45歳の女性。3日前、自宅で荷物を持ち上げた際に、腰部と左下腿の後面から足背外側部にかけての強い痛みがあった。安静にしていたが、疼痛が軽快しないため受診し、腰椎椎間板ヘルニアと診断された。 発症から2か月が経過し、足背外側部の疼痛と安静時の腰痛は改善したが、労作時に軽度の腰痛が続いているため再度受診した。理学療法として適切でないのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
発症から2か月が経過し、足背外側部の疼痛と安静時の腰痛は改善し、労作時に軽度の腰痛が残っている段階です。この時期は体幹の安定性や柔軟性を高める運動療法が中心となり、温熱療法やTENSは疼痛の緩和に用いられます。Williams型装具は腰椎の前弯を減らし屈曲位を保つ装具で、急性期の疼痛管理に用いられることはありますが、この段階での装着は体幹筋の活動を妨げ、筋力低下につながるため適切ではありません(公式正答3)。
選択肢ごとの解説
- 1. TENSは、痛みの閾値を上昇させることで鎮痛効果を発揮します。慢性的な軽度の腰痛に対して、症状緩和のために用いられることがあります。選びやすい理由:鎮痛目的で汎用されるため、正しい選択肢に見えるかもしれません。混同注意:他の物理療法との適応や禁忌。
- 2. ホットパックは温熱効果により、筋の緊張緩和や血行促進を促し、痛みの軽減に寄与します。慢性的な腰痛の症状緩和に有効な手段の一つです。選びやすい理由:温熱療法は腰痛によく用いられるため、正しい選択肢に見えるかもしれません。混同注意:急性期の炎症に対する冷却療法との違い。
- 3. 正解。Williams型装具は、腰椎の前弯を減少させ、屈曲位を保持することで椎間関節や後方組織へのストレスを軽減する目的で使用されます。しかし、この患者さんは発症から数か月が経過し、安静時の腰痛は改善しており、労作時に軽度の腰痛が続く状況です。この段階での装具の常用は、体幹筋の活動を抑制し、筋力低下を招く可能性があり、長期的な観点からは適切ではありません。症状が落ち着いている段階では、体幹筋の強化などによって自立した機能改善を目指すのが一般的です。正しくは:労作時の軽度な腰痛に対しては、体幹筋群の強化や運動指導を通じて、身体活動性を高めるアプローチが適切です。装具を使用する場合は、運動時のみなど限定的な使用にとどめるべきです。選びやすい理由:腰痛に対する装具療法は一般的に知られているため、適切な選択肢と誤解されやすいです。混同注意:急性期や不安定性が強い場合の装具の適応と、慢性期における運動療法の重要性。
- 4. 慢性的な腰痛の改善には、体幹の安定性を高めることが重要です。体幹筋群(腹筋、背筋など)の筋力トレーニングは、腰椎への負担を軽減し、再発予防にも繋がるため、この病期において非常に有効な理学療法です。選びやすい理由:腰痛に対する運動療法として広く知られているため、正しい選択肢に見えるでしょう。混同注意:急性期の安静と、慢性期の運動療法の区別。
- 5. ハムストリングスの柔軟性が低下していると、骨盤の後傾を制限し、腰椎への負担が増加することがあります。そのため、ハムストリングスのストレッチングは、腰椎の可動域改善や負担軽減に繋がり、慢性的な腰痛の改善に有効な場合があります。選びやすい理由:腰痛と下肢の柔軟性の関連はよく指摘されるため、正しい選択肢に見えるでしょう。混同注意:他の下肢の筋群のストレッチング(例:腸腰筋)の適応。
国試ポイント
慢性期の腰痛に対する理学療法の選択肢の中から、患者の状態に即して適切でない治療法を見極める能力が問われています。特に、急性期の対応と慢性期の対応の違い、装具療法の適応と限界に関する知識が重要です。
混同注意
急性期の腰痛に対する装具の必要性と、慢性期の運動療法の重要性が混同されやすいです。
次に同じ論点が出たら
同様の論点で出題された場合、患者の症状の病期(急性期、慢性期)と活動レベルをまず確認し、それに合わせた治療目標(安静、鎮痛、機能回復、再発予防など)を特定することが重要です。特に、装具療法や安静臥床の期間、運動療法の開始時期について問われることが多いでしょう。
関連知識
腰痛の種類(非特異的腰痛、神経根症状を伴う腰痛など)、各病期(急性期、亜急性期、慢性期)に応じた理学療法の原則、腰痛に対する装具の種類と特徴、運動療法の具体的な内容(体幹安定化運動、ストレッチングなど)、物理療法(TENS、温熱療法など)の適応と効果。