52歳の男性。交通事故による下腿切断。完成した義足を図に示す。立脚後期に膝折れが生じた。原因で正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
ソケットの初期屈曲角が大きすぎる場合、義足全体の重心線が膝関節の前方を通りやすくなります。これにより、立脚後期で膝関節に屈曲モーメントが強く作用し、膝関節の安定性が低下して膝折れが発生しやすくなります。下腿義足のアライメント調整において、初期屈曲は膝関節の屈曲拘縮への対応や、ソケット前縁部への圧力軽減といった目的で設定されますが、過度な設定は膝折れの原因となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 前足部が硬すぎると、立脚後期に足関節の背屈が制限され、膝関節は伸展傾向になります。これにより、膝折れではなく膝の過伸展(反張膝)が生じやすくなります。正しくは:前足部の硬さ調整。選びやすい理由:足部に関する選択肢なので関連性があるように見えるかもしれませんが、膝折れとは逆のメカニズムです。混同注意:前足部が硬いと、ロッキング・メカニズムが早期に働きにくくなり、結果的に膝が伸展しにくくなるのではないかと混同しやすいです。しかし、地面との接地が硬すぎることで、膝は伸展方向へモーメントを受けます。
- 2. 靴の踵が低すぎると、義足足部が相対的に底屈位となり、身体重心線が膝関節よりも後方を通る可能性が高まります。これにより、膝折れではなく膝の過伸展(反張膝)が生じやすくなります。正しくは:適切な踵の高さの靴を選ぶか、義足足部の調整。選びやすい理由:踵の高さは重心線に影響するため、膝の安定性に影響を与えるのは事実ですが、膝折れとは逆の効果をもたらします。混同注意:踵が高いと膝折れを起こしやすくなることを知っていると、その逆の踵が低い場合と混同しがちです。
- 3. 義足足部が底屈しすぎている場合、身体重心線が膝関節よりも後方を通る可能性が高まります。これにより、膝折れではなく膝の過伸展(反張膝)が生じやすくなります。正しくは:足部の角度調整(背屈方向へ)。選びやすい理由:足部の位置は膝関節の安定性に大きく影響するため、関係があるように思えますが、膝折れとは逆の現象を引き起こします。混同注意:足部の位置と膝のモーメントアームの関係が複雑で、底屈がどの方向のモーメントを生むか混同しやすいです。底屈位では、義足が地面に接すると重心線が膝より後方に行きやすくなります。
- 4. ソケットが足部に対して後方にある場合(前方オフセット)、膝関節に対する地面反力作用線が相対的に前方を通ることになり、膝関節は伸展傾向(安定化)になります。これにより膝折れは抑制されます。正しくは:ソケットを足部に対して前方へ調整する。選びやすい理由:アライメントのずれは膝の不安定性に直結するため、一見正しそうに見えます。混同注意:ソケットと足部の相対的な位置関係が、膝関節の屈曲・伸展どちらのモーメントを生じさせるか混同しやすいです。膝関節に対する地面反力作用線の位置が重要です。
- 5. 正解。ソケットの初期屈曲角が大きすぎる場合、つまりソケットが前方へ傾斜しすぎていると、義足全体の重心線が膝関節より前方を通る傾向になります。立脚後期において、膝関節がより屈曲位をとりやすくなり、安定性が低下し、結果として膝折れが生じやすくなります。正しくは:ソケットの初期屈曲角を減少させる(伸展方向へ調整する)。選びやすい理由:初期屈曲は義足歩行の安定性に寄与する要素であるため、その影響を正しく理解する必要があります。混同注意:初期屈曲角が大きすぎると膝折れ、小さすぎると反張膝と、どちらがどちらの現象につながるのか混同しやすいです。
国試ポイント
下腿義足の歩行における膝関節の安定性とアライメント調整に関する知識。特に、各アライメント要素が膝関節の屈曲・伸展モーメントにどのように影響するかを理解しているかが問われる。立脚後期における膝折れの原因を特定する能力が必要。
混同注意
各選択肢が示すアライメント要素は、いずれも義足歩行時の膝関節の安定性に関与しますが、その影響が膝折れを引き起こすのか、あるいは反張膝を引き起こすのかを正確に区別することが難しいポイントです。例えば、踵の高さや足部の底屈が膝の過伸展を招くことと、初期屈曲角の過大が膝折れを招くことを混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
この問題で理解したアライメントの原理を基に、今度は膝の過伸展(反張膝)が生じた場合の修正方法について考察してみましょう。また、下腿義足だけでなく、股義足や膝継手付き義足でのアライメント調整についても同様の知識を応用できるか確認すると良いでしょう。
関連知識
下腿義足のアライメント(前後、左右、回旋)、足部の硬度、踵の高さ、初期屈曲角などが、歩行時の地面反力作用線と各関節との位置関係にどのように影響し、膝関節の安定性(屈曲・伸展モーメント)にどう影響するかを理解することが重要です。特に、膝折れは膝関節に屈曲モーメントが過剰に働くことで生じ、反張膝は伸展モーメントが過剰に働くことで生じることを基本として押さえる必要があります。