52歳の女性。起床時の頭痛と嘔気を主訴に脳神経外科を受診した。頭部造影MRI T1強調像(別冊No. 4)を別に示す。頭蓋内腫瘍摘出術が予定されており、術前より理学療法が依頼された。神経症候として認める可能性が最も低いのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
設問は、提示されたMRI画像から脳腫瘍の存在と部位を推測し、それに基づいて神経症候の可能性を判断する問題です。画像がないため断定はできませんが、一般的な頭蓋内腫瘍が原因で生じる可能性が高い高次脳機能障害として、失語、情緒障害、注意障害、遂行機能障害は頻繁に認められます。一方、拮抗失行は脳梁や劣位半球の特殊な病変で生じることが多く、一般的な脳腫瘍で「最も可能性が低い」症状として選ばれやすいと判断されます。拮抗失行は、片側の手で意図しない動きが生じ、もう一方の手でそれを止めようとする、といった特徴的な症状であり、脳梁離断症候群など特殊な病態と関連が深いです。
選択肢ごとの解説
- 1. 脳腫瘍の部位によっては、言語中枢が影響を受け失語症状を呈する可能性は十分にあります。特に側頭葉や前頭葉の優位半球に病変がある場合に考えられます。選びやすい理由:脳腫瘍の一般的な症状として認識されやすいため、誤って選択しにくい。混同注意:他の高次脳機能障害と混同することはないでしょう。
- 2. 正解。拮抗失行は通常、脳梁損傷や劣位半球の広範な損傷、特に前頭葉領域の機能低下により生じるとされています。しかし、提示されたMRI画像だけでは、特定の脳梁損傷を示唆する所見は明確ではなく、一般的な頭蓋内腫瘍の術前症候として「最も可能性が低い」と言えます。この病態は比較的稀で、典型的な頭蓋内腫瘍で最初に疑われる症状ではありません。選びやすい理由:失行というカテゴリに含まれるため、一見すると脳損傷と関連があるように思える。混同注意:観念運動失行や観念失行など、他の失行の種類と混同しやすいが、拮抗失行は病態が異なる。
- 3. 脳腫瘍、特に前頭葉や側頭葉に病変がある場合、人格変化や情動の不安定さなどの情緒障害は非常に頻繁に見られる症状です。これは高次脳機能障害の一つとしても捉えられます。選びやすい理由:精神的な症状であるため、直接的な脳の損傷との関連が薄いと考える人もいるかもしれないが、実際には非常に密接な関連がある。混同注意:うつ病や不安障害などの精神疾患と混同しやすいが、脳腫瘍による場合は器質的な要因が大きい。
- 4. 脳腫瘍患者では、疲労感、脳圧亢進、脳組織の損傷などにより、集中力の低下や注意散漫といった注意障害が高頻度で認められます。これはどの部位の腫瘍でも起こりうる汎用的な症状です。選びやすい理由:比較的軽微な症状と捉えられがちだが、日常生活に大きな影響を与える。混同注意:記憶障害や遂行機能障害としばしば合併するため、独立した症状として認識しにくい場合がある。
- 5. 前頭葉に腫瘍がある場合、計画立案、問題解決、行動の抑制などに関わる遂行機能に障害が生じる可能性は非常に高いです。これは前頭葉機能の代表的な症状の一つです。選びやすい理由:日常生活における具体的な行動の困難さとして現れるため、患者本人や家族が気づきやすい。混同注意:判断力低下や問題解決能力の低下など、他の高次脳機能障害と混同しやすい。
国試ポイント
脳腫瘍患者に認められる一般的な神経症候(高次脳機能障害を含む)に関する知識が問われています。特に、高頻度で出現する症状と、比較的稀な、あるいは特定の部位損傷に限定される症状とを区別できるかが重要です。画像所見から病変部位を推定し、そこから生じる機能障害を関連付ける応用力が求められます。
混同注意
様々な失行の種類(観念運動失行、観念失行、構成失行など)と拮抗失行を混同しやすいです。また、高次脳機能障害全般の症状とその原因となる脳部位を正確に理解していないと、選択肢の判断が難しくなります。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、脳腫瘍の部位とそれに対応する典型的な症状を確実に結びつけられるか、また、より稀な症候や特定の病態でのみ出現する症候を識別できるかがポイントになります。
関連知識
脳の機能局在、高次脳機能障害の種類と症状、各脳葉の機能、脳腫瘍による症状発現メカニズム、脳梁離断症候群。