Down症候群の児に対して乳児期に行う理学療法で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
ダウン症候群の乳児は筋緊張低下が特徴であり、特に腹筋群は体幹の安定性に不可欠な要素です。腹筋の活動を促すことは、寝返り、座位、ずりばいなどの粗大運動発達の基盤を築き、その後の運動能力の向上に繋がります。したがって、乳児期から腹筋群の収縮を促す介入は非常に適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。ダウン症候群の乳児は筋緊張が低下していることが多く、特に腹筋の機能が不十分になりがちです。腹筋を強化することは、体幹の安定性を高め、寝返りやお座りなどの運動発達を促す上で重要です。体幹の安定は他の粗大運動発達の基盤となります。
- 2. ダウン症候群の乳児に特徴的な症状として、不随意運動は一般的ではありません。不随意運動が見られる場合は、他の神経疾患の合併を考慮する必要があります。正しくは:ダウン症候群の乳児で不随意運動が主な問題となることは稀であるため、この介入は一般的ではありません。筋緊張の低下に対するアプローチが優先されます。選びやすい理由:一般的な小児のリハビリテーションで痙性や不随意運動の抑制が重要視されるケースがあるため、知識が混同しやすいかもしれません。混同注意:脳性麻痺などの疾患で不随意運動が主要な問題となる場合と混同しやすいです。
- 3. ダウン症候群の乳児は筋緊張が低下しており、股関節や膝関節の過伸展(ルーズジョイント)がよく見られます。腹ばい(ずりばい)は、発達段階として推奨される移動手段の一つではありますが、筋緊張が低い場合、効率的な推進力を得ることが難しく、過度に推奨すると発達の遅延につながる可能性もあります。また、四つ這いや膝立ちなども含め、様々な移動手段の発達を促すことが重要です。正しくは:腹ばいだけでなく、四つ這いや高ばいなど、様々な移動手段の獲得を段階的に促すことが重要です。特定の移動手段のみを推奨するのではなく、その児の状況に応じた発達を支援します。選びやすい理由:腹ばいは移動能力獲得のための重要なステップであるため、積極的に促すべきだと考えるかもしれません。混同注意:発達段階における移動様式の重要性と、個別の疾患特性を考慮した介入の必要性との混同です。
- 4. 緊張性迷路反射(TLR)は原始反射の一つであり、乳児期には出現しますが、その後統合されるべき反射です。この反射が持続すると、抗重力伸展活動や座位、立位などの発達を妨げます。そのため、促進するのではなく、統合を促すような介入が必要です。正しくは:緊張性迷路反射は、その統合を促すことが重要であり、促進すべきではありません。選びやすい理由:原始反射が運動発達の基盤となるため、その出現を促すことが良いと誤解するかもしれません。混同注意:原始反射の重要性と、発達に応じた統合の必要性との混同です。正しく統合されない原始反射は運動発達の阻害要因となります。
- 5. 定頸(首が座ること)は、乳児の粗大運動発達における重要なマイルストーンですが、立位姿勢の獲得にはさらに体幹の安定性、坐位、四つ這い、膝立ち、つかまり立ちといった段階的な発達が必要です。ダウン症候群の乳児は筋緊張が低く、関節の弛緩性もあるため、特に段階を踏んだ慎重なアプローチが求められます。定頸直後に立位を急がせるのは、発達段階を飛び越えることになり、負担が大きい可能性があります。正しくは:定頸後は、坐位、四つ這い、膝立ち、つかまり立ちといった段階的な発達を促し、その上で立位姿勢の獲得を目指します。急激な立位導入は避け、体幹の安定性を十分に確保することが重要です。選びやすい理由:早く次の発達段階に進ませたいという意図から、できるだけ早期に立位を経験させるべきだと考えるかもしれません。また、一部の発達を促すアプローチとして早期介入が強調されることもあり、その文脈と混同しやすいです。混同注意:運動発達における早期介入の重要性と、発達段階を遵守した段階的アプローチの必要性との混同です。
国試ポイント
ダウン症候群の乳児における主要な理学療法介入の原則(筋緊張低下への対応)を理解しているか、また、小児の運動発達の段階と、原始反射の適切な理解(統合の重要性)を問う問題です。特定の疾患特性に応じた適切なアプローチと、一般的な発達段階の知識を区別できるかがポイントとなります。
混同注意
筋緊張低下、関節弛緩性といったダウン症候群の主要な身体的特徴と、小児の運動発達段階、そして原始反射の統合の必要性に関する知識が混同しやすいです。特に、原始反射は『促す』のではなく『統合を促す』べきものであり、発達段階を飛び越えた早期介入は適切でない場合が多い点に注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、まずダウン症候群の核となる特徴(筋緊張低下、関節弛緩性、発達遅延など)を正確に把握し、それに対する直接的かつ段階的な介入が問われているかを判断します。また、小児の正常発達の知識、特に原始反射の意義と発達段階に応じた統合の必要性が理解できているかを確認します。
関連知識
ダウン症候群の乳児期の理学療法の目標:筋緊張の改善、粗大運動発達の促進(寝返り、座位、四つ這い、立位、歩行など)、関節の安定性の確保。原始反射の種類とその統合時期、および統合されない場合の影響。乳児の運動発達における各段階の順序と意義。