボードや浴槽台を使用し、麻痺側(右)の下肢からゆっくりと湯に浸かる。介助者がいる場合は、支えながら行う。選びやすい理由:手すりを使っているため安全と錯覚しやすいため。混同注意:入浴動作における安全対策の考慮。
- 3. 正解。画像では、麻痺側である右腕からシャツの袖を通しており、これは片麻痺患者の着衣の基本原則「麻痺側から着て健側から脱ぐ」に則った正しい方法です。右片麻痺、右肩関節亜脱臼を認める患者にとって、麻痺側である右腕から袖を通すことで、健側の手を使って麻痺側の腕を誘導しやすくなり、肩関節への負担を最小限に抑えつつ安全に衣服を着ることができます。混同注意:着衣・脱衣の順序。
- 4. 画像では床から立ち上がろうとしていますが、右片麻痺でBrunnstromステージ下肢III(共同運動が出現し始める段階)、重度感覚障害がある患者が床から立ち上がるのは、下肢の支持性が不十分で不安定であり、転倒リスクが高く、非常に困難な動作です。T字杖で室内歩行自立という状態から、この体勢は非常にリスクが高いと考えられます。正しくは:ベッドや椅子など支持が得られる場所を利用して、安定した姿勢で立ち上がる。介助が必要であれば介助を行う。選びやすい理由:自立を目指すという観点から、あらゆる動作を自力で行うのが良いと誤解しやすいため。混同注意:生活環境や残存機能に応じた安全な立ち上がり方法。
- 5. 画像ではT字杖を使用し、健側である左脚から階段を上ろうとしています。右片麻痺の患者が階段を上る際は「良い足(健側)から昇り、悪い足(麻痺側)から降りる」が基本です。しかし、画像では杖と健側下肢を同時に上げており、次に麻痺側下肢を上げているため、安定性に欠け危険です。特にT字杖使用で重度感覚障害があるため、足元の確認が不十分になりやすく転倒のリスクが高いです。手すりがある場合は必ず手すりを使用し、麻痺側下肢を健側下肢の横に引き上げて揃えるように登る方が安全です。正しくは:手すりがある場合は手すりを利用し、健側(左)の足から一段上がり、杖と麻痺側(右)の足を同じ段に揃える。この動作を繰り返して上る。選びやすい理由:杖を使っているため安全と思われがちだが、動作の順序が不適切であるため。混同注意:階段昇降の基本原則(特に杖使用時)。
国試ポイント
片麻痺患者のADL指導における着脱衣動作の介助方法と禁忌肢位の理解。
混同注意
麻痺側からの着脱衣を「麻痺側を先に動かす」と誤解し、介助の負担を増やす可能性がある。重要なのは、着脱の動作順序を麻痺側から始めることで、健側の機能を利用しやすくすることである。
次に同じ論点が出たら
同様の症例問題では、患者の麻痺の程度(BrunnstromステージやMMTなど)、感覚障害の有無、関節の状態(亜脱臼など)を詳細に確認し、それらの情報から安全かつ効率的な動作方法が指導されている選択肢を選ぶ。
関連知識
脳卒中片麻痺患者のADL指導では、可能な限り自立を促し、残存機能の活用と二次的合併症の予防を重視する。上肢BrunnstromステージIIでは随意運動がほとんどないか、共同運動パターンが出現し始める段階であるため、麻痺側上肢の積極的な運動は困難であり、介助が不可欠となる。また、重度感覚障害があるため、麻痺側に対する意識が薄く、損傷のリスクが高い。