間質性肺疾患患者に対する理学療法で最も適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
間質性肺疾患では、肺の線維化により肺容量が減少し、呼吸仕事量が増加するため、呼吸筋、特に吸気筋に過負荷がかかりやすいです。これにより吸気筋の疲労や筋力低下が生じ、呼吸困難感が増悪します。吸気筋トレーニングは、呼吸筋力と持久力を向上させ、呼吸困難感を軽減し、運動耐容能の改善に寄与するため、間質性肺疾患の理学療法において重要な要素です。
選択肢ごとの解説
- 1. 間質性肺疾患は、肺胞壁の炎症や線維化を特徴とし、多量の喀痰産生を伴うことは稀であるため、体位排痰法が第一選択となることは少ないです。主に気管支拡張症や嚢胞性線維症など、多量の粘稠な痰を伴う疾患に適用されます。正しくは:喀痰の貯留が問題となっている場合に検討します。しかし、間質性肺疾患では一般的に適応とならないことが多いです。選びやすい理由:呼吸器疾患全般の理学療法としてイメージしやすい選択肢であるため、安易に選んでしまう可能性があります。混同注意:喀痰が多い閉塞性肺疾患(COPDなど)や気管支拡張症に対する理学療法と混同しやすいです。
- 2. 正解。間質性肺疾患では、拘束性換気障害により呼吸仕事量が増大し、それに伴う呼吸困難感や呼吸筋疲労が生じやすいです。吸気筋トレーニングは、呼吸筋力を向上させ、呼吸効率を改善し、呼吸困難感を軽減する効果が期待できるため、適切な理学療法の一つです。
- 3. 間質性肺疾患の患者さんでは、活動性低下や慢性炎症により、全身の骨格筋、特に上肢や下肢の筋力低下が生じやすいです。筋力強化運動は、全身持久力やQOLの改善に有効であり、禁忌でない限り積極的に行うべきです。正しくは:上肢の筋力強化運動は、患者さんの状態に合わせて積極的に実施します。選びやすい理由:呼吸困難が強い患者さんに対して、上肢運動が呼吸筋への負担を増大させると考えるかもしれませんが、適切な強度と監視下であれば安全に実施でき、ADL向上に寄与します。混同注意:重度の呼吸困難や急性増悪期など、運動が禁忌となる状態と混同しやすいです。
- 4. 神経筋電気刺激療法 (NMES) は、筋力低下が著しい、または自主的な運動が困難な患者さんの筋力維持・向上に有効な手段であり、間質性肺疾患患者さんの廃用症候群対策として選択肢となり得ます。一律に「行わない」とするのは不適切です。正しくは:神経筋電気刺激療法は、筋力低下が著しい患者さんや運動が困難な患者さんに対して、選択肢の一つとして検討します。選びやすい理由:電気刺激が呼吸器系に悪影響を及ぼすのではないか、という漠然とした不安から不適当だと考えてしまうかもしれません。混同注意:ペースメーカー装着者など、NMESが禁忌となる特定の病態と混同しやすいです。
- 5. SpO2 60%は高度な低酸素血症を示し、生命維持に危険なレベルです。このような状態で有酸素運動を目標にすることは絶対に避けるべきです。通常、SpO2が88-90%を下回らないように酸素療法を調整し、安全な範囲で運動を実施します。正しくは:有酸素運動は、SpO2が安全域(通常90%以上)を維持できるよう、必要に応じて酸素療法を行いながら実施します。SpO2 60%は運動中止の目安となる低値です。選びやすい理由:運動中のSpO2低下は間質性肺疾患の特徴であるため、ある程度の低下は許容されると誤解する可能性があります。しかし、60%は明らかに許容範囲外の危険な数値です。混同注意:運動時の低酸素血症に対する正しい対応(酸素吸入の調整、運動強度や時間の見直し)と、危険な低酸素状態での運動目標を混同しやすいです。
国試ポイント
間質性肺疾患の病態生理(拘束性換気障害、呼吸筋疲労)を理解し、それに基づいた適切な理学療法介入(呼吸筋トレーニング、運動療法)を選択できるか、また不適切な介入(排痰法、危険なSpO2目標)を除外できるかが問われます。
混同注意
間質性肺疾患と閉塞性肺疾患(COPD)の理学療法の違い、特に喀痰管理の必要性。全身運動の必要性と、重症度に応じた運動禁忌の判断。運動時のSpO2管理の適切な基準。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出た場合、間質性肺疾患患者の個々の病態(病期、重症度、合併症、併存疾患)を考慮し、運動負荷量、酸素流量、運動継続の可否を判断できるかが問われる可能性があります。また、具体的な呼吸筋トレーニングの方法や、他の呼吸補助具・呼吸介助法の適応も問われるかもしれません。
関連知識
間質性肺疾患の病態生理と症状(呼吸困難、乾性咳嗽、努力性呼吸)。拘束性換気障害に対する理学療法アプローチ(呼吸筋トレーニング、呼吸パターン訓練)。全身の廃用症候群予防と運動療法の効果(有酸素運動、筋力トレーニング)。呼吸リハビリテーションにおける酸素療法の適応と運動中のSpO2モニタリング。体位排痰法の適応疾患。