45歳の女性。遠位型ミオパチー。下肢筋力低下が徐々に進行し両側の下垂足を認める。最近つまずいて転倒することや捻挫することが多くなり装具を検討し歩行の改善を目指すことになった。下肢筋力を表に示す。 最も適切な装具はどれか。
| 右 | 左 | ||
|---|---|---|---|
| 股関節 | 屈曲 | 2 | 2 |
| 外転 | 2 | 2 | |
| 伸展 | 2 | 2 | |
| 膝関節 | 屈曲 | 2 | 2 |
| 伸展 | 3 | 3 | |
| 足関節 | 背屈 | 1 | 1 |
| 底屈 | 1 | 1 | |
値は公式問題冊子の表(画像で確認)

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
患者は遠位型ミオパチーによる両側下垂足を呈し、足関節背屈筋力が左右ともにMMT1と著しく低下している。これによりつまずきや転倒、捻挫が頻発しており、足関節の背屈を補助し、つま先のクリアランスを確保することで安全な歩行を支援するプラスチック短下肢装具が最も適切である。
選択肢ごとの解説
- 1. PTB短下肢装具は、主に荷重によって下腿の痛みを軽減したり、不安定性を安定化させる目的で使用されるものであり、本症例の下垂足の改善には直接寄与しない。正しくは:下垂足には足関節の運動を補助する装具が必要である。選びやすい理由:短下肢装具の一種であるため、下腿に疾患がある場合に選択肢として考えられるが、本症例の主訴である下垂足に対する効果は薄い。混同注意:足関節周囲の骨折や靭帯損傷後の荷重制限や安定化を目的とする装具。
- 2. 足関節軟性装具は、足関節の軽度な不安定性や疼痛を軽減する目的で使用される。本症例は足関節背屈筋力MMT1という重度の筋力低下による下垂足であり、軟性装具では十分な支持・矯正効果が得られない。正しくは:下垂足には足関節の運動を補助し、つま先のクリアランスを確保できる硬性の装具が必要である。選びやすい理由:装具による足関節のサポートという点で、軽度な足関節の問題に対する選択肢として考えられる。混同注意:軽度の足関節捻挫後の保護や、慢性的な足関節不安定症に対するサポート。
- 3. スウェーデン式膝装具は、主に膝関節の過伸展(反張膝)を抑制する目的で使用される。本症例の膝関節伸展筋力はMMT3であり、過伸展の記載もなく、膝関節の機能障害が主たる問題ではないため不適切である。正しくは:下垂足の改善には足関節の運動を補助する装具が必要であり、膝関節過伸展がないため膝装具は不要である。選びやすい理由:下肢の筋力低下があるため、膝関節にも問題がある可能性を考慮して選択肢に入れるかもしれない。混同注意:変形性膝関節症や膝関節靭帯損傷による不安定性、または脳卒中後の痙性による反張膝。
- 4. 金属支柱付き長下肢装具は、膝関節と足関節の両方の機能不全、特に膝関節の著しい不安定性や筋力低下(MMT2以下など)がある場合に選択される。本症例は膝関節伸展筋力がMMT3と比較的保たれており、膝関節の安定性に大きな問題はないため、過剰な支持であり不適切である。正しくは:膝関節の安定性が保たれているため、膝関節を固定する長下肢装具ではなく、足関節の運動を補助する短下肢装具が適切である。選びやすい理由:広範な筋力低下をカバーする装具として、重度の麻痺を想定して選択肢として考えるかもしれない。混同注意:ポリオ後遺症や脊髄損傷などで、膝関節と足関節の両方に重度の筋力低下や不安定性がある場合。
- 5. 正解。患者は両側の下垂足を認め、足関節背屈筋力が左右ともにMMT1と著しく低下している。プラスチック短下肢装具は、下垂足に対して足関節の背屈を補助し、つま先の引っかかりを防止することで歩行時のつま先のクリアランスを確保し、転倒予防に効果的である。これは本症例の「つまずいて転倒することや捻挫することが多くなり装具を検討し歩行の改善を目指す」という目的に合致する。選びやすい理由:短下肢装具の中でも、プラスチック製は軽量で装着が容易であり、下垂足の一般的な治療選択肢であるため。混同注意:金属支柱付き短下肢装具など、他のタイプの短下肢装具。プラスチックは軽量で目立たず、着脱も容易という利点がある。
国試ポイント
下垂足に対する装具の選択と、MMTの評価に基づく適切な装具の適用を理解すること。
混同注意
足関節の不安定性や疼痛が主症状の場合は足関節軟性装具、膝関節の過伸展がある場合はスウェーデン式膝装具など、症状に応じた装具の区別が重要。
次に同じ論点が出たら
下肢筋力表において、足関節の背屈筋力(MMT)がどの程度低下しているか、また膝関節の安定性に問題がないかを確認する。
関連知識
プラスチック短下肢装具には、足関節の可動性を制限しないタイプ(Dynamic Ankle-Foot Orthosis: DAFO)や、底屈・背屈の角度を調整できるタイプ(Articulated AFO)など、様々な種類がある。また、長下肢装具は膝関節の安定性が必要な場合に適用される。