疾患と自助具の組合せで正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
両側上肢の切断がある場合、両手で爪切りを操作することが不可能なため、台に固定された爪切りは非常に有効な自助具となります。足指や残存機能を用いてレバーを操作することで、セルフケアが可能になります。
選択肢ごとの解説
- 1. ボタンエイドは指先の巧緻性低下や片手操作が必要な場合に有用ですが、片麻痺患者の多くは麻痺側上肢の機能不全があり、健側で操作することになります。健側が正常であればボタンエイドは不要なケースが多く、むしろボタンかけの練習など治療的アプローチを優先することがあります。特に重度片麻痺では、ボタンエイド自体を操作することが困難な場合もあります。正しくは:ボタンエイドは、リウマチなど両側の手指巧緻性が低下した場合や、片手でボタンをかける必要がある場合に適しています。片麻痺では、麻痺していない側の手でボタン操作ができる、またはボタンのない衣服を選ぶなどの工夫が一般的です。選びやすい理由:片麻痺で片手での操作を想像し、ボタンエイドが役立つと考えがちです。混同注意:自助具が万能であるという誤解や、特定の症状(ここでは片手操作)への一般的な連想。
- 2. プルトップオープナーは、主に缶のプルトップを開ける際に指の力や巧緻性が不足している場合に用いる自助具です。片側上肢の切断がある場合、残された健側上肢があれば、通常は健側でプルトップを開けることが可能です。プルトップオープナーは両手がある状態で、指の力が弱い場合や関節に痛みがある場合に有用性が高いです。正しくは:プルトップオープナーは、手指の力が弱い高齢者や関節リウマチ患者などに適しています。片側上肢の切断であれば、残された上肢で十分に操作可能です。選びやすい理由:片側上肢の切断で片手操作が必要な状況を想像し、オープナーが片手で開ける補助になると思われがちです。混同注意:プルトップオープナーの本来の目的(握力・巧緻性の補助)と、片手での操作が必要な状況を混同する。
- 3. リーチャーは、主にリーチ動作の制限(届かない、屈むのが難しい)がある場合に、遠くの物を掴むために使用する自助具です。脊髄小脳変性症の主な症状は、運動失調、協調運動障害、振戦などであり、リーチ動作自体が困難になるというよりは、リーチした際の目標物への正確な到達や把持に問題が生じます。リーチャーを操作するためには、ある程度の運動協調性が必要であり、脊髄小脳変性症患者がリーチャーを精密に操作することは困難な場合が多いです。また、この疾患の症状そのものに対して、リーチャーが第一選択の自助具となることは稀です。正しくは:リーチャーは、股関節疾患や腰部疾患などで体幹の屈曲が制限される場合、あるいは車椅子利用者でリーチが制限される場合に適しています。脊髄小脳変性症では、運動失調によりリーチャーの操作自体が難しく、かえって危険な場合があります。選びやすい理由:脊髄小脳変性症で身体機能の低下があるため、何らかの自助具が必要という漠然とした印象から選択肢として考えるかもしれません。混同注意:リーチャーの用途(リーチ能力の補完)と脊髄小脳変性症の症状(協調運動障害、失調)を混同する。
- 4. 正解。両側上肢の切断がある場合、通常の爪切りを両手で持って使用することはできません。台付き爪切りは、爪切りを台に固定し、足指などでレバーを操作したり、残存する腕や義手などで補助的に操作したりすることで、一人で爪を切ることが可能になるため、この組み合わせは非常に適切です。
- 5. ソックスエイドは、体幹の屈曲制限や上肢のリーチ制限がある場合に、靴下を履く動作を補助する自助具です。アテトーゼ型脳性麻痺の患者は、不随意運動や姿勢の不安定性が主な特徴です。ソックスエイドの操作には、ある程度の協調運動と安定した姿勢が必要であり、アテトーゼの不随意運動がある場合、ソックスエイドを正確に操作して靴下を履くことは非常に困難である可能性が高いです。むしろ、自助具を使うことで不随意運動が誘発されたり、転倒のリスクが高まったりすることもあります。正しくは:ソックスエイドは、股関節疾患や腰部疾患などで体幹の屈曲が制限される場合や、肥満などでリーチが困難な場合に適しています。アテトーゼ型脳性麻痺では、不随意運動によりソックスエイドの操作自体が難しく、かえって危険な場合があります。選びやすい理由:アテトーゼ型脳性麻痺で運動機能の障害があるため、何らかの自助具が必要という漠然とした印象から選択肢として考えるかもしれません。混同注意:ソックスエイドの用途(体幹屈曲・リーチ制限の補完)とアテトーゼ型脳性麻痺の症状(不随意運動、協調運動障害)を混同する。
国試ポイント
この問題は、各疾患の病態生理と、それぞれの自助具がどのような機能障害に対して効果を発揮するのかを正確に理解しているかを問うものです。単に「何か助けになるもの」という漠然とした理解では誤答につながりやすく、自助具の具体的な使用場面や操作性、疾患とのミスマッチを見抜く知識が求められます。
混同注意
自助具は一般的に「生活を助けるもの」という認識から、どの自助具も何らかの疾患には役立つだろうという思い込み。特に、特定の症状(例:片手での操作)に対して、その症状を補う自助具を安易に結びつけてしまうと誤ります。各自助具が補完する具体的な機能と、疾患による機能障害の具体的な内容を正確に把握する必要があります。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、まず各疾患の主要な機能障害を特定し、次に提示された自助具がどの機能障害を補完するために設計されているのかを考えます。その自助具を実際に患者が「安全に」「効果的に」使用できるかを具体的に想像することが重要です。
関連知識
各自助具(ボタンエイド、プルトップオープナー、リーチャー、ソックスエイドなど)の基本的な機能と適用。片麻痺、上肢切断、脊髄小脳変性症、脳性麻痺(特にアテトーゼ型)の主な症状とADLへの影響。自助具選定の原則(残存機能の活用、本人の意向、操作性、安全性など)。